さいたま市でインフルの流行を予報するサービスの実証実験

東京都は12月12日、インフルエンザの流行注意報を発令した。昨年(2018年)より3週間早く、都内の学校などでの集団感染は610の施設にのぼっている。

こうした中、日立製作所と損保ジャパン日本興亜が12月6日から、さいたま市でAIを活用し、インフルエンザの流行状況を4週間先まで予測、発信するサービスの実証実験を開始した。

実証実験では、「日本医師会ORCA管理機構」が全国の4000以上の医療機関から提供を受けた、インフルエンザを含む感染症の罹患者数を市区町村別にまとめたデータを活用。

今回は、「さいたま市の過去8年分(2011年度~2018年度)の感染症の罹患者数」と、日々、蓄積していく「今年度のインフルエンザ罹患者数の情報」を主な学習データとして、AIのディープラーニングを用いて、4週間先までインフルエンザの流行の度合いを予測、その情報を発信する。

“過去の罹患者数”と“現在の罹患数”を組み合わせることで、より精度の高い予測が可能なのだという。

流行の度合いは、患者数が少ない「レベル0」から「レベル1」「レベル2」「レベル3」の4段階で、予報は1週間ごとに4週間先まで分かる。住民向けのWebサイトやLINEの専用アカウント、市内のスーパーなど協力小売店のデジタルサイネージで見ることができる。

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流行が予測できれば、その時期は特にうがいや手洗いに注意するなどの予防行動だけでなく、例えば、子育て世帯では、仕事の調整やレジャーの計画見直し、学校への対応といった、罹患した際に備えた行動を取りやすくなるなど、生活支援につながることが期待できるという。

なぜこのようなサービスを開発しようと思ったのだろうか? また、2020年3月20日まで行われる今回の実証実験を踏まえ、どのようなかたちでサービスを提供していくのだろうか?
日立製作所の広報担当者に話を聞いた。

サービス開発のきっかけは“パパとしての実体験”

――このような実証実験を行う理由は?

そもそもの開発の経緯からお話しさせていただきます。

開発者自身が共働きの働くパパで、近くに両親もいないことなどから、子どもが病気にかかったとき、夫婦のどちらかが会社を休まないといけなくなるなど、対応が大変だ、という自らの経験から着想を得ました。

開発者が周囲のママやパパにも話を聞いたところ、同じような悩みを抱えている人が多く、「自分が住んでいる地域において、感染症が流行するタイミングが事前に分かれば、予防しやすいのではないか」といった声が多数あったことから、現在の流行状況だけではなく、将来まで予測できるAIを開発しました。

たとえば、子育て世帯では「いつ頃、流行りそう」ということが分かれば、子どもに事前に手洗いやうがいをしっかりさせる、といった予防行動を起こしやすくなり、天気予報のように使ってもらえるようになるのではないかと期待しています。

今回の実証実験では、さいたま市に協力していただいていることから、教育機関など地域を巻き込んだ大規模な実証ができることとなりました。


――なぜ、今回はさいたま市だけなの?

サービスの実証実験の場を探す中で、損保ジャパン日本興亜がお付き合いの深い、さいたま市に話を持ちかけていただき、さいたま市がご興味をもっていただいたことから、今回の実証実験に至りました。

担当者「今は事業化に向けて検討している段階」

――流行の度合い“4段階”の基準は?

医療機関からの情報をもとに、1医療機関あたりの新規患者数を1週間ごとに集計し、結果を4段階に分けて表示しています。

今回の実証では、それぞれのレベルを以下のように定義しました。

「レベル0」⇒1医療機関あたりの新規患者数が「0」
「レベル1」⇒1医療機関あたりの新規患者数が「1」以下
「レベル2」⇒1医療機関あたりの新規患者数が「2」以下
「レベル3」⇒1医療機関あたりの新規患者数が「2」を超えている


もう少し分かりやすく言いますと、「レベル3」は昨年度(2018年度)の流行ピーク時期(2019年1月21日から1月27日)と同等以上の新規患者数の発生状態、「レベル2」はレベル3の約半数以上の新規患者数の発生状態をそれぞれ示します。


――今回の実証実験を踏まえ、今後どのようなかたちでサービスを提供していく?

今は事業化に向けて検討している段階で、まだ、どのようにサービスを提供するかは具体的に決まっていません。


日立製作所の担当者によると、今回の実証実験の最終的な目標は「さいたま市民のインフルエンザ罹患率の低減」

また、それと同時に、インフルの流行を予報するというサービスの“社会的なニーズ”、そして、このサービスを使うことで“地域の人がどういった行動変容を起こすのか”を確認し、検証したいと考えているのだという。

毎年やってくるインフルエンザの流行、近い将来、天気予報のように、全国でこのサービスを利用できる日がくるのだろうか。

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