緊急事態宣言がついに発令

新型コロナウイルスの感染が全国的に広がっていることを受け、安倍首相は4月7日、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づく「緊急事態宣言」を発令した。
 

宣言の発令対象は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県で、期間はGWが終わる5月6日までの1カ月間。感染拡大を防ぐこと、医療体制を整えることなどを目的としている。

この宣言によって大きく変わるのが、対象区域の都道府県知事の権限が強まること。
具体的には、不要不急の外出の自粛を要請したり、遊戯場や遊興施設など、多くの人が利用する施設の使用制限なども要請・指示できるようになる。

詳しい内容は編集部でも取り上げているので、気になる人はこちらもチェックしてほしい。

(参考記事:「緊急事態宣言」が出されたら…都市封鎖はされる?外出はOK?【内閣官房のサイトでQ&A】

企業が営業停止となった場合「休業補償」はどうなる?

緊急事態宣言によるこうした変化は感染拡大の抑制につながるとみられるが、一方で企業や労働者にとっては、思わぬトラブルの種となる可能性も懸念されている。
 

その一つが「休業補償」。労働基準法に基づく考えでは「会社都合での休業」をする場合、企業は労働者に「平均賃金の6割以上の手当」を支払う義務がある。新型コロナウイルスによる営業自粛などもこの枠に入るため、これまでは労働者に一定の金銭的補償がされる状況だった。
 

厚生労働省「労働基準法に関するQ&A」より

しかし、緊急事態宣言が出ると、知事権限で営業停止などが要請できるため、企業の捉え方によっては「会社都合での休業」ではなくなる可能性も出てくるのだ。

厚生労働省の担当者は「基本的には、緊急事態宣言が出ても休業補償がなくなるわけではない。業種などケースバイケースでの判断になる」と話すが、自分の勤める企業がそういうスタンスをとらないとも限らず不安は残る。

また、素朴な疑問として通勤用定期を4月のタイミングで更新する人も多いと思うが、在宅勤務が推奨され会社に行かなくなった場合、企業側はその期間の交通費を支払わなくてもよくなるのか。

経験したことがない状況に経済的打撃を受けている業界が多い中で、様々な不安を労務問題に詳しい、旬報法律事務所の棗一郎(なつめ・いちろう)弁護士に伺った。
 

ポイントは「使用者の責」と言えるかどうか

――緊急事態宣言が出た場合、企業における休業補償の支払いはどうなる?

実に難しい問題となります。緊急事態宣言が出ても、都道府県知事が出せるのは要請なので「できる限りしないでいただきたい」という意味合いにとどまります。

労働基準法の第26条に、休業補償(手当)の支払い義務が発生する条件として「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合」とありますので、要請での休業・営業停止が「使用者の責」、つまり会社側の責任といえるかどうかは、解釈が分かれるところではないでしょうか。

個人的にはこれまで通り、休業補償をするべきだと思います。
 

棗一郎弁護士

――なぜそう思う?

緊急事態宣言が出ても、病院や薬局、小売店といった生活に必要な業種は要請の対象外となるでしょう。こうした業種が自主判断で休む場合、当然ですが休業補償の条件を満たします。

要請の対象外となる企業でも、現段階だと都市間の移動を強制的に止められるような状態までにはなっておりません。出勤しなくていい、休業するという判断は企業側に委ねられるので、「使用者の責」と解釈できる。そのため、休業補償はする必要があると思われます。

 

――休業補償について、企業はどのように考えるべき?

難しいところです。企業によっては、経営状態などで休業補償をしたくてもできないケースがあります。飲食業や旅館業、ホテル業などは苦しい状況ですよね。来客や経営の見込みがなくて、
休業せざるを得なくなった場合、それを「使用者の責」とはいいがたい
です。

そうした状態にあるのであれば、支払いができないケースも出でくるかもしれません。ただ、政府の助成制度などもあるので、何とか活用して、休業補償を維持してほしいと思います。

 

――緊急事態宣言を理由に、企業から休業補償を拒否された場合は?

企業内に労働組合がある場合、相談して企業と交渉してもらいましょう。ない場合は労務問題専門の弁護士、個人でも加入できる「ユニオン」や「連合」などの団体を頼りましょう。そこで問題が解決しない場合、行政や労働基準監督署などにアドバイスを求めるべきでしょう。
 

交通費に法的な支払い義務はない

――定期代などの交通費は、企業に支払う義務はある?

交通費は実費支給なので、法律上の支払い義務はありません。在宅勤務などで会社に来なくてもいいのであれば、その間は支払わなくても問題ありません。ただ、特例で出社したり、仕事でどこかに行かなければならない場合、その分は支給する必要があります。

 

画像はイメージ

――これから起こりそうな問題はある?

私は日本労働弁護団の一員で、4月5日には、新型コロナウイルスに関する電話相談のホットラインに参加しました。そうしたところ、「非正規社員の雇用不安」「休業補償の不安」「職場における感染症対策」についての相談が多く寄せられました。

このような問題が喫緊の課題といえると思います。

 

――労働者はこの状況をどう対処していけばいい?

不安を感じたら、専門家や有識者に相談するのが一番だと思います。日本労働弁護団でも、無料の電話相談ができる機会を定期的に作っていければと思っています。

 

緊急事態宣言が出た場合、経営の切迫などやむを得ない状況を除いては、企業側はこれまで通り休業補償をするべきとのことだった。一方で交通費については、在宅勤務の環境が整っている場合会社側に支払いの義務はないとのことだった。

企業と労働者、両者にとってつらい状況だが、協力して乗り切っていきたいところだ。

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