長野市の自動車販売店の元社長が、新車を販売する名目で複数の客から現金をだまし取ったとして詐欺の罪に問われている裁判が始まった。元社長は「間違いございません」と起訴内容を認めた。 

元社長「間違いございません」

被害額は1億円を超えるとみられる今回の詐欺事件、顧客の前から突然、姿を消した元社長は法廷で何を語るのか。

詐欺の罪に問われている、長野市の自動車販売店「デュナミス・レーシング」の元社長・小谷徹被告(64)。

この事件は小谷被告が2021年、自動車の販売名目で小諸市の男性から現金320万円、須坂市の男性から現金400万円、上田市の女性から現金200万円をそれぞれだまし取ったとして、起訴されている。

警察の家宅捜索(2022年2月)
警察の家宅捜索(2022年2月)
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27日、長野地裁で開かれた初公判。被告は2020年に脳梗塞で倒れたこともあり、車いすで入廷。傍聴席に一礼した。 そして、裁判官に起訴内容が合っているか問われると「間違いございません」とはっきりとした口調で答えた。

法廷内の小谷徹被告
法廷内の小谷徹被告

だました金は闇金への返済に

その後の検察の冒頭陳述。ずさんな経営実態を明らかにした。大手自動車メーカーに勤めていた被告は1995年ごろに会社を設立。検察は2007年ごろには赤字経営になり、新型コロナなどでさらに経営悪化が進んだと指摘した。 そして、闇金から金を借りて被害者から受け取った金はその返済などに充てていたと述べた。2021年10月上旬を最後に車の発注もしていなかったという。

長野地方裁判所(2023年2月27日)
長野地方裁判所(2023年2月27日)

詐欺の手口は…

(検察が読みあげた供述調書より ※被害者の一人)
他の販売店に見積もりをとっても500万円をゆうに超えていたアルファードが400万円で購入できるというのは不思議でなんでか聞いたら、ディーラーとの間では1週間に1台を注文する条件で現金で安く卸してもらえるという契約を結んでいる。現金で取引するから安くなる

自動車販売店(2022年2月撮影)
自動車販売店(2022年2月撮影)

この事件ではこのほかにも被害が相次ぎ警察には相談が寄せられている。検察はこのうち数件については追起訴する方針だという。

法廷内の小谷徹被告
法廷内の小谷徹被告

被害相談は数十件 総額1億円超か

今回の裁判は3件の起訴だが、警察には現金を払ったのに納車されず連絡が取れないという被害の相談は数十件あり、関係者によると被害額は少なくとも1億円を超えるとみられている。 今回、裁判にはなっていないが、被害を訴える女性は27日「裁判で自分のやったことをすべて話してほしい」と話した。

起訴された事件とは別に被害を訴えている長野市の50代女性。 

起訴された事件とは別に被害を訴えている女性
起訴された事件とは別に被害を訴えている女性

被害を訴える女性:
こっちは100%信用していたので、それだけに余計にショック

女性は被告の店でこれまでに2度、車を購入。2021年1月にも新車を購入しようと現金200万円を前払いしたが、納車されなかった。その後、被告とは連絡が取れなくなった。

新車を購入しようと現金200万円を前払いしたが…
新車を購入しようと現金200万円を前払いしたが…

検察によると、被告はいわゆる「夜逃げ」状態となったという。土地・建物の所有者への代金も払われず、裁判所が強制執行に踏み切る事態にもなった。 

27日の裁判で、検察はだまし取った金は闇金などの返済に充てていたと指摘した。

小谷被告からのメッセージ
小谷被告からのメッセージ

被害者「裁判で洗いざらい話して」

 被害を訴える女性: 
私がお店に行ったりすれば、普通に話をしたりしていたので、逆にどんな気持ちだったのかこっちも聞きたい。(裁判では)自分のやったことは洗いざらい話してもらいたい

27日の裁判では、検察は被害者の1人が「誠心誠意謝ってほしいし、自分の犯した罪をわからせるため可能な限り重い刑罰をあたえてほしい」と話していると述べた。 

自動車販売店(2022年撮影)
自動車販売店(2022年撮影)

(供述調書より 被害者の一人)
被告人にだまされて借金して用意したお金を奪われしまった。正直に言うと。だまし取られた金は戻ってくることはないだとうとあきらめています。被告には自分がやったことの償いをしてほしい。被害者には誠心誠意、謝ってほしいし、自分の犯した罪をわからせるため可能な限り重い刑罰を与えてほしい 

次回の公判は4月27日の予定だ。

(長野放送)