武漢から“邦人救出作戦” 帰国者に「約8万円+税」請求のはずが…

安倍首相は1月31日の衆議院予算委員会で、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国・武漢から帰国した日本人が搭乗したチャーター機の運賃8万円(税別)について、国が負担する方向で検討する方針を表明した。前日まで政府は、前例にならい搭乗者に運賃を請求する方針だったが、なぜ一転したのか。そこには政府と与党幹部の攻防があった。

新型コロナウイルス感染拡大の源となった中国・武漢は、中国政府によって封鎖され、約650人とみられる日本人が彼の地に取り残されていた。国内の“邦人救出”を求める声の高まりを受けて、安倍首相は26日(日曜日)に、急遽公邸に入り関係者から意見を聴取、終了後「中国政府との調整が整い次第、チャーター機などあらゆる手段を追求して希望者全員を帰国させる」と表明した。

これを受けて茂木外相は、中国の王毅外相と電話会談。政府の“救出作戦”が動き出した。表明から2日後の28日夜には、1機目のチャーター機が羽田空港を離陸。政府の方針決定後の迅速な対応に、自民党内から称賛の声が上がった。

しかしこの直後、自民党内からチャーター機の運賃負担を巡って、政府の対応に不満が噴出することになる。それは政府が28日夜に記者団に、武漢から帰国する搭乗者に対してエコノミークラスの片道正規運賃となる「8万円+税金」の運賃を請求すると説明したためだった。

与党幹部が相次ぎ“チャーター機運賃の国費負担”を要求

まず声を上げたのは自民党を取り仕切る重鎮・二階幹事長だ。29日、記者団の取材に「突然の災難だから本人だけにすべて負担させるということではなく、政府としてもこの緊急事態だから惜しんでばかりいてもしょうがない」と個人負担とする対応を疑問視。また、別の党幹部も「封鎖された都市から緊急事態として帰ってくるんだから航空代金は取るべきではない」と強調した。

さらに翌30日には連立与党・公明党の山口代表が「不安とリスクを抱えてやむを得ず帰国を余儀なくされた方々であるから、やはりここは政府がきちっとチャーターの費用、帰国の費用を負担すべきだ」と主張した。

与党幹部から“チャーター機運賃の国費負担”の声が相次ぐ中、政府はチャーター機以外で帰国した人との「公平性」と、これまでの「前例」を踏まえてなおも抵抗を続ける。菅官房長官は30日の会見で「従来、内戦など本人の意思にかかわらず退避をお願いせざるを得ない場合を除き負担をお願いしている」と改めて強調。しかし自民党議員からは「前例主義では国民の生命は守れない」との声が上がった。

方針を決定づけた30日夕方の自民党幹部の国会対応協議

こうした党内の声を受けて、二階氏と国会対応全般を取り仕切る森山国対委員長が30日夕方に党本部で面会。31日に予定されていた予算委員会の集中審議で、自民党議員が質疑の中で“チャーター機・運賃8万円の個人負担”問題を安倍首相に問いただす方針が決まった。自民党幹部は「さすがに国費で負担するでしょう」と自信を見せた。

そしてついに、党内の声や世論の高まりを受けて、31日朝、安倍首相が衆院予算委員会の中で「運賃を政府で負担する方向で検討する」と表明したのだった。

政府関係者は今回の方針転換について「政府のチャーター機しか(帰国)手段がなく移動の自由が奪われている」ことが理由だと説明した。世耕参院幹事長は、決定について「いったん個人負担を求めるということだったが、これは今まで経験したことのない事態で、より良い方法で転換することはいいことだ」と語った。新型コロナウイルスの感染拡大の防止策については、安倍首相が「前例にとらわれない」という方針を表明した。それだけに今後も政府与党内で、手探りの対応が続くことになりそうだ。

(フジテレビ政治部 門脇 功樹)