2022年9月、静岡県静岡市で乳がんの経験者を対象にしたイベントが開かれた。そこに用意されたのはウエディングドレス。「はじめから強かったのではなく、ものすごく弱虫なんです。」参加した女性が語った、生まれてくる孫に伝えたい経験と思いとは。
5年前に見つかった乳がん
この記事の画像(16枚)ウエディングドレスを着て、ブーケを手に持ち、カメラマンに向かって笑顔を見せる女性。この姿はパートナーのためではない。イベントに参加した雨宮洋子さん、67歳。5年前、乳がんが見つかった。
雨宮洋子さん:
開口一番うそでしょって言いました。その時は受け止められないんですね。私がなるはずがない。私じゃないよ。それが正直な気持ちでしたね
きっかけは自己触診
雨宮さんは元看護師。がんが見つかったのは、定年退職し、夫と2人、第二の人生を沼津市で送ろうと、奈良県から移住した次の年のことだった。きっかけは自己触診だ。
雨宮洋子さん:
10日に1回くらいは自分で、リンパ腺も両脇、お風呂上りにチェックしていたんですけど、「え、これなに?間違いだわ」とその時は思いました。でも次の日も、また次の日もあるんです
精密検査の結果、がんと確定。半年間の抗がん剤治療が始まった。
周りの支えで前向きに
雨宮洋子さん:
髪の毛がバサッと抜けた時が二度目のショックでした
抗がん剤の治療は自分の姿を変えていった。その後、右乳房の全摘出とリンパ節を切除。しかし、夫や家族をはじめ多くの人の支えで前向きに治療に臨めるようになったという。
雨宮洋子さん:
いきなり今の自分があるんじゃなくて、まず診断を受けて、治療計画を聞いて、このくらいの予後、こうですよとか計画を聞くうちに、負けてられないという気持ちがだんだんできていくんですね。はじめから強かったのではなく、ものすごく弱虫なんです、私は
闘病の証と自分へのエール
乳がんは術後5年間が、最も再発率が高いとされている。
雨宮さんは、4年目を迎えた。イベントへの参加を決めたのは、弱かった自分が、この4年間、病気と向き合い、闘ってきた証を残したい。ドレスを着て輝く姿を、5年目へ挑む自分へのエールにしたいという思いからだった。
そして、イベント当日。メイク室には夫・義仁さんの姿も。雨宮さんに寄り添い、ともに病気と闘ってきた。
夫・義仁さん:
髪の毛がなくなってから、そういう話にはならなかった。生きるか死ぬか、命が助かるかどうか、それが優先だった
雨宮さんのドレス姿に、義仁さんも笑顔を見せていた。
雨宮洋子さん:
全身が映る、後ろ姿も映る鏡を見て、これが私?素敵!と思いました。笑っちゃいけないけど、主人びっくりしていたのでそんなびっくりすること?って思ってうれしかったです
~撮影スタッフ:ちょっと抱き寄せる感じ、いいですね~
義仁さんは衣裳店でジャケットを借り、2人で撮影もすることに。
自分の経験を未来へ
撮影会には、東京に住む長男夫妻も駆けつけていました。家族での撮影を終えた後・・・。
長男の妻・彩乃さん:
実はもう少しで安定期なんです
長男夫妻の妊娠報告。思いもよらないサプライズでした。
雨宮洋子さん:
あきらめてしまったら止まっちゃう。もう私は何もできないんだとなったらきっと止まっていたと思います。支えてくれたし、一人の力ではない、すごく思います。生まれてくる孫に、自分の病気のことも伝えたいし、自分の体をしっかり守っていってほしいと思うし、乳がんは早期に発見すると命にはかかわらないので早くに気が付いて自己検診したり、定期的に健診を受けたりすると絶対に大丈夫な病気なので、そういうところも孫にも伝えていきたい
(テレビ静岡)