街がまるごと“スマート化”
日本全国で梅雨明けが宣言され、訪れた夏の台風シーズン。
台風8号、台風9号、そして6日に台風10号が発生し、“トリプル台風”はゆっくりと北上を続けていて、各地で河川の増水や氾濫への注意が呼びかけられている。
いつ発生するかわからない自然災害。
今年5月に東京・江戸川区が配布した「水害ハザードマップ」は浸水の危険がある地域への「ここにいてはダメです」というストレートな注意書きが話題となったが、大切なのはいち早く異変に気付き、安全な場所を確保することだ。
そんな時に役立ちそうな「スマート街路灯」の実証実験が、NEC(日本電気株式会社)によって行われる。
この「スマート街路灯」は、無線通信機を用いて街路灯をネットワーク化させたもので、防災だけではなく様々な用途での活躍が期待される。
街路灯の稼働状況などのデータを集めて故障に素早く対応できるほか、季節やエリアによって消灯時間や照度を細かく変更し、省エネ・効率的に管理することができる。
また、監視カメラや各種センサーを装備することで、街の様々なデータを集め、分析することが可能。
たとえば、商店街など人の多く集まる場所の街路灯には、照明以外の機能としてネットワークカメラやデジタルサイネージ、スピーカーを搭載。
カメラの画像から曜日・時間帯ごとの通行人数や性別、年齢を分析し、客層に合ったイベントなどの情報を文字や音声で発信することができる。
さらに、ネットワークカメラで街全体をリアルタイムで監視することで、不審物や不審者をいち早く発見するなど、様々なシーンでの利用が期待されているのだ。
そんなスマート街路灯が持つ、災害時に役立つ機能とは「水位センサー」。
今回東京・杉並区で実験されるのは、既存の街路灯に後付けすることで“スマート化”できる「ヘッドモデル型」のもので、12灯が杉並区の善福寺川周辺に設置される。
カメラ映像や各種センサーから得た水位などのデータを区役所内のパソコンに集め、異常時のアラーム通知などの早急な対処が出来るか検証するという。
「水位を監視するカメラ」自体は目新しいものではないが、この「スマート街路灯」の強みは、災害の危険を検知してから周知するまでの早さ、さらに避難の誘導まで行えるということだ。
街路灯を使って目指す防災についてNECにお話を伺った。
「1分以内の検知・発報が目標」
――なぜ「街路灯」に注目した?
海外の先進都市では、街路灯のLED化に加えて、ネットワーク化、センサー化など、多機能化が進んでいます。街路灯は数m~数十m間隔で立ち、電源も供給されるため、街のネットワークインフラになる可能性があると考えました。
――災害時、スマート街路灯から得られる情報はどんなものがある?
フルスペック型では、ディスプレイやスピーカーにより、避難誘導などの案内も可能です。
――センサーが異常を感知してからどのくらいで周知できる?
水位状況について「注意」~「発報」まで、1分以内の検知・発報を目標とし、NECのAI画像解析技術で、より正確かつタイムリーな検知を目指します。
災害時に混乱しがちなのが、避難情報。
テレビやラジオなどが確認できる状況にあれば良いが、たまたまそういったツールが手元にない状況で災害に遭ってしまうことも考えられるだろう。
そんな時、人が集まるポイントにスマート街路灯が設置されていれば「〇〇公民館へ避難してください」などの誘導や、公共交通機関の運行状況などが、文字や音声で確認できる。
8月から12月まで行われる今回の実験ではデジタルサイネージは使用されないということだが、実際の災害時には役立つ機能だろう。
――街路灯の“スマート化”にかかる費用は?
センサーが数万円/個から、別途通信機や工事の費用がかかります。
――今後どのようなエリアでの実験を予定している?
場所はお答え出来ないのですが、複数の地域での実証を検討しています。
いまやあらゆるものが共有されるIoTの時代。
“災害大国”とも呼ばれる日本でより安心・安全に暮らすため、防災にもスマート化の波がやってきている。