今回で15回目となるB Dash Campが10月、福岡市で開かれた。

Yahoo!、DeNA、メルカリなどインターネット業界の第一線で活躍する経営幹部やスタートアップ、投資家など約700人が集まる日本最大級の招待制カンファレンスで、最新のトレンドや経営に関する洞察を得られるセッションが多数行なわれるのが特徴だ。

今回の共通テーマは「2020年からの10年間をどう乗り越えていくのか」

世界中で巨大な影響力を持つGAFA(Google,Amazon,Facebook,Apple)とどう向き合い、これからの企業価値をどうとらえるのかが、投資家にとっても企業にとっても重要な課題となっている。

B Dash Ventures代表取締役社長の渡辺洋行氏はオープニングセッションの中で、こう危機感をあらわにした。

「2020年以降、日本でも世界でもベンチャーやインターネット業界で大きなうねりがあると思っています。業界内では『新しい投資テーマがないよね』とよく話しています。新しい道筋を出そうと思ってやっていますが、自分自身で投資をしていて、悩み悩みやっています」

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ただ、悲観論ばかりで、日本企業が何もできない状況というわけでもない。

gumi代表取締役会長の国光宏尚氏は「GAFAなんて所詮10年ちょっとの会社だ」と声を大にした。

「GAFAはスマホとクラウドで伸びただけ。それまではニコニコ動画やミクシーなど、日本の方が強かった。ガラケーが強すぎたのと、グローバルで出遅れたのもあって、この前半戦は負けた。しかし、XR・ブロックチェーン・AIなど、後半戦で巻き返す」

また、メタップス代表取締役会長の佐藤航陽氏は、トランプ米大統領が都市の富裕層からは多くの批判を受けているにも関わらず地方の一定支持を受けている現象に注目し、そこにチャンスが残っていると語った。

「トランプ支持者ってどこにいるのかわからない。見えていないユーザーがいるんです。SNSをやっていると、フィルターバブル(自分が見たい情報しか見えなくなること)で、自分の見える世界が世の中の当たり前になっていますが、見えていないユーザー層が無限に存在しているんです」

自分の周りの95%の人が「そんなものが流行るわけない」と言うようなものが、大きくなる可能性があるのだという。


「見えないお客さん」をどう取りに行くのか?

2日間に渡るセッションで、「ハートドリブンで事業を作る」「上場企業のイノベーション、どう起こすか」「なぜインターネット企業がスポーツ事業に参入するのか」など様々な議論が行われ、多くのヒントや提言が出されたが、「今は客が見えないが、2020年以降に主流となる分野」に対するきっちりとした回答は見つからなかった。

「あまりしっくりこなかったなと正直思っています。成長する分野の見極めも重要だし、経営の方法も重要ですが、『自社が熱中してできる分野をしっかりやること』が結局、近道だよねと感じました。いろんなものが見え始めているタイミングかなと思っています。ぜひ、みんなで乗り切って、新しい業界のネタを作れればなと思っています」(B Dash Ventures渡辺洋行・代表取締役社長)

大きな区切りとなる2020年まであと少し。どんな時代や社会にしていくべきか、投資家・経営者・スタートアップだけでなく、それぞれが考える必要に迫られるかもしれない。

清水俊宏
清水俊宏

世の中には「伝えたい」と思っている人がたくさんいて、「知りたい」と思っている人がたくさんいる。その間にいるメディアは何をすべきか。現場に足を運んで声を聴く。そして、自分の頭で考える。その内容が一人でも多くの人に届けられるなら、テレビでもネットでも構わない。メディアのあり方そのものも変えていきたい。
2002年フジテレビ入社。政治部で小泉首相番など担当。新報道2001ディレクター、選挙特番の総合演出(13年参院選、14年衆院選)、ニュースJAPANプロデューサーなどを経て、2016年から「ニュースコンテンツプロジェクトリーダー」。『ホウドウキョク』などニュースメディア戦略の構築を手掛けている。