大手生命保険会社が発表している人気職業のランキング。小学生の男女、いずれでもトップ10に入っているのが「教師」だ。
人気の職業だが、実は年々志望者が減少し、対策が求められている。
なぜ減っているのか。新人教師の一日に密着し背景と課題に迫った。

なぜ…? 教員採用試験の志願倍率が低下

新人教師・中沢香名先生(長野市・城山小学校)
新人教師・中沢香名先生(長野市・城山小学校)
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午前7時30分。

城山小学校・中沢香名先生:
おはようございます。
(Q.朝早いですね)
そうですね
(Q.大体毎日このくらいに?)
このくらいに着くようにしてます

城山小学校の中沢香名先生。2021年、採用された新人教師だ。
学校に到着すると、担任をしている5年生の教室へ。

城山小学校・中沢香名先生:
朝は子どもたちが来るのを待って、授業の準備をしたり、提出物も来るので提出物のチェックをしています

準備していると児童が登校してきた。

城山小学校・中沢香名先生:
おはよう

授業の様子
授業の様子

人気職業の一つだった教師。
しかし近年、採用試験の志願者が減っていて倍率も下がっている。
2021年の小学校の倍率は2.61倍。初めて3倍を下回った。

3倍を切ると「人材の質の維持が難しい」と言われており、県教育委員会も「優秀な人材を確保する点から、極めて憂慮すべき問題」と捉えている。
このため、受験の条件や選考方法、試験日程などを見直す方針だ。

信州大学の伏木教授は志願者が減った要因を3つ、挙げている。
「少子化の影響」「一般企業への流出」、そして3つ目は…

信州大学学術研究院 教育学系・伏木久始教授:
ちょっと深刻な問題で、若い人たちにとって学校の教師の魅力が低下している。いろんな事件になったり、いろんな問題がメディアを通して語られ、「学校ってきつそう」「先生の仕事は大変だ」ってイメージがかなり一般化してしまった

現場の実情はどうなのだろうか。

5年生の担任・新人教師の1日は…

城山小学校の新人教師・中沢香名先生の一日に密着した。

児童:
これから1時間目の授業を始めます、お願いします

1時間目は算数だ。

タブレットを使った授業
タブレットを使った授業

中沢香名先生:
(前回の授業で)三角形、2つ作ったんだよね。四角形に分けることができなかったので、三角形に分けて面積を求めました

タブレットを使いこなす児童たち。授業には欠かせないツールとなっている。

続く2時間目は社会。

児童:
これで2時間目の授業を終わります

授業を終えて駆け出す児童:
ドッジボール!

2時間目のあとは休み時間。

休み時間に鍵盤ハーモニカの練習
休み時間に鍵盤ハーモニカの練習

音楽会が近いということもあり、中沢先生は児童から相談を受けていた。

中沢香名先生:
ここはソファミレのところ、レレレレだよ

大学時代、音楽を専攻していた中沢先生。指導はお手の物だ。

小さいころから学んだ音楽の楽しさを伝えたいという思いに、小学校時代の恩師の姿が重なり、中沢先生は教師を志したと言う。

中沢香名先生:
小学校の時の担任の先生が大好きで、その先生に憧れていたので、自分も小学校の先生になろうと思いました

日本の教師の「事務作業」時間は各国平均の2倍

 
 

3、4時間目は「専科」の先生の授業。授業のない中沢先生は…

中沢香名先生:
初任者研修があるんですけど、その資料を作ったり、感想を書かなきゃいけないのでそれをまとめてます

資料作りの他に、提出物のチェックや保護者への連絡のまとめ。空き時間はそうした仕事に充てられる。
さらに、コロナ禍で新たな仕事も。

中沢香名先生:
給食前なので机を消毒してます。毎日、給食の前は

児童全員の机をアルコール消毒。

国際調査では、日本の教師が世界で最も労働時間が長いという結果が出ている。
授業はさほど長くない一方、事務作業の時間が各国の平均の2倍ほどになっているのだ。

中沢香名先生:
(事務作業が)あるっていうのはわかっていたけど、実際やってみると大変に思う

こうした現状から今、事務を補助する「サポーター」などの配置が広がりつつある。
信州大学の伏木教授も、多様な人が働く場にすべきと主張している。

信州大学学術研究院 教育学系・伏木久始教授:
学校の先生がやらなくてもいい仕事が、日本の場合はかなり負担させられている。どこが教員の専門性が生かされる仕事なのかを改めて吟味しながら、多様な人々が一緒に仕事ができる現場になっていく必要がある

児童の下校まで休む間もなく

4時間目の音楽の授業から児童が戻ってきた。

児童:
小太鼓、きょう打ったんだよ!

城山小学校・中沢香名先生:
できた?

児童:
おれも、おれも
おれできたの?ピアノ?

次は給食の時間。

児童:
いただきます

中沢香名先生が指導:
野菜すごい残ってんじゃん。
しー、黙食

児童の面倒を見たり、「黙食」を促したりと教室中に目を配る中沢先生。
食べ始めるのは児童が落ち着いてから。

県教組の調査によると、教師の休憩時間は1日平均6分38秒だった。

中沢香名先生:
おかわり聞いたりしてると時間どんどんなくなっちゃって、食べるの忙しいです

(Q.中沢先生はどんな先生?)
児童:
やさしい先生
すごいやさしい。好き!

午後1時、昼休み。

昼休み、児童が黒板に先生の似顔絵を描く
昼休み、児童が黒板に先生の似顔絵を描く

児童:
これ先生

中沢香名先生:
どれどれ?これ?もっとかわいく描いてよ(笑)

担任になって半年余り。すっかり児童に慕われている。

城山小学校・片山洋一校長:
(中沢先生は)教師として基本となるいいものを持ってると思います。一番は子どもたちとのかかわり方。非常に自然で元気よく、楽しく仲良くやってる

5、6時間目は図工。事前にタブレットで撮った善光寺の写真をもとに絵を描いた。

中沢香名先生:
こっちの方が遠くにあるんだから、小っちゃく描いた方がいいんじゃない?

児童:
先生できたよ

中沢香名先生:
じゃあ絵の具塗る?

児童:
もう時間ないからいい

中沢香名先生:
もうやめるの?ちょっと見せて見せて

中沢香名先生:
これはどうするの?

児童:
雲だから適当に

中沢香名先生:
雲もやったのね、全部マジックで描いたのね

この日は特別な時間割で、掃除はなく6時間目が終わったら下校。

児童:
あすも元気に学校に来ましょう、さようなら

中沢香名先生:
さよならー、さようならー

児童を見送る…
児童を見送る…

中沢香名先生:
一日忙しいので、追われているなって感じているので、(児童が帰宅して)ほっとした気持ちもあります

魅力と不安と…教員志望の学生の思い

忙しい毎日を送る教師。教員志望の学生にも話を聞いてみた。

信大 教育学部(3年生):
子どもと一番近い職業だなって思っているので、とっても楽しみです。(教員の仕事は)結構大変って耳にするので、できるのかなって少し不安ではあります

信大 教育学部(3年生):
変化していく子どもたちとか、先生が子どもを思う気持ちとか、身をもって感じることができて、すごいすてきな仕事だと思って教師を目指しています。結婚したり子どもができた後でも、忙しい教師の仕事を続けられるのか不安です

信大 教育学部(4年生):
(教師は)大変そうだなってイメージも正直あるのですが、それ以上に子どもたちの成長であったり、子どもたちの感動や変化を目の当たりにできる魅力的な仕事だと感じています

大変さの一方、やりがいや楽しさを感じて…

午後5時15分。

職員会議をはさみ、生徒が帰った教室でテストの採点や翌日の準備をする中沢先生。
教師になって半年が経った。

中沢香名先生
中沢香名先生

中沢香名先生:
何とか必死にやっています。「ブラックだ」とかそういううわさがあったり、ちょっと大変だと思うところがあるけど、それ以上に子どもたちのいい姿とか見られたり、自分の中で授業がうまくできた時の達成感。いろんな気持ちを味わうことができて、すてきな仕事だと思う。やっててよかったなって感じます

子どもたちに成長を促し、そばで見守る…。教師でなければ味わえない感動は昔と変わらない。

しかし、今は学校でも情報化、国際化、価値の多様化への対応が求められる時代。「やる気」や「やりがい」に頼るだけでは厳しい状況だ。

中沢先生の仕事は夜8時まで続いた…

城山小学校・中沢香名先生:
お疲れさまでした。ありがとうございます

(長野放送)