実際の経験談も...今はキレる中高年の時代!?

「キレる」と言えば、一昔前はささいなことで逆上する若者を指すことが多かった。

だが今の時代はそれが中高年、特に高齢者に移り変わっているような状況がないだろうか。

実際、編集部で「キレられたエピソード」を募集したところ、高齢者にいきなり激怒されたという経験談が複数寄せられたのだ。

「突然、後ろから走ってきた自転車に追突されました。痛いと思わず声を上げましたが、ぶつかってきた当事者は謝る様子がないため、『危ないでしょう』と注意したところ、自転車をこいでいた70歳後半であろう老人が一言。『真ん中歩いてんじゃねえよ!』。人生100歳、このフレーズ理解した出来事でした」(投稿者:キャッキャさん)

また、自転車に子供を乗せて走行していたときに、嫌がらせをされたというケースも。

「急にハンドルを切り、自転車を横向きにして狭い坂道を塞がれ、通せんぼする形に。えっ?と思いながら横を抜けると、ぶつぶつと文句を言われました。その出来事の前に、特に何かトラブルになるようなことがなかったのに急にブチ切れられたため、すごく驚き怖かったです。それ以来、高齢男性がいると怖くて避けています」(投稿者:ゆきももさん)

これらのエピソードに限らず、公共の場所でトラブルなどが起きたとき、一見すると穏やかそうな年配の人がいきなり激高することもある。「キレる中高年」というべきだろうか。

犯罪白書では高齢者の「傷害・暴行」が増加

こうした状況は、国内の犯罪状況をまとめた法務省の「犯罪白書」にも見て取れる。2019年版を見ると、1989年から2018年までの30年間で大きな変化が起きているのだ。

摘発された刑法犯を年齢層別に見ると、65歳以上の高齢者率は1989年の2.1%に比べて、2018年には21.7%にまで増加。それと反比例するかのように、若年層の刑法犯は減少傾向にある。

2019年度「犯罪白書」より

そして、高齢者が犯した罪にも変化が。1989年と2019年の罪名の割合を比べると、全年齢層で「傷害・暴行」が増えているのだが、特に高齢者は2.9%から13.5%まで増えているのだ。

高齢者刑法犯の罪名構成比
【1989年】

万引き(60.2%)
万引き以外の窃盗(17.4%)
傷害・暴行(2.9%)
横領(9.7%)
詐欺(2.8%)
その他(7.1%)

1989年の刑法犯の罪名比率。高齢者の罪は「万引き」が多数を占める(2019年版「犯罪白書」より)


【2018年】
万引き(54.4%)
万引き以外の窃盗(16.8%)
傷害・暴行(13.5%)
横領(5.7%)
詐欺(1.9%)
その他(7.7%)

2019年の刑法犯の罪名比率。「傷害・暴行」の罪が増えている(2019年版「犯罪白書」より)

もちろん、日本で少子高齢化が進んでいること、怒りの感情はどの年代でも起こることを忘れてはならない。しかしこのデータから、高齢者が怒りっぽくなって“暴力をふるった”とも読み取れる。

「人生100年時代」といわれる最近では60歳を過ぎても元気で活動的な人も多くなってきた。
では実際のところ、年齢を重ねることで怒りの感じやすさなどに違いはあるのだろうか? そして、対処法はあるのだろうか。高齢者の心の問題と認知症を専門とする、精神科医・和田秀樹さんに伺った。

老化すると「怒りを抑えるブレーキ」が利かなくなる

――統計では、高齢者の傷害・暴行事件が増えている。要因として何が考えられる?

人間は年齢を重ねるほどおとなしくなる、感情が柔らかくなると言われますが、これは正しい表現ではありません。年齢を重ねるとホルモンの減少などで活動的ではなくなるのですが、老化による脳の萎縮で“怒り”という感情を抑えるブレーキは利きにくくなるのです。

そのため、普段はおとなしくても怒ったときに感情の歯止めがきかないのです。キレるお年寄りが、普段から暴言を吐いたり暴力をふるうことは考えにくいと言えます。

なぜ高齢者の事件が増えているかですが、さまざまな理由が重なっているためでしょう。
少子高齢化で高齢者自体が増えているのに加え、高齢者のさらなる高年齢化が進んでいます。

ここ30年の変化でいうと、お年寄りを敬う文化が崩れていることも影響していると思います。個人的な意見ですが、今は年寄りを邪魔者扱いする社会的風潮があると思います。家族や社会に邪魔にされる、迷惑をかけているという自責の念も「キレる」ことにつながります。

精神科医・和田秀樹さん

――なぜ、年齢を重ねると怒りのブレーキが利かなくなる?

年齢を重ねると脳の萎縮が進み、理性的なブレーキをかける前頭葉が衰えるからです。

脳は部位によって役割が異なり、このうち脳の高次機能に影響する「大脳皮質」は、感情や記憶などに影響する「前頭葉」、言語理解などに影響する「側頭葉」、視覚情報の処理などに影響する「後頭葉」、計算能力などに影響する「頭頂葉」の4領域に分けられます。

このうち、人間らしい理性につながるのが前頭葉なのですが、ここは他の領域に比べると老化で衰えやすいことが分かっています。そのため、若い頃は「これ以上怒ってはいけない」と我慢できることでも、年齢を重ねると我慢できなくなるのです。


――その前頭葉は何歳くらいから衰える?どんな症状が出る?

早ければ40代の初め頃から、衰え始めると言われています。

前頭葉は理性だけではなく意欲や創造性もつかさどるので、衰えるとここら辺の機能も落ちてきます。意欲が湧かなかったり、発想力が落ちたりですね。自分の行きつけの店にしか行かない、同じ著者の本ばかり読むといった行動に表れることもあります。

挑戦を忘れず、たまには自分勝手なことも

――それでは、前頭葉の衰えに対する対処法などはある?

前頭葉は使っていないと衰えやすいです。また、ルーティン的な行動では活性化せず、想定外のことや予想外のことを経験したときに活性化すると言われています。

そのため、新しいことやクリエイティブなことに挑戦するべきです。主婦なら普段作らないような料理に挑戦してみたり、高齢者なら別ジャンルの本を読む、会社員なら言われたことばかりではなく、自分の発想で仕事をすることなどでしょうか。多数派や無難な意見に流されず、ある意味で「自分勝手なこと」をするのもたまにはよいでしょう。

年齢を重ねると、確かに脳は萎縮していきます。しかし、現代の人間は脳機能のほんの少ししか活用していません。年寄りだから、などと諦めないことも大切でしょう。

前頭葉の活性化には、新たな挑戦が効果的という(画像はイメージ)

――中高年が抱えやすい怒りなどはある?

高齢者を診察してきた経験則で考えると、自分の存在をバカにされたり、自己愛を傷付けられたときに強い怒りを感じるようです。今の中高年は気の毒なところもあって、自分が若い頃は年上や目上を敬うように言われていたのに、今はそのような教えが薄れています。

さらに社会人の場合、定年までは部長や課長などの肩書きがありますが、退職した途端に社会的地位がなくなって“おじいちゃん”“おばあちゃん”とひとくくりにされます。「なぜ自分だけ」「昔はこうじゃなかった」という気持ちがあるのではないでしょうか。

脳機能の衰えによるものと理解して接してほしい

――周囲はその怒りにどう対処すればいい?

脳機能の衰えが影響しているので、ある程度は仕方ないところがあります。認知症患者なども含めて、脳機能が衰えている人は気分に左右されがちなので、中高年の人に接するときは尊厳を大事にする、顔を立ててあげることが必要になると思います。

ただ、前頭葉が衰えていると理性が働きにくいため、謝るなどしても、怒りがエスカレートすることもあります。店員などにずっと怒っている状態ですね。対処法はここでも同じなのですが、周囲としては脳機能の衰えによるものと理解して、接してあげてほしいですね。


――怒っている本人ができることはある?

怒りを感じたときは、深呼吸をして落ち着くことを心がけてください。前頭葉は酸素量が減ると、正常な働きができなくなることがあります。例えば、受験生が試験中にパニックを起こすのは、緊張などで前頭葉が一時的な窒息状態にあるからです。

前頭葉の働きを回復させるには、深呼吸したり笑うことが効果的という実験結果も出ているので、怒りを感じたときは深呼吸などをして、落ち着くことを心がけるべきでしょう。

怒りを感じたときは、深呼吸で前頭葉を落ち着かせよう(画像はイメージ)


老化と怒りには関連性があり、そこには前頭葉の衰えが影響しているとのことだった。
早ければ40代から衰えが始まるとのことなので、脳を萎縮させないためにも何か新しいチャレンジを常に見つけることが大事かもしれない。

また周囲としては、怒りが抑えられない人がいることを認識しておくことも必要だろう。


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