“優等生”と評されたが感染者急増

シンガポール保健省は4月23日、新たに1037人の感染を確認したと発表した。1日の新規感染者は4日連続で1000人を超え、国内の累計の感染者数は1万1000人を突破した。

そもそもシンガポールは早くから感染者が確認され、他の東南アジア諸国と比べても、迅速な対応を講じてきた。外国人の入国制限や入国後の隔離措置も迅速かつ厳格に実施し、感染が判明すれば、スマートフォンの位置情報を使って感染経路や濃厚接触者を割り出し、検査や厳しい隔離措置をおこなって、感染拡大の防止を図ってきた。その結果、3月下旬には、1日の新規感染者数は数十人に抑えられていた。しかし、状況が変わったのは、4月に入ってからだ。インドやバングラデシュなどの建設作業員が暮らす相部屋の宿泊施設で、相次いで集団感染が発生した。一気に感染者数が急増している。

外国人労働者が暮らす宿泊施設とは

外国人労働者が暮らす宿泊施設 シンガポール人材開発省フェイスブックから

シンガポール人材開発省によると、給与水準が高いシンガポールでは、およそ140万人の外国人労働者が暮らす。このうち低賃金の肉体労働と言われる建設業界では、およそ30万人が働いている。主にインドやバングラデシュなどの南アジア出身者が多い。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、こうした外国人の建設作業員は、2段ベッドが並ぶ相部屋で、不衛生なトイレや洗面台を共有する宿泊施設で寝泊まりしているという。まさに密閉、密接、密集の「3密」状態の場所で、集団感染が発生したと言え、アムネスティ・インターナショナルは以前から、こうした施設での感染症の拡大を警告していた。感染拡大を受け、シンガポール政府は4月20日からこのような宿泊施設あわせて43ヵ所に暮らす外国人の建設作業員全員に2週間ほど自室に待機するよう命じた。地元メディアによると、対象はおよそ18万人にのぼるという。

外国人労働者が暮らす宿泊施設 シンガポール人材開発省フェイスブックから

シンガポールではすでに2月の時点で、バングラデシュの建設作業員の感染が確認されている。大勢が同じ部屋で暮らす宿泊施設での感染拡大のリスクは予想できたはずで、こうした宿泊施設への対策が遅れたと言わざるをえない。

外国人労働者が乗るトラックへの指導 シンガポール人材開発省フェイスブックより

職場・学校の閉鎖と外出制限は6月1日まで続く

当初は感染増加のペースを抑え、「優等生」と評されたシンガポール。政府は以前、マスク不足への警戒もあって、「健康な人はマスクをする必要はない」と説明していたが、4月14日から、外出時のマスク着用が義務付けた。6歳までの子供を除き、着用しない場合は初犯で300シンガポールドル、日本円でおよそ2万3000円の罰金を科す。また、当初は日本と同様、都市封鎖や外出制限をおこなわず、経済活動を維持してきたものの、感染拡大が続き方針変更を迫られた。政府は4月7日から食料品やインフラ、物流など必要なサービスをのぞき、ほぼすべての企業とすべての学校を閉鎖した。また、外出も食料品の買い出しや運動などに制限されている。

入場制限中のスーパー マサゴス・ズルキフリ環境相フェイスブックより

感染者の増加ペースが鈍化しても警戒が必要

シンガポールの事例は、たとえ感染者の増加ペースが落ち着いてきたとしても、一転して急増するおそれがあることを示している。感染者の増加が抑えられ、一部の経済活動を再開する国も出てきているが、第2波、3波を想定しておくことが必要となる。私たち1人1人も、ソーシャルディスタンス(社会的な距離)を確保するなど、警戒を怠らないことが大切だ。

【執筆:FNNバンコク支局 武田絢哉】