「AI×カメラ・音声」で振り込め詐欺防止の実証実験

今年上半期に警察庁が把握した、特殊詐欺の認知件数は8025件、被害額は146億1000万円で、前年の同時期と比べると減少はしているものの、依然として高い水準で推移している。

こうした中、横浜信用金庫とNTT東日本神奈川事業部は、AI(人工知能)を使ってATMでの振り込め詐欺を未然に防ぐ実証実験を、8月1日から9月30日までの2か月間の予定で実施している。

今回の実証実験では、横浜市内にある横浜信用金庫のATMコーナー2カ所に設置した“監視カメラの映像”と、“マイクで収集した音声情報”をもとに、AI技術を活用して、振り込め詐欺被害者の可能性を判定。

不審な場合は店舗の情報端末に警告を流し、横浜信金の職員が客に声かけするなどして、被害防止に取り組むのだという。

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もう少し、詳しく説明すると、“監視カメラの映像”では、ATMを利用する客の動作を基に、振り込め詐欺に遭っている可能性をAIで判定し、不審な場合はアラームにより店舗に通知。

“マイクで収集した音声情報”では、客が発した言葉をAIがテキスト化し、振り込め詐欺に遭っている可能性を判定。不審な場合はアラームにより店舗に通知すると同時に、ディスプレイにて警告を表示するとしている。

AI技術を活用して、カメラと音声の両面から、振り込め詐欺被害者の可能性を判定するというが、肝心の判定する基準はどういったものなのか?

今回の実証実験の技術面を担当する、NTT東日本神奈川事業部の担当者に話を聞いた。

“映像”と“音声”を組み合わせると精度が高まる

――“監視カメラの映像”と“マイクで収集した音声情報”を活用する理由は?

監視カメラが「ATMの前で携帯電話を使って通話をしている人」を映し出したとしても、この人がどんな話をしているかまでは分かりません。

また、音声情報だけでも不完全で、どこかに振り込むという話をしていたとしても、それが詐欺グループから指示されているかどうかは判別するのは難しい。

こうしたことから、監視カメラの映像と音声情報を組み合わせることで、振り込め詐欺かどうかを判別する精度が高まると考えています。

――どうやって振り込め詐欺にあっているかどうかを判定する?

今回は実証実験なので、“どのような行動をしたら、詐欺にあっている”という確かな判断基準はありません。

ただ、実際に導入するとなると、判断基準が必要なので、今回の実証実験は、その判断基準を見つける目的で行うものです。


――振り込め詐欺かどうかを識別するための情報は決まっている?

実証実験の段階での情報は決まっています。

ただ、それを教えてしまうと、犯罪を助長する可能性がありますので、お教えできません。

現時点では“詐欺かどうかの判断基準”はなく、実証実験を通して、基準を見つけていく考えのようだが、カメラと音声の両面から判別することで精度は高まるのではないだろうか。
日々、手口が巧妙化している特殊詐欺だが、こうした取り組みが抑止力にもなり、少しでも未然に被害を防いでほしいものだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。