専門家会議「短期の終息難しい」 持続的な対策求める
東京は1週間ぶりに150人超えとなる165人の感染が確認され、警戒感が高まる新型コロナウイルスの感染拡大。
そんな中、政府の専門家会議が開かれ、新たな提言が発表された。
「専門家会議」提言のポイントは以下の4点。
・長丁場を覚悟する
・「自粛疲れ」を懸念
・ふたたび蔓延が生じないよう「新しい生活様式」の普及
・学校は感染及び拡大リスクをできるだけ低減した上で、再開のあり方について検討
新型コロナウイルスの短期的な感染の終息は考えにくく、また国内の感染状況に応じて持続的な対策が必要になるとされている。
また、専門家会議では対策の長期化に伴って「自粛疲れ」が懸念されていることにも注目。
特に社会的に必要性が高い活動であり、かつ様々な工夫により感染リスクを十分に下げられる事業などについては、制限を徐々に緩和していくことも検討していくとしている。
再びの蔓延を防ぐための「新しい生活様式」とは、引き続き重要視されている、感染拡大リスクが高い“3密”を避けること、それからテレワークや時差出勤などを行うこと。
現在多くの人が心がけ、実践している生活スタイルを日常のものとすることが大切になってくる。
また、全国のほとんどで臨時休校が続いている学校については、感染のリスクをできるだけ低減した上で再開のあり方について検討する方向性を示しており、今後の流行の状況によって、都道府県や市区町村でも判断できる体制を作っておくべきともしている。
東工大リベラルアーツ研究教育院長・上田紀行氏:
まずホッとしたのは、医療崩壊が起きていないことを明確化したことです。ギリギリのところまで来ているけれどまだ医療は崩壊していない。そしてその能力はこれから右肩上がりで高まっていくのだという非常にポジティブなことをおっしゃっていただいたと思います。
あともう1つは学校ですけれども、各自治体の判断に委ねられるというときに結構難しいことになるんじゃないかと思います。学校に子どもたちがいた方が感染リスクが少ないのか、今、公園がものすごい過密になっていて、学校を休んでいるけれども公園に行くのは大丈夫なのか。公園で遊ぶのと学校でちょっと距離をとって授業をやるのとどっちがリスクが少ないのか、子どもたちとって良いのかという…とても高度な判断を迫られることになると思います。
昭和大学医学部・二木芳人客員教授:
長丁場で持続的な対策の中心となるのが、やはり医療だと思います。まだ医療崩壊ではないということですけれども、ある程度落ち着いている間に取り戻していかなければいけない。そのための項目がいくつか出てきました。
1つは医療施設の役割分担です。コロナの重点病院を作ったり、逆にコロナを診ないでそれ以外、例えば心臓疾患や脳血管障害、大きなケガなどをきちんと診る病院を作るなどの役割分担の重要性。それから「調整能力」という言葉も出てきました。それぞれの地方自治体に病院の振り分けですとか、患者さんの移送ですとかそういうことを一括して扱うような調整能力が必要だと。また、軽症者あるいは無症状の方を収容する施設、設備を整えることが再び医療を守る上でも重要ですので、これは大急ぎでやらなきゃいけないことだなと思いました。
新規感染者は減少傾向
加藤綾子キャスター:
それでは今回専門家会議が今の状況をどのように分析したのか見ていきたいと思います。
<「専門家会議」状況分析のポイント>
・国内の新規感染者数は減少傾向
・実効再生産数は、全国0.7 東京は2.6(3月14日)→0.5(4月10日)
・新規感染者が「一定水準」以下まで下がらない→「徹底した行動変容の要請」を続行
3月の時点では実効再生産数(1人が何人にうつすかの平均値)が全国で2を超えていた、つまり「1人が2人にうつしてしまう」という数字が出ていたが、現在は0.7まで減少。また、東京も3月14日時点で2.6だったものが、約1か月後の4月10日には0.5となるなど減少している。
昭和大学医学部・二木芳人客員教授:
専門家会議で出たのは、減り方が緩やかで、その理由にやはり集団感染などがある、ということです。しかし原則的には「皆さんの方がしっかりと行動変容してくださったおかげで減っていっている」ということでしたので、今一層の努力が求められているのだろうと思います。
フジテレビ・風間晋解説委員:
今日の専門家会議の状況分析・提言を読むと「徹底した行動の要請を維持するか否か」を判断するにあたって、注目する数字として挙げているのが新規感染者数倍加時間、感染経路不明の感染者数の割合などなんですよ。実効再生産数に関しては具体的には挙げていないということは、専門家会議がそんなに大きく注目している数字じゃないという印象を受けました。
昭和大学医学部・二木芳人客員教授:
実効再生産数は新しい感染者の方が出てくる要素のひとつだと思いますので、決して重視していないわけではないと思います。これはこれで重要な指標じゃないかなと。
一方で、新規感染者数が一定水準以下まで下がらない限り徹底した行動制限を続けなければならないとされているが、では、この「一定水準」とは具体的に何人なのだろうか。
専門家会議のメンバーの西浦教授は、新規感染者数が100人になれば感染拡大を抑制できるレベルとしている。
昭和大学医学部・二木芳人客員教授:
全国レベルでの数が100人ぐらいになってくると、クラスターを一つ一つ見つけて潰していくという以前の方針にもう一度戻すことができるということですので、そういうことで1つの基準として目安として挙げております。
長引く自粛生活…今後必要な生活スタイルとは
では、これまで取り組まれてきた、患者数の増加を緩やかにする対策の効果は出ているのだろうか。
二木教授によると、現在はピークを超え、減少傾向にあるという。
一方で、感染拡大対策として長期化する自粛生活に、街からは不安の声も挙がっている。
40代男性:
ちょっとしんどいと思いますね。短い間だから頑張ろうと思ってやっている人もいると思う。
60代女性:
限界ですよね。2週間ぐらいなら我慢できるかもしれないですけど、こういう状態が長く続いたらみんな普通の生活ができなくなると思う。
40代男性:
うちの子どももそうですけど、私もこのまま続けられると、なかなか「外に出ていきたいな」っていうのが(ある)…身体的にももたないんじゃないかな。
30代女性:
ちょっと決断が遅いですよね。どういう風に収束させていくのがいいのか(決断を)出すのが遅いかなと。
40代女性:
はやく日常に戻りたいっていうのはあるんですけれどもしょうがないから、家族一緒にいられる時間をポジティブにとらえて頑張ろうかなって思ってます。
このような声もある中で、重要視されるのが「新たな生活様式の普及」。
前述のとおり、引き続き感染拡大リスクが高い“3密”を避けること、それからテレワークや時差出勤などを行うことが必要となってくる。
フジテレビ・風間晋解説委員:
ワクチンとか特効薬というのが普及するまでの闘い方というのは、結局この「新しい行動様式」を続けることで社会の抵抗力を強めながら、第二、第三波が来たときに迅速に察知して対策がとれるように、厳しい行動様式の制約のようなことができるように早期警戒システムを働かせなければいけないという二本柱だと思います。
加藤綾子キャスター:
新しい生活様式を求めるということは、ワクチンもなく、一旦収まっても新たに感染拡大しないようにということを求めた上でのことなんですかね。
昭和大学医学部・二木芳人客員教授:
そうですね。緊急事態宣言が解除できる目安は日本全体の患者の数が100人以下ですが、これはゼロにはならないんですよ。皆さんが行動変容を戻してしまうと増えてしまい、また改めて強い要請が出たりしますので、そういうことにならないようにということが求められているわけです。ただ、ひとつ良い話としては、ワクチンの開発が意外に早くできるかもしれないと。アメリカの一部の会社では年内にも1億人レベルでワクチンが作れるというお話もあります。私たちが思っている以上にワクチン、あるいは治療薬が出てきて、つらい時期を少し短くできる可能性はあると思います。
加藤綾子キャスター:
私たちがこれまで行ってきた努力というのは間違った方向ではなかったと捉えて良いということですよね。
東工大リベラルアーツ研究教育院長・上田紀行氏:
渋谷の人混み、20代と20代の接触は9割減ったと言っていますからね。みんな行動の変化を起こしているわけですよね。
加藤綾子キャスター:
しばらくはこの生活を続けてなんとか新型コロナウイルスに打ち勝つということですね。
専門家会議の提言をもとに、4日には政府が緊急事態宣言の延長の期間などを発表する予定となっている。
(「Live News it!」5月1日放送分より)