5月2日に告示される県議会議員補欠選挙。選挙が行われる羽咋市羽咋郡南部選挙区は羽咋市と宝達志水町が対象です。
これまでに元県議の本吉淨与氏と宝達志水町長の寳達典久氏が立候補を表明しています。
「政争の町」を舞台に告示前からヒートアップする両陣営の動きを追いました。
馳知事:「突然のお別れとなってしまい言葉を失いました」
3月末、急性心不全で亡くなった稲村建男氏(享年81)。県議当選11回、国や県とのパイプを強みとする自民党の重鎮でした。
稲村氏の死去で空席となった県議のイスを狙ってまず動き出したのは非自民系の元県議、本吉淨与氏です。
本吉氏:「3期12年間の実績があるんですけど、2年間ブランクがありますので、顔を1から売りなおすというか。知名度のアップを課題として取り組んで行きたいと思っています」
週末には石川3区選出、立憲民主党の近藤和也衆議院議員と街頭に立ち、再挑戦への思いを訴えます。
本吉氏:「私も能登半島地震で被災し(自宅を)公費解体することになりました。これから地元がどうなるのか私も本当に心配しているところでございます。同じような思いをしている方はたくさんいると思います。そういう方の思いもしっかりとくみあげていきたい」
羽咋市と宝達志水町にまたがる羽咋市羽咋郡南部選挙区。この地域では「稲村派」と「本吉派」の半世紀以上にわたる権力争いが続いています。
さかのぼること53年前の羽咋市長選挙。稲村佐近四郎衆議院議員の長男として、稲村建男氏は当時29歳で出馬しました。
相手は本吉氏の血縁にあたる本吉二六氏。市を二分する新人同士の争いの結果、本吉二六氏が勝利しましたが、以来、羽咋市長の座は稲村派と本吉派による代理戦争が続いています。
こうした中、人口減少などを理由に、2023年の県議選から議員定数が2から1へ減少。現職の稲村氏と本吉氏の1議席を争う戦いは本吉氏が宝達志水町ではリードしたものの、選挙区全体では204票差で破れました。
県議への返り咲きを狙う本吉氏。そんな中、まさかの人物が稲村氏の後継として名乗りを上げました。
宝達氏:「3期目の当選をさせていただいて、きょうで6日目かなと思います。そういった状況で町長として仕事をせんなんのももちろんなんですけれども、誰かが頑張らんなん、お前が頑張らんなん、そのようなご期待の声をいただきました」
宝達志水町の寳達典久町長です。寳達氏は先月11日に無投票で3期目の当選を果たしたばかり。
当選直後の寳達氏:「これからも一層町のよさを磨いていく。頑張って発展させていく。そういう思いでこれからも仕事をしていきたい、そういう決意でございます」
出馬会見の寳達氏:「町だけでできるもんじゃないんです。わたしがこれからしていきたいことも。市・町・県をつなぐ存在っていうのは、いままで保守の立場として長きにわたって稲村先生が担ってきた。その立場がこれからもこの地域に大事なんだということであります」
異例の事態に、本吉氏を支援する議員たちは…
近藤和也衆議院議員:「こんなに頭に来る選挙は初めてですね。こんなに勝たないことは嘘だろというぐらいの選挙は初めて」
本吉サイドの怒りにはわけがあります。町長としての寳達氏を初当選から支えたのは本吉氏本人を始めとする本吉派の議員たちだったのです。
本吉陣営 北本宝達志水町議:「8年前、2人で、二人三脚で町を変えるんだと。腹立たしい。情けない。悲しいです。私ら同志を裏切ってなぜ出馬しなくちゃいけないんですか」
かつての同志と相対する形で県議を目指すことを選んだ寳達氏。
自民党県連会長・岡田直樹参議院議員:「不退転の決意をした寳達さんに、みなさんのお気持ちをいただけませんか、いかがでしょうか」
稲村氏の後継として自民党県連の推薦を受け、強固な組織を味方につけました。
今月25日―
寳達氏:「私は次の石川県議会議員補欠選挙に立候補するために、町長の職を辞することを決意いたしました」
町長の新しい任期が始まってからわずか23日で出された辞職願。辞職するには町議会の臨時会で過半数の同意が必要でしたが…
町議:「無責任極まりないと思います」「辞職なんてことは考えらえません」「明確に反対の意思を表明します」「できることならばとどまっていただきたい」
議長:「同意することに賛成の方は起立願います」「…起立少数です」
議会の同意は得られず、寳達氏は県議補選に立候補した時点で自動失職することとなります。
寳達氏:「立場を変えて地域の頑張りたいというこの思いは変わりませんので、進んでいきたいと思います」
「県民のために働く県民党で選挙戦を戦い抜きたい」とリベンジを狙う本吉氏か。
「保守の流れ、議席をしっかりと守る。保守の火を消さない」と不退転の決意で挑む寳達氏か。
告示を控えた政争の町はすでにヒートアップしています。