宮城県内屈指の温泉地で知られる作並に、新たな温泉宿が誕生します。手がけるのは老舗旅館を次々と再生し、全国展開を進める「大江戸温泉物語」。全国で宿泊施設が増え競争が激しくなる中、宿泊者数を増やし続けています。
仙台市中心部から車で約40分。山間に位置する自然豊かな温泉地・作並にオープンする「大江戸温泉物語Premium仙台作並」。去年9月、大江戸温泉物語が老舗の岩松旅館から経営権を引き継ぎ、リニューアルしたものです。オープンに向け、館内は仕上げの工事の真っ最中。フロントを抜け、中に進むと…。
大江戸温泉物語 サービスマネージャー 佐々木智香さん
「こちらは壮大な別荘の書斎をイメージした、プレミアムラウンジとなっています。ここに暖炉が併設されます」
広々と開放感あふれるラウンジ。こちらは、バイキング会場。地元食材からライブキッチンまで、常時60種類以上の料理を用意するといいます。
大江戸温泉物語サービスマネージャー 佐々木智香さん
「創業当時から皆さまに愛される、岩風呂がございます」
野趣あふれる天然の岩風呂。作並の自然を楽しみながら源泉かけ流しの湯に浸かることができます。
大江戸温泉物語サービスマネージャー 佐々木智香さん
「広瀬川に面しているので、夏は新緑を楽しんでいただけ、冬は雪景色を楽しんでいただけます」
大江戸温泉物語は元々、宿泊機能を持たない「温泉テーマパーク」として、東京・お台場にオープンした施設が始まりでした。江戸の街並みを再現しながら館内で浴衣を着て過ごすエンターテインメント性が話題を呼び、一躍人気を集めます。(東京都との土地の契約期間が満了を迎え、2021年に閉館)
2007年からはメイン事業を老舗旅館の買収・再生事業に切り替え、経営悪化や事業承継が難航する老舗旅館を次々とリニューアル。現在、全国で68施設を経営しています。インバウンド需要もあいまって利用者数は右肩上がり。2020年度は新型コロナの影響を受けましたが、そこからV字回復し、また利用者を増やし続けています。
今回、経営を引き継いだ「岩松旅館」も創業200年以上の老舗でしたが、新型コロナなどの影響で業績が低迷していました。老舗旅館の苦境をチャンスに変え、事業を拡大する大江戸温泉物語。橋本啓太社長は、再生のポイントに二つの言葉を挙げます。
大江戸温泉物語 橋本啓太社長
「我々が何をモットーにしているかというと、基本的にはリーズナブルとローカライズを重視している」
老舗旅館の買収・再生という手法は新しく建てるよりはるかにコストが低く、5分の1程度で済むこともあるといいます。その分も、客にとっての「リーズナブル」につなげていると橋本社長は言います。
大江戸温泉物語 橋本啓太社長
「かかるコストを下げていく。結果的にその分は安くする」
そしてローカライズとは…
大江戸温泉物語 橋本啓太社長
「旅に行く目的というのはいろんな風情や文化や食を楽しみたくて行くもの。しっかりとその土地ならではの風情や文化や食を体感できるようにローカライズは必須」
また、買い取った旅館の元々の特長や地域の特性を見極めてリニューアルするのも手法のひとつ。例えば、秋保温泉の老舗、岩沼屋を改修してオープンした、こちらの旅館は元々の重厚感を残し、落ち着いた雰囲気を演出。リーズナブルというコンセプトから離れ、大江戸温泉物語の中でも高級グレードに位置付けています。
大江戸温泉物語 橋本啓太社長
「(秋保温泉には)宿泊料金が高くてもいい温泉宿に泊まりたいというお客様が多いので、そのニーズに応えてリーズナブルに振るのではなく、しっかりとした世界観を作って提供している。お客様の“選択肢を増やす”ということ(が重要)」
一方で、食事はバイキング形式にしてコストを下げ、その分を館内サービスの充実に充てているといいます。宮城県内には既に4つの宿がありますが、それぞれ特性に合わせてグレードが違います。一泊1万円から泊まれるスタンダードから高級感を重視した宿まで3段階。客の選択肢を増やしています。
今回開業する作並は、宮城では5つ目の宿となります。県内でも次々と宿をオープンさせる大江戸温泉物語。橋本社長は、宮城県の温泉宿の可能性を次のように話します。
大江戸温泉物語 橋本啓太社長
「宮城県は国内のお客様が集積する。関東からも近く新幹線でも2時間くらいで行ける。着いてからも観光地が2時間圏内にぎゅっと収まっている。一日で北も西も南も観光できるところが宮城県のいいところ。海外からのお客様も直接アクセスできるので、国内と海外のお客様が集積する、とても有望な観光地」
「有望な観光地」へ集客力のある宿の開業。観光振興を重要な施策にする県や仙台市にとっても追い風になりそうです。