怒濤の“値上げラッシュ”だった2023年

2023年も多くの物が値上がりし、家計を圧迫してきた。
2021年に始まった値上げラッシュは3年目に突入し、家計が値上げに追いついていないと感じていた人もいるのではないだろうか。

2024年も値上げラッシュは続くのか。そして昨シーズンに大きな影響を及ぼした「エッグショック」は再来するのだろうか。

エッグショックはまた来るのか

2023年は鳥インフルエンザの影響で過去最多の殺処分が行われ、店頭での品切れや外食産業では卵を使ったメニューを休止するなどの対応がとられた。

JA全農たまごによると、2023年4月の1キロ当たりの平均卸売価格(Mサイズ、東京地区)は、350円(前年同月比+139円)と最高値を更新。その後、6月に鳥インフルの収束が宣言されてから価格は下がり、クリスマスケーキや鍋などで需要が増える12月時点でも249円まで落ち着いた。

卵(イメージ)
卵(イメージ)
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10月中に1例目の鳥インフルが確認された昨シーズンと比べ、2023年は11月後半に初めて確認された。流行シーズンの前にはインフルの感染や卵の価格高騰が懸念されていたが、昨シーズンに比べ、落ち着いている。

一方、油断できないのが「飼料価格の高騰」だ。主原料のトウモロコシはその大半を輸入に頼っている。そのため為替や収穫期の天候に左右されることが多い。

農林水産省によると配合飼料価格は、主な原料であるトウモロコシの国際価格がウクライナ情勢等を受け上昇していることに加え、他の原料や為替相場等の影響により、上昇傾向で推移しているという。

一時期より下がった価格も、おととしに比べれば依然として高値だと養鶏業者はため息をつく。
鳥インフルだけが卵の価格上昇の敵ではないことから、今年も「エッグショック」を避ける理由にはならないだろう。

注目の「物価の優等生」は…

2023年ほど、”物価高”という言葉を耳にした年はなかったのではないだろうか。物価高で、家計への圧迫が続く中、安定的な価格を維持するのが「コメ」だ。

日本人の「コメ離れ」が叫ばれて久しく、消費が減少する傾向にある米市場にチャンスがあると読む。

ぐるなび総研によると具材にこだわった「おにぎり専門店」の出店が相次いでいるという。

店舗でのオペレーションも比較的簡単で、機材も省スペースで出店できることから人気が高い。輸入大国と言われる日本で「コメ」は唯一無二と言ってよい国産品で価格も比較的安定している。

農林水産省が公表している食料自給率では、米の自給率はほぼ100%で、日本人にとって米は食料安全保障の要とも言える。

また「米」として食べるだけでなくなく、「米粉」にするとその幅は広がる。米粉を使ったパンや麺、スイーツは、健康を意識した層にも人気で、大手コーヒーチェーンのスターバックスでは5月に国産米粉を使ったマフィンを発売(現在は販売終了)。

クリスピー・クリーム・ドーナツ 米粉を使ったドーナツ(現在は販売していません)
クリスピー・クリーム・ドーナツ 米粉を使ったドーナツ(現在は販売していません)

クリスピー・クリーム・ドーナツでは初めて米粉を使ったドーナツを販売した。これまで多くの物が値上げする中でも変わらず価格を上げない「コメ」には問題を指摘する声も一部であるが、“お買い得感”という意味では注目されても良いのではないだろか。

2024年の値上げペースは鈍化

では、2024年はどんな年になるのだろうか。

調査をする帝国データバンクによると、2024年の食品の値上げは合わせて1596品目となった。(2023年11月末時点)これは2022年の同じ時期に予定されていた6785品目と比べ、約8割減少のペースで推移している。

値上げをすることで採算性の改善が進んだが、一部では値上げ後に販売数量が減少する消費者の「値上げ疲れ」も顕在化した。加えて、これまでの値上げによる収益の改善が見込まれることから、当面は「値上げラッシュ」が再来する可能性は低い見通しだという。

こうしたことから、2024年の食品値上げは最大で1万品目前後を見込み、これまで続いた食品の値上げは「当面収束する」見通しだという。

一方で、エネルギーコストの上昇や、「2024年問題」による物流費の高騰は避けられないだろう。

2024 年は「値上げ疲れ」をしないで済むような年になるか注目だ。

砂川萌々菜
砂川萌々菜

フジテレビ報道局経済部記者。2023年7月から記者として活動開始。
農水省・食品・飲料・外食担当。2023年10月の酒税改正時にはビールメーカー各社の動向など取材。

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「経済部」は、「日本や世界の経済」を、多角的にウォッチする部。「生活者の目線」を忘れずに、政府の経済政策や企業の活動、株価や為替の動きなどを継続的に定点観測し、時に深堀りすることで、日本社会の「今」を「経済の視点」から浮き彫りにしていく役割を担っている。
世界的な課題となっている温室効果ガス削減をはじめ、AIや自動運転などをめぐる最先端テクノロジーの取材も続け、技術革新のうねりをカバー。
生産・販売・消費の現場で、タイムリーな話題を掘り下げて取材し、映像化に知恵を絞り、わかりやすく伝えていくのが経済部の目標。

財務省や総務省、経産省などの省庁や日銀・東京証券取引所のほか、金融機関、自動車をはじめとした製造業、流通・情報通信・外食など幅広い経済分野を取材している。