すでに4万7000人以上(4月2日午前現在)の命を奪った新型コロナウイルス。世界中が見えない敵との苦闘を続けているが、ウイルスは人体だけでなく経済にも大きな悪影響を及ぼしている。その事実を可視化するデータが韓国から出てきた。中国に次いで早期にウイルスが蔓延した韓国のデータは、日本経済の先行きを占う意味で注目される。

韓国は生産・消費・投資のトリプルダウン

韓国統計庁が3月31日に発表した2月産業活動動向によると、コロナウイルスの感染拡大が始まった2月の全産業生産は前月より3.5ポイント減少し、2011年2月の3.7ポイント減少に次ぐ大幅な減少となった。特に自動車の生産は、新型コロナウイルスの影響で中国からの部品調達が滞ったため、27.8ポイントの大幅減となっている。感染拡大防止のために人々の移動が止まったため、航空旅客業(マイナス42.2)、鉄道運送(マイナス34.8)、旅行業(マイナス45.6)も大幅にダウンした。

外出の自制で買い控えが発生したためか、消費も前年同月比6ポイントダウンとガタ落ちだ。設備投資も前月より4.8ポイント下がっていて、経済全体が縮小したのが分かる。

ソウルの街を歩いていても、警戒の緩みからか飲み歩く若者の姿が目に付くようになったものの、出歩く人が極端に少ない状況は続いている。韓国政府は矢継ぎ早に経済対策を打ち出してはいるが、苦境は今後も続きそうだ。

3月27日に撮影したソウルの弘大(ホンデ)。多くの若者が集まっていた

「恐怖の死月」に怯える韓国企業

韓国の保守系大手紙「朝鮮日報」は3月28日「企業ら『恐怖の死月』…信用等級下落、誰も社債を買わない」というタイトルの記事を出した。日本語では「4」と「死」はどちらも「シ」と読むが、実は韓国語でも「4」と「死」はどちらも「サー」と読む。この記事のタイトルは「4月」と「死月」をかけているのだ。なぜ韓国企業にとって4月は「死月」なのか?


記事によると、韓国の各企業が4月に償還しなければならない社債が合計6兆5000億ウォン、日本円で約5800億円に上るという。社債とは企業の借金のようなもので、償還はいわば返済の事だ。各企業がお金を準備して返済すれば別に問題は無いのだが、この返済資金を工面するのが、新型コロナウイルスの感染拡大によって難しくなっているのだ。

例えば、ホテルや百貨店などを抱える巨大財閥のロッテグループは新型コロナウイルスによる業績悪化に直面しているが、4月の社債償還額は日本円で約320億円に上る。ロッテグループの辛東彬(シン・ドンビン)会長は非常経営会議を招集し「新規投資計画調整を通じて現金流動性を確保しなさい」と指示したという。新たな投資を見直してでも、社債の償還などに使える「動かせるお金」を確保しなさいという事だ。どうにかして社内の金をかき集めて社債の償還が出来ればいいが、すぐに動かせるお金が無ければ、自転車操業的に借り換えをしなければならない。ところが借り換えも簡単ではない。新たな社債を発行しようにも、新型コロナ感染拡大の収束が見えず将来への不安が高まっているため、投資家が社債を買ってくれないケースが多発しているのだ。

3月には大手金融機関であるハナ銀行と世界的製鉄企業ポスコの系列会社が社債を発行したが、買ってくれる投資家が少なかったために、目標金額を調達できなかったという。ハナ銀行の格付けはAA、ポスコの系列会社もAA-という「優良企業」だ。朝鮮日報の記事には「最優良と評価される企業が社債発行目標額を達成出来なかったことは大きな衝撃」との、ある企業の最高財務責任者の声が寄せられている。

新型コロナウイルスに関する経済対策を指揮する洪楠基(ホンナムギ)副首相兼企画財政相

韓国政府は苦境に陥った企業を救えるのか?

実は4月の償還額6兆5000億ウォンというのは、間の悪い事に4月としては過去最大の金額だ。韓国企業は今、社債という借金の返済期限が来ても、業績悪化で手元にはお金が無く、借り換えも難しいという困難に直面している。韓国SK証券のユン・ウォンテ研究員は韓国紙「中央日報」の取材に対して「市場では非優良債権の回避が本格化していて、半分ほどが償還に失敗し企業の連鎖的デフォルト(債務不履行)が続く恐れがある」と分析している。韓国政府が、この企業の苦境を克服できるような妙案を打ち出せるのかが注目される。

【執筆:FNNソウル支局長 渡邊康弘】