福井県敦賀市の高校生が、地元に伝わる人道の歴史を自作のアニメーションと関係者へのインタビューで伝える動画をユーチューブにアップし、話題になっています。高校生は何を考え、このような動画を作ったのか。約4カ月間の制作に密着しました。
地元高校生が「敦賀ムゼウム」でガイド
「こちらの資料が見えるところまでご移動をお願いします」
敦賀市内にある人道の歴史を紹介する資料館「敦賀ムゼウム」でガイドをしているのは、敦賀高校創生部の生徒たちです。
「人道の歴史」を発信することが敦賀の地方創生につながるとの考えで、2020年にこの取り組みをはじめました。5年間で、地元の人たちだけでなく芸能人や外国人など多くの人にガイドを行い、高い評価を得てきました。
「初めて来たが、分かりやすくてとても感動して涙が出そうになった」「本当は大人がしなければならないが、私は高校生だから見にきたいと思った」と話す人も。
若年層への発信が課題
しかし生徒たちは、課題とも向き合っていました。創成部の上山泰生副部長は「私達はムゼウムでガイドをしてきたが、基本的に年配の方や県外からの人にすることが多かった」と話します。生徒たちが抱えているのは「若い世代に歴史を伝えられない」という課題です。敦賀ムゼウムに訪れる人は年齢層が高く、若年層への発信が難しかったのです。
そこで部員たちは解決策を話合い、たどり着いた結論が―
「若い世代に伝えていきたいので、これからは映画をつくっていきます」
歴史を伝える動画を作りSNSで発信していくことになりました。
アニメーションとインタビューで動画制作
1カ月後、何度も会議を重ねた生徒たちは動画の方向性を決定。アニメーションと実写で説明することになりました。番組の前半は手描きのイラストでアニメーションをつくり、人道の歴史を分かりやすく紹介。後半は、各地で人道の歴史を発信している人にインタビューをし、歴史を未来につなぐ大切さを伝えることにしました。
もちろん取材をしたら編集もこなさなければならず、部員たちは休みを返上して作業を進めてきました。吉田部長は「編集もまったくやったことなくて難しいが、見ている人がどう感じるかを考えるとやりがいがある」と前向きに取り組みます。
慣れない動画制作に悪戦苦闘しながら、少しずつゴールへと向かっていきます。
集まった70人を前に上映会
そして迎えた、動画お披露目の日。会場の敦賀高校には市民や関係者約70人が集まりました。生徒たちが手掛けた「Welcome to Tsuruga ~過去から未来へ~」の上映試写会がスタートです。
「皆さんはポーランド孤児をご存じですか?1795年ロシア、オーストリア、ドイツによる分割でポーランドは地図上から消えました」
アニメーションのパートではナレーションも部員が担当しイラストも全て手描きです。BGMや効果音の選曲、テロップのフォントや色など細部にまで工夫を凝らしました。
上映後、会場は大きな拍手
後半のパートでは、福井だけでなくポーランドや東京に住む関係者6組にインタビューをし、人道の歴史について話を聞きました。
一人一人の考え方が分かるよう、連日、編集機と格闘しながらつくりあげました。動画の最後には、携わった部員26人の名前が。4カ月間、誰一人脱落することなく、全員で作り上げた証です。
上映が終わると会場は大きな拍手に包まれました。「感無量です。すごくよく分かったし、苦労が伝わってきた」「孫も創生部にいるが、子供たちがすごいことをしたと胸がいっぱいになった」
敦賀ムゼウムでも上映へ
吉田部長は「時間もかかって大変なこともあったが部員の協力があったからこの作品を作ることができた。作っただけで終わらず、多くの人に見てもらうにはどんなことが必要なのかを考えながら、今後も活動していきたい」と先を見据えます。
動画は「敦賀高校 創生部」のユーチューブチャンネルにアップされていて誰でも見ることができます。また今後、彼らがガイド活動をしている「人道の港 敦賀ムゼウム」でも上映される予定だということです。
敦賀の地方創生のため、人道の歴史を発信する敦賀高校創生部。彼らの活動はこれからも続いていきます。