「ここでしか使えない」キャッシュレス

キャッシュレス・ポイント還元の参加店が102万店を突破した(2月21日現在)。
国内の対象店舗が約200万店とされているので、その半分以上がこの還元事業に参加したことになる。
2019年10月開始から約4ヶ月半で、対象の決済金額は約3.7兆円、還元された費用は約1500億円にものぼる。
この事業の音頭を取る経済産業省担当者も「これほど早く(5%還元の)中小規模の店舗が参加すると思わなかった」と驚くほど、当初の計画を大きく上回る広がりだ。

気がつけば自分のスマートフォンにもいくつもの電子決済アプリが入っていて、生活が変わったと言っても過言ではない。
1月に経産省が公表した調査では、約4割の消費者が、ポイント還元事業開始後「キャッシュレス決済の利用頻度を増やした」と回答している。

「どこでも、手軽に」。
これが売りのキャッシュレス決済だが、一方で「ここでしか使えない」キャッシュレス決済も広がっている。
それが「地域通貨」だ。

おしゃれタウン・下北沢の地域通貨「シモキタコイン」

東京・世田谷区の下北沢。小さな飲食店、カフェや雑貨店が集まり、おしゃれな人が集まる街として名高い。
この下北沢駅(小田急線、京王井の頭線)周辺のエリアでのみ、利用できデジタル通貨が「シモキタコイン」だ。スマートフォンのアプリでチャージすれば、飲食店などの加盟店で1シモキタコイン=1円として、誰でも利用できる。

左:「シモキタコイン」アプリ  右:「きくや文具店」ではシモキタコイン等の様々なキャッシュレス決済に対応

チャージ時に1%、支払い時にさらに1%のポイントが付くため、利用者にはメリットがある。さらに、その店が政府のキャッシュレス・ポイント還元の5%還元対象であれば、あわせて7%もの還元が受けられるのだ。
また、飲食店などの加盟店も、利用者から受け取ったシモキタコインを換金するときに1%のポイントに還元できるほか、スーパーや卸売など仕入れ先との買い物にも使える。

シモキタコイン決済利用の飲食店DiningBarU7 北野亜矢子さん:
最初は現金がいいなと思っていたんですけど、10月以降はクレジットカードやシモキタコインも含めキャッシュレスの支払いが増えて、給料前とか来てもらえるので客数は増えたのでありがたい。結果的にはそっちのほうが嬉しいなと

お客さんによるシモキタコインの利用は一日に一回あるかないかだが、下北沢で開催されるカレーフェスティバルなどのイベントでは利用頻度が格段に増えるという。

DiningBarU7の北野さん。QRコードをアプリで読み取り、簡単に決済ができる

現在、下北沢エリアの約110店がこのシモキタコインに参加(2020年2月現在)、利用者は20代、30代の男女が多い。
株式会社シモキタコインは、今後は地元の信用組合と組み、スーパーやドラッグストアでも使えるようにするなど、日常的な利用に繋げたい考えだ。
「シモキタコインを成功事例に、ほかの地域でも展開していきたい」と意気込む。

電気代も地域通貨で…しかもポイント最大9%!

電気の小売り事業者、株式会社イーネットワークシステムズは1月、千葉県木更津市の地域通貨「アクアコイン」で、電気代の支払いが可能になるサービスを発表した。一般家庭向けで、アクアコイン加盟店で使えるポイントが最大9%つく

1月29日 イーネットワークシステムズと君津信用組合の会見

イーネットワークシステムズは、電気代を地域通貨で支払うサービスを展開している。
2018年11月に開始した、岐阜県高山市、飛騨市、白川村の地域通貨「さるぼぼコイン」での支払いを皮切りに、今後もさまざまな地域通貨で展開していく方針だ。
そこには電力自由化で各社の競争が激しさを増す中、利用が増える地域通貨での支払いができることで他社に差をつける狙いがある。
「アクアコイン」も「さるぼぼコイン」も、地元の信用組合が展開しているので、そこに口座がある戸建てのファミリー層がターゲットだ。実際、約1万700人のさるぼぼコイン利用者のうち、50代女性が一番多い。

さるぼぼコインで2019年12月から電気代を払う小垣内さん(女性・49歳):
思っていたより使いやすいし、利用した分がアプリで分かりやすい。さらにポイントもつくし、家計的にも節約になるかなと思っています

電気代の支払いだけでなく、スーパーでの買い物など、自身の生活圏で使う機会が増え、現金を持ち歩かなくなったと話す。
“もっとこういうお店でも使えるようにしてほしい”などの要望も、地元の信用組合なので声が届きやすいそうだ。

デジタル地域通貨 そのメリット、デメリットは

デジタル通貨に詳しいソラミツ(株)共同創業者・特別顧問の松田一敬さんは、こうした地域通貨は、デジタル化によってコストが下がったこと、ブロックチェーン技術の向上によってセキュリティレベルが高まったことで、今や全国で200~300種類ほどにも展開されているのではないか、と分析する。
政府が進めるキャッシュレス・ポイント還元事業も後押しになっている、とも話している。

そして、メリットとしては地域経済の活性化を挙げる。
地域内の資金の流れがわかる、新たなビジネスチャンスへつながる
・地域の外へ資金が出ない
(クレジットカードや電子マネーだと決済手数料が外に出てしまう)

一方で、問題点も指摘する。
デジタル通貨決済による売上は、利用された店に現金で支払われるまで時間がかかるため、加盟店にとって資金繰りが厳しくなってしまうことがある。
現在広がっているほとんどのキャッシュレス決済(地域通貨も含む)は「口座型」といわれ、利用者から店側に支払われた資金は一度、決済事業者の口座に入る。そこから店側に現金が振り込まれるので、場合によっては売上の入金が2,3ヶ月先になるという。

一方、「トークン型」とよばれるデジタル通貨(「リブラ」など)は、即時に店舗に売上を還元でき、資金繰りをめぐる問題を解決できる。しかし、規制のハードルが高く、議論が続いている。

課題はまだあるが、キャッシュレス・ポイント還元事業の盛り上がりが、デジタル地域通貨の利用拡大への追い風になるか。今後が注目される。

(フジテレビ報道局経済部 井出光記者)