日に日に増す、新型コロナウイルスの脅威。感染はどこまで拡大するのか?

1月29日に中国・武漢市から帰国した日本人のうち3人の感染が判明したが、うち2人は症状のない、いわゆる“隠れ感染者”だった。

厚生労働省は30日の会見で、武漢市から29日に帰国した日本人について…

厚生労働省結核感染症課・日下英司課長:
特段症状がない「無症状病原体保有者」として確認された、初めてのケースになります

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帰国した日本人のうち40代男性と50代女性が、せきや熱などの目立った症状がなかったにもかかわらず、新型コロナウイルスへの感染が確認されたというのだ。

感染者と未感染者が飛行機やホテルで同じ空間に

2人の隠れ感染者は、誰もそれを知らないまま、200人以上と同じ空間の飛行機で帰国。

その後、約190人がバスで千葉県のホテルへ移動したときも紛れていたことになる。バスでの移動途中では、トイレ休憩で一般の利用者も使うパーキングエリアに立ち寄ったという。

さらに、隠れ感染者の2人は用意されたホテルに到着後、個室ではなくそれぞれ相部屋で宿泊。実に、夜から朝まで12時間もの間、感染していない同室の人と一緒に過ごしていたことになる。

帰国者への対応は本当にこれでよかったのだろうか?

厚生労働省国立保健医療科学院・福島靖正院長:
相部屋の方はいらっしゃいますけど、2人と同室だった人は特段の症状はありません。陽性反応はありません…

というものの、専門家からは疑問の声が上がっている。感染を拡大しかねない対応だというのだ。

池袋大谷クリニック・大谷義夫院長:
二次感染、三次感染を予防するためには、個室であった方がより安全だったとは思います

さらに、29日に帰国した別の日本人2人が検査を拒否して自宅に戻っていたことも分かっている。このような対応について、街の人からは「検査を徹底してほしかった」などの不安の声が聞かれた。

武漢市からは30日も、帰国を希望した日本人210人を乗せた第2便が羽田空港に到着。このうち13人に、発熱などの症状が出ているという。

バスツアーで感染したとみられる2人の足取りは

さらに気になるのが、外国人向けバスツアーで感染したとみられる、男性運転手と女性ガイドの足取りだ。

その詳細が30日明らかとなった。

男性運転手は1月8日、武漢市からの観光客を乗せて大阪を出発。9日は山梨に立ち寄り、11日に東京を訪れている。

2回目のツアーからは、その後に感染が確認された女性ガイドが合流。12日に東京を出発し、山梨、奈良に立ち寄り、17日に大阪でツアーを終えている。

女性ガイドはツアー中、バス内では運転手の真後ろに座り、ホテルでは同じテーブルで食事をすることもあったという。

ツアー客の感染者はまだ確認されていないが、吉村洋文大阪府知事は...

大阪府・吉村洋文知事:
(女性ガイド)は武漢市のツアー客と行動をしているということは、その武漢の人の中には感染者がいるわけですから。そこから感染したということになる…

女性ガイドは、大阪市湾岸部のベイエリアや関西空港、観光地として人気の大阪城を訪れ、外国人観光客でにぎわう人気の繁華街・心斎橋にも立ち寄っていたことも分かった。

女性ガイドは20日、大阪から東京へ移動した発熱を訴え、医療機関で受診。22日に大阪に戻ると、23日に入院した。この間の移動には、地下鉄新幹線などの公共交通機関を利用したことも明らかになっている。

濃厚接触者がいる可能性は極めて低いということだが、もはやウイルス感染防止の対策は追いつかず、各地に潜在しているリスクもある。

もし、隠れ感染者と知らぬ間に接触していたら?呼吸器内科の医師は...

池袋大谷クリニック・大谷義夫院長:
せきやくしゃみをすれば、飛沫として人にうつるんです。そこを触った手で接触感染が波及するかもしれません。今後の状況次第では、感染リスクは高まるかもしれない

法的拘束力がないため検査などを強制できない

日本が行った新型コロナウイルスの検査態勢は適切だったのか?

Live News it!ではポイントをもう一度整理してみた。

(1)武漢の空港では、出発前に体温を測るなどのメディカルチェックが行われる。
これは重篤者からの新たな感染を防ぐためで、第2便では帰国希望者2人が搭乗できなかった。

(2)日本から武漢に向かったチャーター機には、検疫官、医師、それに看護師が同乗。
機内でも検査が行われ、帰国希望者は発熱やせきの有無などの健康状況、国内での連絡先などを質問表に記入する。サーモグラフィーでの体温測定や問診なども行われるが、この検査ではウイルスに感染しているかまでは分からない。

(3)羽田空港に到着すると、検査で症状が出ていた人は東京都内の専門病院に。症状の出ていない人は国立国際医療研究センターに行き、血液検査などのウイルス検査を行う。この血液検査で初めて、ウイルスに感染しているかが分かる。

(4)発熱やせきなどの症状が確認された人は入院。症状の出ていない人は検査結果が出るまで、政府が用意したホテルに待機となる。新型コロナウイルスの潜伏期間が最大14日とされていることから、2週間以上外出を控えるようにも求める。

しかし、第1便では症状の出ていない2人が帰国後の検査を拒否。結局、ホテルの待機を断った人と合わせて3人が自宅に帰ったことが分かり、任意での検査の限界が露呈された形となった。

検査などを強制できないのは法制上の理由で、新型コロナウイルスを「指定感染症」や「検疫感染症」とする法律が2月7日施行されると、検査に法的拘束力が生まれるが、現状では法的強制力はなく任意検査となってしまうのだという。

感染症対策に詳しい、元厚生省仙台検疫所所長の岩崎恵美子さんは「新型コロナウイルスの病原性はインフルエンザほど強くない。今の段階ではそれほど心配するものではない」として、帰国者のためにもある程度、監視下に置くのは意味があるが、ウイルスは観光客などからも入ってきていると思う。帰国者たちだけを特別に怖がる必要はない」と冷静な対応を求めている。

日本政府の対応は適切だったのか?

加藤綾子キャスター:
柳澤さんは今回の日本の対応はどう思われますか?

ジャーナリスト・柳澤秀夫氏:
日本政府の対応として、武漢から帰国を希望している人たちを連れて帰って一定の期間、外部との接触を制限するというのは、基本的なことだと思うんです。各国も同じような態勢をとっていますので。ただ、VTRにもありましたけどホテルで相部屋にするのは基本的に考えられない。そこはきっちり見直してほしいと思います

加藤綾子キャスター:
帰国する人数を把握しておりながら、部屋が足りないと

ジャーナリスト・柳澤秀夫氏:
部屋が足りないのは言い訳にならないですから。帰ってくる人数は分かっているわけなのでそれに見合った対応をとっておかなきゃいけない

フジテレビ・風間晋解説委員:
僕は、なんでわざわざ千葉の外房に連れて行ったのかがポイントになっていると思っていて。さまざまな法的制約がある中で、武漢から200人余りが一気に帰ってきた。何が起こるか分からない。だから、事実上の隔離状態に置こうということで、都心から離れたところに移動させているんじゃないのかな

加藤綾子キャスター:
言葉を使わないまでも、ということですね。私が気になるのは、2月7日に指定感染症と検疫感染症が施行されて、強制的に入院したり検査できるようになった場合。今、拒否している人たちも強制的に検査できるんですか?

ジャーナリスト・柳澤秀夫氏:
検査できます

木村拓也アナウンサー:
先ほど説明にあった3人も改めて検査できるようになると

ジャーナリスト・柳澤秀夫氏:
そうです

(Live News it! 1月30日放送分より)

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