「上司よりロボットを信頼する」 が76%
AI(人工知能)やロボットは今、さまざまな分野や産業に活用され、私たちの生活に浸透しつつあり、ツールとしてAIを導入する企業も増えている。
こうした中、11月13日に日本オラクルが興味深い調査結果を公表した。
「職場におけるAI」に関する調査の中で、日本のビジネスパーソンの76%が「上司よりロボットを信頼する」というのだ。
調査を行ったのは、アメリカのオラクルと調査会社フューチャー・ワークプレイス。
調査の対象となったのは、日本、アメリカ、中国など、世界10カ国・地域のビジネスパーソン8370人。このうちの415人が、日本における企業・団体の従業員、マネージャー、人事部門リーダーだった。
この調査によると、「マネージャーよりもロボットを信頼する」と答えた人の割合は、日本では76%に上り、グローバル平均の64%を上回った。マネージャーは、日本の企業で言えば、「上司」や「管理職」を指すという。
その一方で、「将来的にロボットがマネージャーに置き換わると思うか」という質問では、日本では19%が「そうである」と回答。グローバル平均の32%と比べると、低い数字となった。
AIの進歩はすさまじく、人間ではできないような難しい計算などを瞬時に行えることから、信頼性が高いのは理解できる。
一方で、なぜ「将来的にロボットがマネージャーに置き換わると思う」日本のビジネスパーソンは少ないのか? そして「マネージャーよりロボットを信頼できるけど、置き換わると思わない」理由はどこにあるのだろうか。
日本オラクルの担当者に“考えられる理由”を聞いた。
スキルの高くない人が上司になっていることに対する不満
――日本は「人間の上司よりもロボットを信頼する」ビジネスパーソンが他国に比べると多い。この理由として考えられることは?
上司や管理職が信頼されていないことの裏返しと言えます。
年功序列で昇格する日本企業では、ピープル・マネジメント(部下の育成、部下の意欲を引き出し、チームをけん引すること)のスキルが高くない人も上司になっていることが多いため、部下の不満となっているのではないでしょうか。
――「将来的にロボットが上司に置き換わると思う」ビジネスパーソンが他国に比べると少ない。これはなぜ?
「マネージャーよりロボットが優れていることは?」という質問に対して、多かったのは「感情を理解」「コーチング」「組織文化の創造」という回答でした。
これらの行動はロボットにはできない、と日本のビジネスパーソンは思っているのではないでしょうか。
「ミーティングに意味があるのか、考え直さなければなりません」
――今回の調査結果を踏まえ、日本の企業はどのような点を改善していけばよいと思われますか?
慶應義塾大学大学院の特任教授である岩本隆さんは以下のように解説しています。
上意下達(上層部の命令・意向を、下に伝えること)で部下を指導する旧来のやり方ではなく、その人にしかできないマネジメント手法がないと、マネージャーの存在価値はどんどん薄れていきます。
特に日本ではマネージャーは現場を把握すべきといった考え方が根強く、そのため、報告のミーティングがびっしり入ることになってしまう。
こうしたミーティングに意味があるのか、考え直さなければなりません。
日本企業へのアドバイスはこれ以外にもあり、岩本特任教授は、「AIをはじめとするテクノロジーを使い始め、自社の業務内容などに合わせて改善する。そういった取り組みを継続して行うべきでしょう」とコメントしていた。
「ロボットは上司より信頼できるけど、これが置き換わるとは思わない」。日本のビジネスパーソンは、ロボットのスキルを認めつつも、実はそれ以上に上司に求めるものは、感情を理解してほしいという“気持ちの部分”のようだ。
もし、AIが感情の理解までも完全にできるようになると、「将来的にロボットがマネージャーに置き換わると思う」人が増えるのはほぼ間違いないだろう。
そうならなかったとしても、上司としては、岩本特任教授が指摘するように、AIの活用など従来のマネージメント法を変えていく必要にもう迫られているのではないだろうか?