2019年の冬を迎えつつある時期…ふるさと納税の返礼品を選んでいる方も多いのではないだろうか。去年は高額すぎる返礼品や、ポイント還元などが問題となった。

去年、ふるさと納税をあっせんした税理士に10%の仲介手数料を支払うと呼びかけて批判を浴びた愛知県の碧南市は、今、新しいPRの方法で地元の魅力を発信していて、廃れかけた伝統の「黒七輪」の再興に一役買っています。

最後の職人が作るこだわりの“黒七輪”…地元の焼き肉店「全然違いますね」

お客さんが肉を焼くのに使っているのは…真っ黒な七輪。

男性客:
家じゃできないですからね、七輪の味っていうのは。

肉屋ケムリ 店長 坂口豊さん:
オープンからずっとこれ。黒七輪が使いたかったから。全然違いますね。火力とあと特に余熱が違う。

この七輪は、江戸時代から伝統産業として西三河を支えてきた「黒七輪」だ。しかし、その職人も2019年11月現在、たった1人になってしまった。

愛知県碧南市にある「杉松製陶」、黒七輪を作り続けている唯一の窯元だ。黒七輪の最後の職人、杉浦和徳さん(68)。

杉松製陶 杉浦和徳さん:
ファンがおってくれるもんで。その人たちをがっかりさせちゃいけないと思って。

杉松製陶の3代目として生まれた杉浦さん、26歳のとき、勤めていた会社を辞めて父親の跡を継ぎ七輪職人の道に。

以来、40年以上七輪を作り続けてきた。

杉浦さん:
面白い仕事だと思うよ。イライラしてるとそれなりのものができるし、気分がいいとまた違うものができる。

金属を使わない…杉浦さんの職人技が光る「黒七輪」

杉浦さんが作る七輪の1番の特徴は、金属をほとんど使わないこと。錆びたり腐ることがなく、丈夫で長持ちする。

職人技が特に光るのは風窓を作る作業。少しでもズレると窓が開かなくなってしまう緻密な工程は手作業だ。

江戸時代から続く伝統の七輪が危機…転機となった「ふるさと納税」

杉松製陶のある碧南市は江戸時代から窯業で栄え、七輪も多く生産されてきたが、昭和20年代に約30軒あった窯元は2019年11月現在は2軒に。

杉松製陶でも職人の数が減り、生産量はピークの3分の1に減少、およそ200年の伝統に危機が訪れていた。
そんな中、転機となったのが「ふるさと納税」。

碧南市のふるさと納税といえば2018年、顧客の紹介をした税理士に対し、寄附額の10%を仲介手数料として支払うと呼びかけたことに批判が集中。

批判を受けて税理士への呼びかけはやめ、若い職員が中心となって新しい方法でアプローチしている。

碧南市のふるさと納税担当者 坂本直敏さん:
国からも通知がありまして、(税理士の件は)取りやめて、今は碧南市の魅力をいかに伝えるかを考えています。例えばメルマガを打ったり、フェイスブックで宣伝したり、コツコツやっています。

この日、碧南市のふるさと納税の担当者は杉浦さんの元へ。
杉浦さんの黒七輪は4年前から返礼品となっている。黒七輪にもっと注目を集めようと担当者が考えたのは、杉浦さんの制作工程を紹介する動画だ。

2019年9月にふるさと納税のポータルサイトにアップしたところ、注文はそれまでの4~5倍に。

杉浦さん:
なんかすごく多いんだわ、頑張ってくれとるもんで。
坂本さん:
10月、11月は…ちょっと大変かもしれませんけど。
杉浦さん:
ただ伝票が面倒かな、ありがたいけどね、ははは。

途絶えかけた伝統を次の世代に…黒七輪に後継者が名乗り

そして10月、若い後継者も見つかった。36歳、隣町の瓦職人・高橋佑輔さんだ。

杉浦さんの後継者 高橋佑輔さん:
(杉浦さんは)職人だなと思います。かっこいいなと思いますけどね。やっぱりなくしちゃいけないですしね。それがあるからやろうと決めたんですけどね。

杉浦さん:
私より器用じゃないかな。すごく期待してます。来年ぐらいから、私がおしえながら1つ1つ作っていこうと思っています。

後継者が見つかり、2019年内で廃業することを決めた杉浦さん。窯はなくなるが、黒七輪の伝統を次の世代へつなぐことができた。

杉浦さん:
(ふるさと納税やって)万々歳だと思うよ。今まで私どもは宣伝しないじゃんね。そのルートもないし、売るルートもないし。
絶対に良い商品だと思ってますので。うまく嫁入りしてってくれれば1番いい。それで喜んでくれれば。

杉松製陶の黒七輪「黒木炭コンロ」は、碧南市にふるさと納税を1万円寄付すれば返礼品として受け取ることができる。

なお今後の製品は、後継者の高橋さんがつくるため、2019年11月現在寄付はできるが、届くのは2010年春以降の予定だ。

(東海テレビ)