香水をガチャガチャで決める時代が到来?
おもちゃ屋さんやショッピングセンターなどで見かけることが多いガチャガチャ。何が出てくるか分からないワクワク感やほしいカプセルが出てこなかったときのガッカリ感は、子どもの頃に誰もが一度は味わったことがあるのではないだろうか。
ついつい何度も回してしまう魅力がガチャガチャにはある。
そんなガチャガチャだが、現在はおもちゃだけでなくいろいろな商品が詰められている。東京と大阪に計4店舗を構える香水の専門店・NOSE SHOPでは、池袋店に香水ガチャ常設し、来店者の人気を集めているのだ。

ガチャガチャに700円を入れるとランダムに1.5~2ミリリットルの香水が入ったカプセルが出てくるというものだ。
過去にはNOSE SHOP大阪店のオープン(2019年8月1日)時、期間限定でアタリのカプセルを混在させたこともあったという。アタリを引いた人は約2万円の香水現品や約6000円のキャンドルをプレゼントしていた。

この香水ガチャはTwitterでも話題となっており、「香水ガチャいいなーーーーーやりたい」「ノーズショップの香水ガチャめーっちゃ良くて東京に行く度にガチャってしまっている…」などという声が投稿されている。
でも香水って、店内でいろいろな香りを試し、自分に合ったものを探すのが楽しいんじゃないの? なぜ“ガチャ”という形でも提供しようとした思ったのだろうか? 始めたきっかけや苦労などをNOSE SHOPの運営会社「BIOTOPE」に詳しく聞いた。
きっかけは「香水が多すぎて選べないという嬉しい声」
ーーサービスを始めたきっかけは?
約2年前にオープンした当初は6ブランドからはじめたお店でしたがどんどん取り扱い商品が増え、現在の約40ブランドのラインナップ(約500種類)へと増加し、香水が多すぎて選べないという嬉しい声も少しずついただくようになりました。
それならば、香りを選ぶという行為を運に任せてみてはどうだろうか。そんな考えから生まれたのが「香水ガチャ」です。香り選びは楽しいという考え方をベースに、運の要素を付け加えて、エンタメ性をさらにアップさせました。これが香水ガチャが生まれた経緯です。
ーーいつ頃からサービスを開始した?
2017年8月にNOSE SHOPの1号店をオープンさせましたがそこから約半年後の2018年4月に初登場しました。
ーーだいたい何人くらいの人が1日に利用している?
平均的に1店舗で1日100名様程度のお客様が利用されます。休日など、多いときで200〜250名様のご利用があることもあります。
ーー香水ガチャで当たった香水を購入した人はいた?
はい。完璧な統計がとれているわけではありませんが3〜5%程度の方が大きなサイズの香水をお買い求めになられます。

ガチャの対象となる香水は約100種類
ーー現在何種類の香水がガチャの対象?
週替りでラインナップを変更しています。常時、大体100種類程度の香りがラインナップされています。
ーーガチャ対象の香水は、普通に買うと値段はどれくらいする?
さまざまですが100ミリリットルで2万円程度のものがほとんどです。
ーーガチャの値段設定はどのような基準で決めた?
「気軽に上質な香水を買う」という体験を提供したく、700円(税込)に設定しました。
ーー香水の種類は今後も増えていく?
はい。どんどん増やしていく予定です。ただ、そのためには海外ブランドさんの協力が不可欠なので彼らに「日本の新しい香水の文化を創る」という大義をしっかりと理解してもらうように努めます。
香水ガチャで新たな好みを発見できる可能性も
ーー日本での香水のイメージについてどう思う?
日本では香水にはどこか敷居が高いイメージが付きまとっています。また、香水を自由に身にまとうことはなにか後ろめたいような感覚があって、香水を身にまとうと「香水臭い!」といって社会から糾弾されてしまうような錯覚を覚えることさえあります。わたしたちはこれを香水に対する偏見と呼んでいます。
本当に質の高い香水は臭いものではありませんし、付け方や分量を間違えなければ身にまとう人も周りの人も幸せにしてくれるものです。
この偏見を打ち破るには上質な香水を身にまとう習慣を持った香水ファンを増やしていくしかありません。この香水ガチャは未来の香水ファンを増やし、ここ日本で好きな香りを身にまとうという精神的な「自由」を勝ち取るための革命のひとつだと考えています。
ーー香水ガチャの魅力は?
まずは選ぶという苦悩から解放されることです。好きな香りを選ぶという行為は大変楽しいものですが、たくさんある香りの中からこれという一本を選ぶ行為には大きな重圧もかかります。香り疲れしやすい鼻という感覚器官を使って、何百種類もある香りの中から独力で香りを一つだけ選ぶというのはかなり大変な作業です。そういう意味ではコイン一発で運命の香りと出会える香水ガチャは、選ぶという重圧からの解放ともいえるかと思います。
また、好きなものしかいらないという人も中にはいらっしゃるのですが、実は香りには食わず嫌いならぬ「嗅がず嫌い」というものも存在します。自分の好きな香りを本当に知っている方はごく少数です。好きだとは思わなかったけど、身にまとっていくうちに好きなってくる香りもあります。香水ガチャは、自分の「好き」を強制的に広げ、新たな好みを発見してくれる可能性があるともいえます。

ーー実施するにあたっての苦労は?
我々の扱うニッチフレグランスは、手作りに近いくらい少量生産されているものがほとんどなので、そもそも安定供給ということに難があります。各ブランドさんにお願いをして特別に作っていただいているものなので素材の調達にはずっと苦労していますし、今後も香水ガチャ用のミニサイズの調達には苦労をし続けると思います。
ーー池袋店以外にも香水ガチャを設置する予定はある?
はい。各店に不定期で香水ガチャは投入されています。
ーー反響は?
先ほども申しましたが、香水ガチャを利用された3〜5%の方がその香りを気に入り、現品をお買い上げいただいております。また香水ガチャのリピーター様もたくさんいらっしゃいます。2018年4月の香水ガチャのスタート以来、のべ5万人の方にご利用いただいております。
「香りを選ぶのは楽しい」と言っても、たしかに100種類以上の中から自分好みの一品を探すのは大変だろう。ちょっと香水を変えてみたいと思った際には、こんな運任せに頼るのもたまにはいいかもしれない。もしかしたら“運命の香り”に出会えるかも?