新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に減便・運休と深刻な影響が出ている航空会社。 
飛びたくても旅客便に乗れない今、パイロットは何を思うか 、日本航空のベテラン機長に話を聞いた。 

日本航空・運航本部 777運航乗員部部長 角田謙 機長 
日本航空・運航本部 777運航乗員部部長 角田謙 機長 
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--航空需要が減退している現状について 

日本航空 角田謙 機長:
世界的な新型コロナウイルスの影響は致し方ないので外的要因として真摯に受け止めている。減便することは利用者のお客様に本当に申し訳ないと思っているが、少しでも皆さんのお役に立てるように飛べるところは飛んで、地上スタッフ、グループ社員含めて機会があればいつでもスタートできる準備を万端にしています。 

--パイロットの乗務はどの程度に減っているか 

日本航空 角田謙 機長:
減便にともない乗務機会がそれに伴い減っています。しかし、パイロットは、シミュレーターを活用し、離着陸経験、スキルを維持しています。 
また、普段は一同に介してグループディスカッションする機会がなかったので、これを前向きにとらえて、テレビ会議を使って安全討議をしたり、ケーススタディをしたり、スキル、知識向上、経験値を増やすことに努めています。 
実機のフライトは少なくなってるかもしれないが、別の意味で成長している感じはしています。我々が出来ることは飛行機を安全に高品質に飛ばすと目的地までお運び、お届けすることが目的で、どんな状況でも変わりません。こういう時期に基礎を見直すことが重要なので、基礎訓練を何回も繰り返しています。 

--角田機長はパイロットを管理する立場。部下のモチベーションをどう維持しているか 

日本航空 角田謙 機長:
一部の部下はフライトの機会が減っていることには戸惑いがあるようです。ただ、仲間と一緒にディスカッションできる時間が増え、先輩の培った知識、経験を得る機会に恵まれています。 
また、ベテランの機長、副操縦士も若い人たちの発想や新しいツールの使い方を吸収する、いいチャンスになっていると思っています。コミュニケーションが活性化。これはいいメリットになっていると思っていて、それがモチベーションに繋がっていくと考えています。 

--旅客便や貨物便を利用してマスクなどの医療物資を運ぶ取り組みを開始した 

日本航空 角田謙 機長:
医療関係者の方は大変な状況だと思います。我々も社会システムの一端を担っているところでありますので、少しでも援助支援ができればと思っております。 
いつか、状況は必ず回復するので是非、医療関係者の方々とその時を一緒に迎えたいなと思っています。 

--今後の航空業界への思いは 

日本航空 角田謙 機長:
今回は新型コロナウイルスという要因で世界中が危機に陥っています。世界と日本が回復する時期とかその時の取り巻く環境によって柔軟に対応できるようにするのはどの産業も同じだと思っています。 
特に航空業界では、人がきちんと動いてくれるかどうか、移動してくれるかどうかにかかってきます。 航空業界は色々な状況に応じて準備している段階で、社会インフラという、公共交通機関であるので、そのニーズにどんな時でも応じられるようなオプションを持っています。 
日本航空は10年前に破綻してしまいました。あのときに利用者、関係者の方々に非常にご迷惑をおかけしました。10年間、日本航空、グループ会社全員がいかに社会貢献、社会の皆様に恩返しができるかということで 色々な取り組みをしてきました。 
日本の危機、国難の時に社会インフラの一端を担える航空会社として、その中で日本航空として、少しでも恩返し、少しでもお役にたてればと。 
逆境になると力が湧いてくるんです。パイロットはひょっとするとそういう職種かもしれませんね。 

売上の大半を占める旅客便が飛ばせず、毎月、赤字が続く航空各社。感染拡大が収束しても航空業界が以前のような活況を取り戻すかは分からない。しかし、収束を信じ、社会インフラの一翼を担う決意は揺らいでいなかった。 逆境で積み重ねる努力が、感染収束後の安全・安心な空の旅を支えることを期待したい。

執筆:フジテレビ 相澤 航太

相澤航太
相澤航太

フジテレビ報道局 「イット!」プロデューサー 元社会部記者