またしてもなぜ、幼い命は奪われたのか…。
奈良県橿原市に住む田川星華（たがわ・せいか）ちゃん（4）。「目が充血して頬も内出血している。身体的な虐待の疑いがある」と、歯科医師は星華ちゃんへの虐待を疑った。
Mr.サンデーは、児童相談所に通告した歯科医師を独自取材した。
「弱い者ばかりに…」証言から見えてきた容疑者の“二面性”
通報した歯科医師：
お母さん、星華ちゃんはどうしたんですか？
母親：
彼（交際相手）に目をつつかれたんです。
それは事件の1カ月前、歯科医師が見た虐待の兆候だった。
今年6月19日、前日から嘔吐や発熱を繰り返していた星華ちゃんが、病院に搬送され、その後死亡。それから2カ月余りが経った9月6日、逮捕されたのは母親の交際相手である山下翔也容疑者（27）。星華ちゃんの腹部を圧迫する暴行を加え、死亡させた傷害致死の疑いが持たれている。
調べに対し、山下容疑者は「全く身に覚えがありません」と容疑を否認している。
捜査関係者によると、星華ちゃんと母親は3年前、2人で三重県から引っ越してきたという。そして、山下容疑者と母親はSNSを通じて出会い、今年4月に交際を開始。
交際からわずか2カ月で一体、何が起きたのか？
大阪府門真市にある山下容疑者の自宅。郵便受けには、養生テープにペンで「山下」と名前が書かれていた。近隣住民に話を聞くと。
近隣住民：
ヤンチャ系ですよね。めっちゃ悪いとかじゃなくて活発な感じですかね。
一方、中学校時代の同級生はこう話す。
山下容疑者の中学校時代の同級生：
穏やかな優しい感じなんですけど、スイッチが入ってキレちゃうと「なんだお前」みたいな、「やるのか」みたいな感じになるので、強い者には逆らわないですね。裏では弱い者ばかり（いじめる）っていう印象があります。昔から。
――裏表が結構ある感じ？
中学校時代の同級生：
そうですね。
見えてきたのは、弱い者に対する攻撃性。それは山下容疑者の別の顔だったのか？
「目をつつかれた」と答えた女児…なぜ救えなかったのか
実は、星華ちゃんが亡くなる1カ月前、そのSOSにいち早く気づいていた歯科医師がいた。
5月12日、母親と共に、虫歯の治療でかかりつけの歯科医院を訪れた星華ちゃん。すると、最初に対応した歯科衛生士が星華ちゃんの異変に気付いたという。
その時、星華ちゃんの左目は充血し左頬は腫れていたという。「星華ちゃん、どうしたん？」と声をかけると…。
星華ちゃん：
目をつつかれた。
歯科衛生士：
誰に？お母さん？
星華ちゃん：
違う。
そして、担当の歯科医師が改めて尋ねた。
通報した歯科医師：
お母さん、星華ちゃんはどうしたんですか？
母親：
彼氏（山下容疑者）がつついたんです。
虐待を疑った歯科医師は「パートナーによる身体的な虐待の疑いがある」と、児童相談所に通告。しかし、その5日後、児童相談所から報告を受けた橿原市が母親から事情を聞くと、こうと説明を変えた。
母親：
彼（山下容疑者）が髪を乾かしている時に手が当たった。
橿原市は、山下容疑者については「世帯が別」だとして聞き取りを行わず、“虐待の疑いはない”と判断した。
救えなかった幼い命…。児童相談所に通告した歯科医師は、その胸の内を語ってくれた。
通報した歯科医師：
今回は救えたはずだ、という無念さが残ります。虐待の通告が多すぎて（人員不足などで）現場が対応できていないなど、虐待を取り巻くシステムに問題があるのは事実です。
橿原市は今回の事件を受け第三者委員会を設置し、対応が適切だったか検証する方針だ。
（「Mr.サンデー」9月10日放送）
