2025年度に入り岩手県雫石町では農家が農業用水を利用するために負担する「賦課金」が引き上げられ困惑の声が出ています。
一方、引き上げを行った地元の土地改良区は苦渋の決断だったとしています。背景を取材しました。

雫石町に農地を所有する60代の男性は「今までかかっていたコストよりはるかに高いコストになっているので、農業をやっていくのは非常に厳しい」と話します。

4月に入り頭を悩ませていることは、所属する土地改良区の賦課金の引き上げです。

雫石町に農地を所有する60代男性
「最低限生活できる利益が手元に残らないので、離農するか耕作放棄地になるか、農業をやる人はどんどん減っていく」

土地改良区とは、農業のための用水路や排水路といった水利施設の維持・管理などを行う組織で県内には42団体あります。

それぞれの土地改良区では事業の運営や施設の維持に必要な費用を賄うため、組合員に対し所有する田んぼや畑の面積に応じて「賦課金」を課すことになっていて、組合員は年に一度それを支払っています。

男性が組合員として所属する雫石町土地改良区では、2025年度、農地にかかる賦課金について田んぼは10アールあたり年間1800円と前の年度から1000円引き上げました。

また畑にかかる賦課金や田んぼの所在地によって設定される水利施設の維持のための賦課金も概ね上がっています。

その結果、男性が2025年度支払う賦課金は前の年度から4万円ほど増え7万円台に上ったということです。

雫石町に農地を所有する60代男性
「最終的には消費者が一番困るだろうけど(農作物を)作っている側も機械を買わなければいけない。やっぱり利益が出ないと借金だけで経営を続けていけなくなる」

農業経営の圧迫にもつながる賦課金の引き上げについて、雫石町土地改良区の中村継幸理事長は様々なコストの上昇が背景にあると話します。

雫石町土地改良区 中村継幸理事長
「水路の維持管理(水路の)ゲート工事、そういったところに資材や人件費の高騰があり、結局土地改良区の経費が増加した」

雫石町土地改良区が賦課金を引き上げるのは実に30年ぶりです。

県内では田んぼにかかる賦課金だけを見ると10アールあたり3000円代から5000円台の土地改良区もある一方で、雫石町土地改良区が設定した1800円は突出した金額ではありません。

しかし中村理事長は賦課金の引き上げは心苦しかったと話します。

雫石町土地改良区 中村継幸理事長
「土地改良区が解散の危機になってから引き上げだと、その時の情勢もわからない。(今後)10年以上健全経営を図るための苦渋の決断」

盛岡広域振興局の管内には雫石町土地改良区を含めて10の土地改良区があります。

岩手めんこいテレビが取材したところ、このうち4つの土地改良区が2025年度田んぼにかかる賦課金の引き上げに踏み切っていて、理由はいずれも「コストの上昇」でした。

中村理事長は今後懸念される土地改良区の課題について次のように語ります。

雫石町土地改良区 中村継幸理事長
「施設の老朽化への対策が一番懸念されるところ。(賦課金徴収は)最終的に組合員の付託に応える事業だと思う」

担い手の不足など様々な課題がある岩手の農業。農家を取り巻く環境は厳しさを増しています。

岩手めんこいテレビ
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