人とクマとの共生を考えてもらおうというセミナーが28日に秋田市で開かれ、専門家が、人口減少が進む中でクマの被害を防ぐために「オール秋田で対処すべき」と訴えた。

 講座は医療関係者などを対象に毎年開かれているが、今回は「クマ被害を考える」をテーマに、初めて一般にも公開された。

 2023年、秋田県内では過去最悪の70人がクマに襲われるなどしてけがをした。

 症状が重い20人を治療した秋田大学医学部付属病院の医師が、クマは立ち上がって攻撃するため顔にけがをするケースが多く、「爪や牙で骨や筋肉などを一挙に傷つけられる」などと悲惨さを訴えた。

 秋大医学部付属病院高度救命救急センター・中永士師明センター長:
「クマから逃げたら、後ろから襲われて尻をかじられるぐらいと思っている人もいると思うが、とんでもない。特に顔面外傷中心の非常に重症度の高い疾患になっている。傷は治っても、ずっと痛みが残る場合もある。PTSD(心的外傷後ストレス障害)やトラウマにもなる」

 最近は、医師や看護師が襲われた現場に出向いて治療にあたる体制が整えられたため、すぐに救急車を呼ぶよう呼びかけた。

 “なぜ被害が相次ぐのか”。秋田県立大学でクマの生態を研究する星崎和彦教授は、県内で進む「人口減少」を理由に挙げる。

 草刈りや間伐などを担える人が減り、山林と集落の境目がなくなったエリアにクマが出没すると主張する。

 星崎教授は、2023年は“異常”としながらも「今後も大量出没は起きるし、対処が難しくなる」と警鐘を鳴らした。

 秋田県立大学生物資源科学部・星崎和彦教授:
「地域それぞれで困っていることを利害関係者で共有する場をつくり、議論することが必要。人任せにしないで、自分たちで何をすべきか考える社会をつくっていかなければいけない。次の大量出没時にはもっと大変になるので、オール秋田的に何かをやらなければいけない」

 人口減少が進む中、誰が対策を担うべきか。課題は山積している。

秋田テレビ
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