「お母さん業界新聞」。全国の子育て中のお母さんの育児の体験談などが載っていて、中には白黒の「地域版」が挟まれている。
東海3県で唯一、地域版が発行されているのが愛知県岡崎市。発行を始めたお母さん記者の思いを取材した。
全国で13万部発行の子育て情報誌「お母さん業界新聞」
天野さん:
行くよ~!
小さな子供と自転車に乗ってどこかへ向かう、愛知県岡崎市の天野さん。訪れたのは近くにあるおしゃれなカフェ。
天野さん:
新聞を持ってきました~。よろしくお願いします。
天野さんが届けた新聞は、その名も「お母さん業界新聞」。無料で読むことができる子育て情報誌で、今年で活動を始めて30年。全国で13万部が発行されている。
天野さん:
お母さんがよく行くところ、カフェや小児科や公共施設でプレイルームがあるところという形で、お母さんの目に触れやすいところに置くようにしています。
紙面には、気になる育児休暇に関する記事や、毎日の子育ての中でのエピソードなどが掲載されている。育児真っ最中のお母さんたち自らが記者となり、記事を書いた。
「困っているママの力になりたい」…2児の母・天野さんが書く“地域版”
この「お母さん業界新聞」、カラーで印刷された全国版に挟まれて、もう一枚の新聞が。これが天野さんが作った「地域版」だ。この春から月に1回、発行している。
小学2年と1歳、2人の男の子を育てる天野さんは、神奈川で結婚・出産し、6年前に岡崎市に引っ越してきた。最初は慣れない土地で戸惑うことばかりだったという。
天野さん:
最近は慣れたんですけど、やはり最初は全てにおいて違ったというか。ママ友も全然つくれないし、土地勘もないのでどこに行けば何があるかのかも全然分からない状態だったので、最初はとても途方にくれてました。
子育てに奮闘する中、偶然目にしたのが「お母さん業界新聞」。天野さんも自分と同じように困っているママたちの力になりたいと岡崎版をつくり始めた。
例えば6月号では、こんな記事が…。
<記事の内容>
「岡崎市には児童館がありません」
「夏の暑い日に子供が安心して遊べる場所がない!」
天野さん:
具体的には室内の遊び場が全然少ない。岡崎にずっといては気がつかなかったことがあると思うので、そこを私が問題提起できればいいのかなって。
日常の些細なことが、天野さんにとっては記事のネタになる。取材中も次男がお茶をこぼしてしまうなど、小さな子との生活はハプニングの連続…。
天野さん:
普通なら『やめてくれー!』ってことも、面白おかしく書けば楽しくなるかなと。
「産後うつ」も経験…今はその体験を連載に
今では母親として記者として、育児を楽しんでいる天野さん。しかし過去には、うまく向き合えなかった時期もあった。
天野さん:
長男のときは余裕もなかったので、常にぴりぴり、きりきりしていた。新聞を書くことで長男に対する接し方もだいぶ変わりました。(当時は)子供のお世話が全くできなくなってしまった。子供の泣き声を聞くだけで『やめてください…』っていう状態に私はなってしまって。
長男が生まれたばかりのころ「産後うつ」になった。当時、実家にいて両親の支えを受け、なんとか抜け出すことができたという。今、新聞では当時のことを連載にして、書き始めている。
天野さん:
(産後うつは)特別なことではないと思ってもらいたいです。当たり前にある変化というか、誰にでもあり得るということを分かってもらえると、(今悩んでいる)お母さん自身も楽になるのかなと思って、私の体験を書きました。
Q.お母さんが頑張ってるのどう思う?
長男:
ちょーうれしい!がんばってほしい!
辛い経験を言葉にすることで、誰かの役に立つ。そして、自分の気持ちも整理されていく。
現役ママ記者・岡崎さんの“次の夢”
天野さんが発行を始めた「岡崎版」。先日、読者などを集めたイベントが開かれた。
天野さん:
岡崎出身のお母さんはもちろん、私のような外から来たお母さんたちが、私だけじゃないんだと共感したり、考えるきっかけになってもらえればうれしいと思っています。
参加したお母さんは、天野さんの新聞について…。
参加した母親:
子育ての情報ってあるようで、意外にじっくり見る時間はなかったので、この一枚に母親目線で書かれていると、みんな思っている事は一緒なんだなって。
別の母親:
母親はみなさん頑張ってらっしゃるので、その力を抜いてくれる感じとか、同じ気持ちになれる場所があって、ほっこりした場所だったなと思います。
「岡崎版」を立ち上げた天野さん、すでに、次の夢がある。
天野さん:
10年後には東海版を作って、もっと大きな規模でたくさんのお母さんたちと一緒に活動していけたらと思っています。
まだ産声を上げたばかりの「お母さん業界新聞・岡崎版」。これからもお母さんたちの心に寄り添い続ける。
(東海テレビ)