自公幹部、五輪後見据えた景気対策を含む来年度予算成立を最優先に
2020年代の政治論戦の幕開けとなる通常国会の召集が1月20日に迫る中、この国会に臨む与野党それぞれの戦略が見えてきた。
自民・公明両党の幹部は15日、東京都内のホテルで、国会対応などについて意見交換した。主な確認事項は3つで、1つ目は今年度補正予算の早期成立を図ること、2つ目は自民党の推薦候補が苦戦を強いられている京都市長選での自公の協力体制を構築すること、そして3つ目は来年度予算の年度内成立を確実なものとすることだった。
その上で、自民党の森山国会対策委員長は今国会の位置付けについて「東京五輪後の日本の景気・経済の状況を安定したものにするために予算、補正予算含めしっかりやるということだ」と強調した。森山氏がこう説明するには理由がある。今国会に政府から提出される予定の法案のうち、与野党で賛否が割れる対決型の法案が少ないためだ。与党関係者は「夏に東京五輪を迎えるにあたって与野党が対決する形を避けた」と解説する。
今国会は“あおり運転の罰則強化”や国家公務員の65歳への定年引上げ等審議
ただ対決型法案がない中でも注目の法案はある。2つを例にあげたい。
1つ目は国家公務員法の改正案だ。この法案の中身は、国家公務員の定年を段階的に65歳まで引き上げるというもので、人生100年時代を見据えて、平均寿命の伸びや少子高齢化が進んでいることから、人材の有効活用と働き手を増やす狙いがある。一般社会にも浸透していけば、社会保障費の増大の軽減や、税収の増加が期待される。
2つ目は昨年、世間を震撼させた東名高速や常磐道の“あおり運転”についての対応だ。政府は道路交通法の一部を改正して、いわゆる“あおり運転”に対する罰則を創設する見通しだ。具体的には通行妨害で一定の違反を行った場合や、高速道路上で他の自動車を停止させるなど交通の危険を生じさせた場合は、運転免許の取り消し処分の対象とするというものだ。国民的な関心は高いだけに、速やかな成立が期待される。
野党側は“桜を見る会・秋元氏逮捕・自衛隊の中東派遣”を追及 予算委員会で攻勢へ
一方の野党側は、まず、昨年の臨時国会に引き続き、安倍首相主催の「桜を見る会」について追及する見通しだ。15日の野党国対委員長会談では、公文書管理法に違反する部分があったと認めた菅官房長官の辞任を求めることで一致した。通常国会では予算委員会を主な舞台に、安倍首相と菅長官を標的とした厳しい追及を行うとみられる。
次に野党側が照準を絞るのが、自民党に所属していた秋元司衆院議員(現在・離党して無所属)が逮捕された、カジノを含む統合型リゾート=IRをめぐる収賄事件だ。野党側は、20日の国会召集日にカジノ廃止法案を国会に提出する。
また野党は追及3点セットの最後に、自衛隊の中東派遣反対をあげている。野党側の主張はアメリカとイランの情勢が見通せない中で、「調査・研究」というあいまいな根拠での派遣は認められないというものだ。ただ、中東で日本籍のタンカーの安全をどのように確保するかという対案は示せていないため、追及が国民の支持を得られるかは微妙でもある。
安倍首相の悲願“憲法改正”に向け今国会での発議は見通せず
一方で、安倍首相が悲願とする“憲法改正”に向けた今国会の動きはどうか。15日、森山氏は、記者団に対し「憲法問題は国会でも国民の間でもしっかりとした議論が必要だ」と述べた。さらに今国会での自民党の改憲案提示について「どういう憲法改正を目指すのかという議論があり、一つにまとまり国民に賛否を問うのが大事だと思う。できるだけ多数決ではなくて、皆さんの合意を得て国民にお諮りをできるという手順を大切にしたい」と強調した。つまり、憲法改正案の発議は極力、与野党合意の上で行いたいということだ。
ただ、現段階で、維新を除く野党側は、憲法改正の手続きを定める国民投票法改正案についてさえも、採決に応じる気配がない。ましてや改憲案の発議で与野党の合意が得られるだろうかというと、自民党にとっては厳しい道のりが待っている。そこで党内からは、今国会は、国民投票法改正案の成立にこだわらず、まずは“毎週の憲法審査会で与野党が自由討議という場で、憲法議論を行い、憲法に関する考え方を深める必要があるのでは”との指摘も上がる。
安倍首相が悲願の憲法改正を任期中に実現するのであれば、今国会での進展は重要だ。まずは与野党間で、改憲機運が高まるような憲法議論が展開されるかどうかが注目される。