キヤノンが提供する新技術とは?

2020年の東京五輪開催時には世界中から多くの人が集まることが予想されるが、大規模なイベントの主催者にとって、参加者の安全確保は何よりも重要だ。会場内での人の動向を把握することが、万全の警備、適切な誘導につながる。

こうした中、キヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下キヤノンMJ)が、ネットワークカメラの映像から数千人規模の群衆人数を瞬時にカウントできる映像解析ソフトを12月下旬に発売する。

その名も「People Counter Pro」。2016年に発売した「People Counter」の機能を拡充したもので、名前の通り「人数をカウントするための専門ソフト」がさらにバージョンアップした形だ。

映像に映った群衆の数をリアルタイムにカウント出来る。

従来のソフトでは「エリア人数」「通過人数」を1500人程度まで一度にカウントすることが出来たが、今回はキヤノン株式会社が開発したディープラーニングを用いて群衆人数を算出する映像解析技術を生かし、数千人規模をリアルタイムでカウントできる機能「群衆人数カウント」が追加された。
さらに、カウントした人数データをグラフ化する機能「Data Dashboard」も追加されるなど、より正確に、大量のカウントが可能だという。

キヤノンMJによると、大規模イベントなどの多くの人が密集する環境における人数を把握したいというニーズが拡大しているということだが、人数を把握することでどんなことが可能になるのか。また、このソフトはごちゃっと固まる群衆の人数をどのようにカウントするのか。
担当者に話を伺った。

サッカーグラウンド程の面積に集まった人数を計測

――今回発売された「People Counter Pro」は、どのようなニーズに応えて開発された?

主に区役所などの役所関連や、大規模な公共施設、空港などの防犯、防災、安全対策を強化したいというニーズに応えたものです。また、大きな自然災害が起こった際の交通機関の利用人数や、避難所の人数などを把握したいという声も多かったので、開発した次第です。

――新たに加わった「群衆人数カウント」の具体的なメリットは?

これまでの「People Counter」では1500人程度までは一度に数えられたのですが、より大きな人数をカウントしたいという声が高まったことから、一度に数千人単位の群集がカウント出来るようになりました。具体的には7000㎡程度、サッカーグラウンド程の面積に集まった人数を、映像からリアルタイムで計測出来ます。

――実際に数えた場合と比べて、誤差はどれぐらい?

2018年に開催されたラグビーの国際試合での実証実験では、約6千人を数秒でカウントできました。実証実験の画像を人手で確認した人数と、ソフトウェアによるカウント人数の差は5%以内と、ほぼリアルタイムで、群衆人数を正確に把握することに成功しています。

「人間の頭」をAIが検出してカウント

――これはどんな仕組みでカウントされている?

主に、カメラに映っている映像からAIを用いて人の頭を検出してカウントします。混雑した場所では、人の体が重なる、あるいは顔が横向きや後ろ向きになることが多いので、胴体や頭を数えるのは難しかったのですが、ディープラーニングの応用によって、AIに頭を見分けることを覚えさせ、この技術が実現しました。

――カメラの角度などによって、把握できる人数も変わってくる?

その場合ですが、キヤノンのAI技術は、さまざまな角度の映像サンプルを学習させることにより、俯角で10度から65度までの範囲に映る人の認識もできるようにしています。広い俯角に対応することで、カメラを設置する場所の自由度を大きく拡げることが可能になりました。

マーケティングにも活用できる

――他に追加された機能は?

実際に計測したデータをグラフ化する機能「Data Dashboard」もあります。時系列で入場者数の推移を記録できると、時間帯や曜日ごとの傾向が把握できます。マーケティングに活用すれば、予想入場者数に応じた在庫調整ができるようになり、警備においても最適な人員配置が可能となります。また、ほぼリアルタイムで人数の推移を把握できるため、混雑で入場制限を実施する時の判断に役立てることもできます。


――これから東京オリンピックや大阪万博などの大きなイベントがありますが、すでに導入されている場所はある?

まだ発売前(12月下旬発売予定)なので、具体的にどこが導入しているといったことは言えないのですが、すでに数件のお問い合わせがあり、今後大規模なイベントやテーマパーク、国際的な集まりでご利用いただけると思われます。

数千人規模の人の体が重なる状態でも、AI技術の進化によって、リアルタイムで人数を把握できるようになったといい、安全対策やマーケティングなど様々な場面での活用が考えられそうだ。そう遠くない2020年の東京五輪でも活躍しているかもしれない。

「なんでもAI」特集をすべて見る!