私たちが普段よく使っているコンビニエンスストア。そこで働く店員は、レジ打ち業務から始まり、店内の掃除、商品の補充などだけでなく、最近では宅配業務やチケットの受け渡しなどサービスの幅が広がっている。
そんな忙しいはずの店員が「駅の改札業務も兼務している」と言ったら驚くだろうか。
しかし、そんなウソのような本当の話がある。
ここは、愛知県名古屋市にある近畿日本鉄道・名古屋線の伏屋駅改札。ファミリーマートと改札の案内窓口が同じ建物でつながり、確かに一体化しているようにみえる。
そして、構内にある案内に目を向けてみると…。
「当駅は次の時間、ファミリーマート係員が改札業務を行っております」「ご用のお客さまは、ファミリーマートの『近鉄ご案内窓口』用呼出しボタンでお知らせください」
と記載されていて、朝の6時から夜11時の間、ファミリーマートの店員が駅の改札業務を兼務する旨が書かれているのだ。
このコンビニでは、朝3人、昼3人、夜4人の計10人体制で、自動改札機を利用できない乗車券(きっぷ)を持つ乗客に対する改札業務、精算業務、鉄道の利用案内、駅の美化や清掃など幅広い業務をこなしているという。
兼務するにしても、コンビニでの業務と、駅の改札業務とでは全く仕事内容が異なる気もする。また、教育が行き届いてなければ、業務がままならないようにも感じるが、そのあたりは一体どうなっているのだろうか?
近畿日本鉄道の広報担当者に話を聞くこととした。
「契約上はファミマの店員です」
ーーコンビニと改札業務の兼務を進めるようになったきっかけは何?
近鉄グループとして、グループを挙げて駅空間を魅力あるものにしていきたく、ファミリーマートさまとタイアップという形でサービスの維持を図ることとなりました。
ーー兼務はいつ頃から行われている?
伏屋駅だと、2018年4月3日からです。
ーーでは、それ以前はどのような体制だった?
以前は、駅係員が改札業務を行っていました。
ーー兼務をしているのは駅員? 契約上はファミマの店員になる?
ファミリーマートの店員となります。
ーー兼務を進めるに当たって、難しかったことは?
開店当初では、自動改札機の取扱いなど、業務に慣れるまで時間がかかりました。
改札業務の“特別手当”はつく?
ーーファミリーマートの店員が改札業務を行うにあたって、特に設けている条件は?
こちらですがございません。
ーーどのような手順を踏んで、ファミリーマートの店員は改札業務に就いている?
店長に関しては、近畿日本鉄道からの教育を受けたうえで着任いたします。
その他の社員、スタッフに関しては、近鉄リテーリングで駅業務の講習を受講します。
ーーファミリーマート店員が改札業務を兼務することで、これまで目立った問題などは起こった?
現在のところ、問題は特に発生していません。
ーーコンビニ業務が忙しくて、改札業務に対応できなさそうな時はどうしている?
業務多忙により鉄道利用のお客様対応ができない場合は、お客様が改札口付近のインターホンで管理駅(近鉄蟹江駅)に問い合わせしていただき、管理駅の方でインターホンを通じて対応してもらうようにしています。
ーーコンビニ業務と勝手が違うが、担当者には別途手当など付く?
つきません。
コンビニと駅機能の一体化で総合的なサービスの提供
ーー兼務導入のメリット・デメリットがあれば教えて?
コンビニと駅機能の一体化でお客様に総合的なサービスの提供ができます。
ただし、複雑な問い合わせ・取扱時には、管理駅(近鉄蟹江駅)に問い合わせを行うため、時間を要します。
ーー兼務に対する利用客の評判は?
特にございません。
ーー近鉄でこうした兼務を行っている駅は他にある?
他ですと、鈴鹿市駅で2015年7月1日から実施しています。
ーー他の駅での兼務も今後考えている?
今後の展開については未定ですが、駅を魅力ある空間とするために、グループ総力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。
最近では交通系ICカードが普及し、自動改札を利用する乗客が多いため、駅によっては常時案内窓口にいる必要はなくなっているのかもしれない。組み合わせは意外だったが、我々が考えていた以上に、近畿日本鉄道とファミリーマートはしっかりとタッグを組んで、利用客にとってよいサービスを作り上げていた。