中国で、実用化に向けて急ピッチで開発が進む“空飛ぶクルマ”。

そして、日常に溶け込んだドローンによるフードデリバリーなど、飛行機より低い高度を利用して人やものを運ぶ「低空経済」への投資が中国で過熱。
その最前線を取材しました。

現在、中国で開催中の上海モーターショー。
100以上の新しいEV(電気自動車)などが披露される中、中国メーカーが今、アピールに力を入れているのが空飛ぶクルマです。

展示されている車は、ヘリコプターのような形のタイプや、乗用車の上にコックピットが乗ったものまで、その形はさまざま。

実用化はまだまだ先の未来の話?と思いきや…。

シャオペン・空飛ぶクルマ担当者:
私たちの空飛ぶ車は、世界初の量産型になります。

新興EVメーカー「シャオペン」が開発する空飛ぶクルマは、すでに4000台の注文を受け付け、2026年には量産が始まるといいます。

想定価格は約4000万円以下で、個人でも購入が可能です。

日本のトヨタ自動車と現地で合弁パートナーを組む広州汽車も、開発の先頭を走る企業の1つ。

1人乗りで、ハンドルやペダルが何もない空間。
タッチパネルのみで、操縦席もない“空飛ぶクルマ”です。

開発はどこまで進んでいるのでしょうか。
特別に飛行実験の取材が許されました。

4年前に開発がスタートし、完全無人の自動運転を実現し、1000回以上の試行運転を重ねてきたクルマ。
最大の特徴は、車と一体型のデザインです。

地上も走行可能で、コックピットのみが分離し飛ぶことができます。

最大20km飛行可能で、渋滞に巻き込まれても飛んでいけるなど、都市での利便性を向上させるとしています。

広州汽車では、2025年中に空飛ぶクルマの販売予約を受け付け、2026年には生産を開始するとしています。

中国政府は、高度1000メートル以下の低い空域で配達や輸送などを行う経済活動を「低空経済」として後押ししていて、空飛ぶクルマやドローンの開発に官民挙げて力を入れています。

路上に設置された機械は、何と、ドローンによるフードデリバリーの自動販売機。
ケンタッキーフライドチキンや元気寿司、他にもカフェなどのお店が書かれていて、ここから注文できるといいます。

注文したのは、傾いたらこぼれてしまう汁物のスープビーフン。

待つこと30分、注文した商品がドローンによって宅配ボックスまで運ばれてきました。
心配されたスープのこぼれもありません。

注文してから30分以内に届いて食べることができます。

このサービスによる配達は、2024年末ですでに40万件を超え、市民の日常の一部となっています。

市民は「とても良いと思います。配達員だと遅れることもあったけど、これはわりとスピーディーに感じるから」などと話します。

中国の低空経済の市場規模は2025年、日本円で約20兆円前後に達し、2030年には60兆円を超えるという試算もあります。

米中の関税戦争に終わりが見えない中、最先端の技術を駆使し、新たな成長エンジンとなるのか注目されます。