台風15号の影響で千葉県では停電と断水の状況に
台風15号が関東を直撃してから既に10日が経った。特に千葉県では、瓦が飛ぶなどの家屋の損傷をはじめ、電柱の倒壊や倒木など、いまだに復旧できていないところも多い。現在でも一部地域では、台風直後からの停電が続いている。
この状況を少しでも手助けしようと、全国から炊き出しや片づけなどの支援に、企業や個人にかかわらず多くのボランティアが千葉に集まっている。
そのひとつが日本航空で、普段は航空機の翼に付着した雪や氷を溶かしたり、再氷結を防ぐための防除雪氷液をかける作業などに使っている除雪作業車を12日と13日に派遣した。
驚くべきはその使い方。その車を活用して温かいお湯を提供し入浴支援をしたのだ。普段とは異なる使い方に、ネット上では柔軟な発想だなどと話題となっている。
まずその車両を見てほしい。こちらだ!

正式名称は「DEICING CAR(デアイシングカー)」で、その見た目から通称として「ELEPHANT」とも呼ばれているという。
この車両1台で、最大70度のお湯を4,000リットルまで作ることができる。
しかしなぜ、今回このような活用方法を思いついたのだろうか? また、支援する過程で大変だったことはあったのか? JALの担当者に話を聞いた。
担当部署からの発案で決定
――今回の入浴支援はどのような経緯で行なった?
社内会議の席上で、担当部署からJALグランドサービス社が保有している「新車の除雪作業車両で入浴用のお湯が提供できるのでは?」との発案がありました。
これを自治体にご提案したところ、横芝光町と多古町から要請があり実施となりました。なお実際の作業では防除雪氷液を使っていることから、入浴者の肌に影響がないよう、今回の車両は防除雪氷液をタンクに入れたことがない新車のみを使用しています。
――具体的にどの地域を訪れた?
12日は横芝光町、13日は多古町の老人ホームに、この1台が成田空港から派遣して入浴用のお湯を供給しています。

公道を走行するため仮ナンバーを申請
――大変だったことはあった?
当該車両は公道を走行できないため、自賠責の手続きを行い、仮ナンバーを申請して現地に向かいました。
施設までの道のりでは、倒木などにより大型車が通れない道を避けながらの走行となりました。そして横芝光町に到着後、駐車場から施設のお風呂場まで車両のホースが届かなかったことから、町の保有しているポンプなどを利用し、湯船まで届けています。
また多古町では、ポンプが現地になかったことから、急きょ弊社でポンプを購入して対応いたしました。
――このような形の支援は初めて? JALでは他にどんな支援をしているの?
お湯の提供は初めてのことで、上記のような多少想定通りにはいかないところがありました。
またその他の支援として、成田空港周辺の自治体にプラスチック製のカトラリーセット(合計2万セット)、カップ麺・おにぎり・総菜パン等の差し入れや、ブルーシートの輸送、役場で水等の物資配布の支援等を行っています。

担当部署の発案から始まり、公道を走行するための手続きをするなど、支援のための努力を惜しまない今回のJALの姿勢には頭が下がる。
なお、お湯を浴槽に満たした後はすぐに現場を離れたために、施設利用者らの反応は確認できなかったそう。しかし、台風後は蒸し暑い日が続いていた。数日ぶりに湯船に浸かって汗を流せたのならば、喜んでいたことは間違いないだろう。
(画像提供:日本航空)