緊急事態宣言で休園・休校期間がさらに長くなる中、子どもの自宅学習をどうやっていけばいいのか頭を悩ます保護者は多い。授業の代わりとしていまオンライン学習の導入が進んでいるが、多くの保護者・子どもにとっては初めての経験となる。

そこで「レア力で生きる」「新時代の学び戦略」(共著)の著者であり、スタディサプリ教育AI研究所所長兼東京学芸大学大学院准教授の小宮山利恵子さんに、オンライン学習教材の「選び方」と「活用術」について取材した。

教材選びには「解説が丁寧か?」の視点

スタディサプリ教育AI研究所所長兼東京学芸大学大学院准教授の小宮山利恵子さん
スタディサプリ教育AI研究所所長兼東京学芸大学大学院准教授の小宮山利恵子さん
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――日本ではオンライン学習の普及が進んでいませんでしたが、新型コロナウイルスによる休園休校で、「とにかく始めないと」と家庭に導入を検討している保護者は多いと思います。

小宮山さん:
これから始めようという保護者からの相談で多いのは、「どのように選んだら良いか分からない」「使ってみたいけど実際どうなのでしょう?」ですね。また、使い始めた保護者からは、「使っているけど、うちの子どもには向いていないかもしれない」「オンライン教材と紙の教材、どうやって使い分けたらいいの?」という相談が多いです。

――オンライン学習をこれから始めるという保護者にとっては、どのオンライン教材を選んだらいいのかをまずは知りたいですね。

小宮山さん:
教材を選ぶ際は「解説が丁寧か?」という視点がとても重要です。まず保護者が「良さそうだな」と思う教材をいくつか見て、解説動画がきちんとしているかどうかを確認します。その中で良いと思ったものについて、子どもと一緒に試してみます。

選択式問題が多い教材は単元ごとに確認

――親が選んで子どもと一緒に試すのですね。

小宮山さん:
そうです。大抵の教材は無料のお試し期間があるので、そこで子どもに合ったものを見つけるといいです。塾に通っている子どもに「オンライン教材も」と考えていらっしゃる場合には、塾では習っていない教科だけ受講してみるといった工夫も効果的でしょう。

――オンライン教材を選ぶ際に、気を付けるポイントはありますか?

小宮山さん:
教材・アプリによっては、自分でデバイスを揃える必要のあるものがあります。教材の中には選択式の問題が多いものもあり、選択式の問題は適当に回答できてしまうので、単元の最後にきちんとできているかどうか一緒に確認する作業が必要でしょう。また、中には問題数が少ないものもあります。その場合、応用問題をしたい子どもには物足りなくなってしまいますね。漢字の書き取りなどでは、「とめ」「はね」の正解の判定が厳しすぎる時があります。

1人にさせず「よく分かったね」と声かけ伴走

――オンライン学習の教材を、実際に活用する際のポイントは何ですか?

小宮山さん:
オンライン教材のメリットは、分からなければ何度も動画を見て確認できることです。これによって、分かっている子どもは先の単元へ、理解が不足している子どもは前の単元に戻すことができます。つまり教科ごとに習熟度に合わせて学習できるので、得意な教科をどんどん伸ばすこともできるのです。さらに言えば、自動採点で親が採点する時間の短縮にもつながりますし、解いた量が可視化されるので、子どもの自己肯定感の醸成にもつながります。

――子どもの学習中に、保護者が気を付けなければいけないのは、どんなことでしょうか?

小宮山さん:
モチベーション維持が重要なので、子どもに伴走することが必要になります。子ども部屋に一人で使うのではなく、親の目が届くリビングで使うことで、子どもが躓いたときに親に話しかけやすい環境づくりも大事でしょう。また、単元ごとで習熟度を確認し、その都度「よく分かったね」「分からない問題はなかった?」などの声掛けをすることで、インプットとアウトプットを自ら行う習慣付けにもなります。

オンライン学習では保護者の声掛けが大切
オンライン学習では保護者の声掛けが大切

端末を長時間使用しないルール作りを

――保護者が積極的に、子どもの学習にコミットしていくことが大切なのですね。

小宮山さん:
また、教材によりますが、ゲームがたくさん付属しているものもあり、「やりすぎる」ことに注意が必要ですね。あと心配なのはPCやタブレットを長時間使用すると、子どもの目に悪いことです。

――これはどうやって解決すればいいでしょう?

小宮山さん:
3つポイントがあります。1つは、「一日および一回の使用時間を決める」こと。そして、「デバイスと適度な距離を取る」こと。30cmほど離してデバイスを見下ろすようにして使うのが良いでしょう。休憩時間には遠いところを見て、目のピントを柔軟にすることも大切です。最後に「ブルーライトカットのフィルムを貼る」ことですね。

テクノロジーを嫌いな子どもには

――とはいえ学校や学習塾はまだ「紙文化」です。紙の教材とオンライン教材はどのように併用すればいいでしょうか?

小宮山さん:
現状学校では試験を紙で行うことが多いので、筆記に慣れるうえでも紙の教材は大切です。紙との併用でおすすめなのは、例えば、漢字の書き取り練習などは紙でやって、オンラインでは応用問題を解くことです。オンライン教材では問題数が少なく感じるお子さんもいらっしゃるかもしれないので、その際には紙ドリルとの併用も良いですね。

漢字の書き取り練習など「紙」の学習も大切にしたい
漢字の書き取り練習など「紙」の学習も大切にしたい

――最後になりますが、オンライン学習を嫌がる子どももいますが、こうした子どもにはどうしたらいいですか?

小宮山さん:
テクノロジーが好きではない子どもに、無理にやらせる必要はありません。その場合には紙の教材のみでいきましょう。ただ、テクノロジーの活用はこれから益々必須となりますので、そうした子どもには日常のどこかでテクノロジーに触れる機会を作ってあげるといいですね。

――やはり親と子どもが一緒に学ぶことが、オンライン学習をうまく活用できるポイントですね。ありがとうございました。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。