高齢者や持病がある人ほど重症化しやすい傾向

新型コロナウイルス感染拡大で、緊急事態宣言中の北海道。
3月9日、新たな感染例が7人確認され、道内の感染者は108人となった。

感染した場合、高齢者や疾患を持っている人は重症化しやすいと言われているため、特別養護老人ホームなど高齢者が集団生活する場所では、最大限の警戒が続いている。

いま北海道の介護現場では、どういった問題が発生しているのだろうか。
関係者に取材した。

「危険性を理解しているのは入居者の2割くらい…」

「テレビを見て、新型コロナウイルスの感染が危険だと理解している入居者は、全体の2割くらいです」
そう話すのは、道内の特別養護老人ホーム(特養)で勤務する介護士のAさん(34)。

特養とは、原則要介護3以上の人が入所する介護施設。歩行や食事、排せつ、入浴などの際に全面的な介助が必要と判断された場合や、認知症の進行具合が入所の判断基準となっている。
それゆえ、ニュース内容が理解できない、自身の体調変化や異常を訴えることも難しい入居者も多いという。

「高齢者はただ風邪をひいても、命に関わるケースがあります。今回は、特に気をつけて過ごしていますが、地元では感染に対する危機感に温度差を感じることもあります。
ワクチンも治療法も確立されていない病気なので、自分が感染源になることが怖いです。

また、感染予防のため、外部の介護老人保健施設から来ていたリハビリ職の人が来られなくなったり、親族などの面会が制限されているため、身体機能や認知機能の低下など、入居者に悪い影響が出ることを懸念しています。

この状況がいつまで続くのか…先が見えず不安ですが、わたしたち介護士が暗い顔をしていても、入居者が不安になるだけなので、いまは明るく、いつも通りのサポートを心がけています」と話した。

同施設に入所中の親族がいる女性は、「まさか、北海道でこんなに感染拡大するとは思いませんでした。会いに行ってあげられないことは悲しいですが、自分が施設にウイルスを持ち込んだら…と思うと、恐ろしくて行けません。何かあっても、24時間体制でサポートしてもらえるので、今は介護士の皆さんに頼るしかないです」と話した。

「マスクや消毒液…流行すれば、半月以内に使い切ってしまう」

Aさんが勤務する特別養護老人ホームの担当者に、施設の現状や課題について話を聞いた。


ーー施設で行っている感染症対策とは?

新型コロナウイルスの感染症対策としては、職員に出勤前の体温計測、手洗い・消毒およびマスク着用をルールとしています。
入居者のご家族に対しては、可能な限り、面会を制限している状態です。
また、入浴ボランティアやリハビリ職のスタッフの出入りは、感染拡大を防止するために中止としています。


ーーマスクや消毒液は足りている?

備蓄はまだ1カ月程度ありますが、施設内で感染症が流行した場合は、半月以内に使い切ってしまうことが想定されます。
マスクや消毒液は、必要な量を発注済みではありますが、少ない数の納入となっていて、過去に取引のない業者からは、注文自体を断られている状況です。

ーーほかにどういった問題が発生している?

こちらの施設では、入居者80人が生活しており、入居者にも手洗いや消毒の徹底を呼びかけていますが、風邪症状がみられた入居者が理解できずマスクをつけていられない場合もあります。

インフルエンザやノロウイルスが流行している時期は、症状が出ている入居者を隔離するケースもあるのですが、「なぜ自分が隔離されているのか?」を理解できないこともあり、混乱させてしまうことも…。集団を守ると個人の自由や尊厳を奪ってしまう場面も生まれてしまうため、そこはバランスを取りながら、集団生活の中で感染予防対応を取っています。


ーー感染症対策の長期化は入居者にどんな影響がある?

現在のところ、認知の低下や面会の回数が減ることによる入居者の不穏などはみられていませんが、長期化することで、上記の問題が深刻になっていく可能性があります。

入居者が平穏な生活を送れるよう、各職員は安心していただけるような声かけを行っていますが、ご家族の方には、電話で会話していただいたり、受診の際に病院で面会していただくなど、無理のない範囲で対応していただけたらと考えています。

正しい手洗いや手指の消毒、人混みを避けるなど、十分に気をつけていても、感染者が増えれば、いつ誰がどこで感染するのかは予測できない。
もしかすると、すでに自分も感染している可能性もゼロではない状態で、介護する(濃厚接触する)ことは、通常以上に神経をすり減らす状況といえるだろう。

また、高齢者施設で集団感染が起きてしまうと、受け入れる医療機関の負担は大きい。重症化リスクが高い高齢者を感染から守ることは、医療機関を守ることにもつながる。

最も感染を警戒しなければいけない場所に、マスクや消毒液などが行き届いているとは言いがたく、介護現場で働く人たちの先の見えない不安は解消されていない。


(執筆:清水智佳子)

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