“猫と出会える”スマホアプリ

交際相手や結婚相手を探せる「マッチングアプリ」。

スマートフォンひとつで登録でき、手軽に利用できる人気のサービスだが、もちろんこれらのアプリが想定しているのは人間同士の出会いだろう。

そんなマッチングアプリの中で異色と言える、“保護猫”と出会えるアプリが登場した。

注目のアプリは、ネコノラボが作成したiOS用無料アプリ「NYAPPLING(ニャップリング)」

アプリを立ち上げて自分の顔を撮影すると、まず「あなたが猫だったらこんな顔」という画像に変換してくれる。そしてその画像に似た猫をAIが検索、わずか数秒で“マッチング”が成立するのだ。

つまりこの「NYAPPLING」は、ただの猫ではなく自分に似ている猫と出会えるマッチングアプリということだ。

この場合は76%マッチング
この場合は76%マッチング
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実際に試してみた

さっそくスタッフも試してみたところ、髪や瞳の色が反映されたのか、茶色と黒の毛並みが印象的な「ささ」ちゃんとマッチングした。

マッチングした猫ちゃんは所在地や性格などのプロフィールを見ることができ、マッチングした「ささ」ちゃんは東京都の猫カフェで暮らしている1歳の女の子ということがわかった。

実際に会ってみたい、と思った人は、掲載されているさらに詳細な連絡先からコンタクトを取ることもできる。

さっそく「ささ」ちゃんが暮らす猫カフェの公式サイトを見に行ってみたが、アプリで初めて見たにもかかわらず、なんとなく他の猫よりも「ささ」ちゃんに対して親近感を抱いてしまった。

「自分に似ている」という情報は、たしかに「猫を飼いたいけれど、どんな子にしようか…」と迷っている人には強く背中を押す要素になりそうだ。

長い時間を一緒に過ごすパートナーだからこそ、相性ぴったりなペットを迎えたい…そんな悩みにひとつ選択肢を与えてくれそうなアプリ。

SNSでも「本当にそっくりな猫が出てきた」「ぜひ会ってみたい」などの反響があるが、そもそもなぜこのようなアプリを作ったのだろうか。開発元のネコノラボにお話を聞いてみた。

「保護猫と人間の出会いの場を作りたい」

――「ネコノラボ」はどんな団体?

猫好きの友人同士が集まった有志団体です。今回の「NYAPPLING」アプリの開発を主として立ち上がりました。現在のチームメンバーは、エンジニア2名・デザイナー1名・プランナー2名・ライター1名の計6名です。コラボ先や協力者様を募集しております。


――「猫とマッチングできるアプリ」を作ったきっかけは?

「保護猫から猫を飼う」という選択肢を広げていきたいと思ったからです。

私たちがこのアプリを開発したのは、日本の殺処分問題にあります。いま空前の猫ブームの日本ですが、その裏では捨てられ、処分されている猫がいます。日本で1年間で殺処分される猫の数は、34,854匹(環境省自然環境局の平成30年「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」より)です。

保護猫を救う手段として里親になる方法がありますが、日本ではペットショップから猫を飼うことが主流であり、その習慣はまだ根付いていません。

「猫を救いたい」 そのために、保護猫と人間の出会いのきっかけを増やしたい。そのためにアプリを開発しました。「自分と似ている猫を見てみたい」という興味をきっかけに、保護猫への理解が深まれば幸いです。


――「自分の顔に似た猫」はどのようにして見つけている?

本アプリを制作するにあたり、16,000匹もの猫の画像をディープラーニングの技術で学習させ、人間を一度“猫化”。猫化させた人間の画像と、保護猫の画像の近似値を求め、似ている度を掲出しています。

目の大きさ・輪郭・色合いなどを考慮し、ざっくり言うと「見た目の印象」が似ている猫をマッチングしています。


NYAPPLINGが生まれたきっかけは、「保護猫」の問題。

日本では猫を飼いたいと思った時の入手ルートがペットショップからであることが多く、保護猫を引き取るという習慣が根付いていない。この観点からネコノラボは「保護猫と人間の出会いを増やしたい」という思いでこのアプリを開発したという。

そのため、NYAPPLINGでマッチングできる猫は全て保護猫。マッチングした後は実際に会いに行くだけでなく、里親になるという選択肢もあるのだ。現在、2つの保護団体と協力しており、27匹の猫とマッチングすることができるという。

そして、開発にあたって注目したのが「自分と似ている」というポイントだ。

ネコノラボでは、「似たもの夫婦」などという言葉があるように、「自分と似ている人に好意を抱きやすい」という人間の習性、そして「自分に似た猫を見てみたい」という好奇心を利用したアプリを開発したのだという。

もちろん、最初から似ている者同士が結ばれやすいのか、長く付き合ううちにだんだんと似てしまうのか…という議論はあるだろうが、たしかに自分と真逆の性格や見た目よりは、どこか似ているところがある相手に親しみを抱いてしまう、というのは納得できる。

人間と猫のほか、猫同士のマッチングもできる

NYAPPLINGが保護猫との架け橋となるアプリだということはわかったが、実はもう一つの使い方がある。

それは、「すでに猫を飼っていて2匹目、3匹目を迎えたい」…と考えている人も使える「猫と猫のマッチング」だ。

猫同士のマッチングにも使える
猫同士のマッチングにも使える

自分の写真を撮るかわりに、飼い猫の写真をパチリ。人間の診断と同じように見た目の印象から「飼い猫に似ている猫」を選んでくれるのだ。


――猫たちも「似ている」方が仲良くなりやすい?


実は「猫同士も容姿が似ていると相性がいい」というエビデンスはありません。しかし、周りで2匹以上の猫を飼っている飼い主さんをみると、似ている猫を飼っていることが多いようです。今後、統計を取って調べてみたいです。


人間とは違い、猫たちにとって「似ている」ことが親しみやすさに繋がるかどうかは不明だというが、新しい子を迎えたいと考えている人にとって選択肢のひとつになるはずだ。

ただし保護猫を引き取るには条件が…

――実際にマッチングした猫を迎えました、というユーザーはいる?

現在、実際にこのアプリ経由で保護猫を飼うことになったという方の報告は来ておりません。「保護猫について知る」→「会いに行って飼う」というところのハードルは今後の課題と捉えています。今回みなさんに使っていただいたことで、「保護猫について知る」という課題については寄与できたのかなと思っています。


――保護猫を迎える上で知っておいてほしいことは?

保護猫を迎え入れるためにはいろいろ条件があります。保護猫団体さん各々で考え方が異なるので、もし興味をお持ちになったら、調べてみたり、問い合わせていただければ幸いです。


――このアプリを使った方へ…

アプリをきっかけに、「保護猫から猫を飼う」という選択を知ってもらえれば幸いです。猫同士の比較もできるので、2匹目の猫を迎え入れたい方にも向いています。ぜひこの活動を少しでも広げ、猫を取り巻く環境が少しでも良くなればと考えています。



注意したい点としては、マッチングした猫をすぐに引き取ることはできない、ということだろう。譲渡には保護団体ごとの条件があり、また、マッチングした猫がすでに引き取り手が決まっている場合もあるため、まずは引き渡し方法の欄を確認し、問い合わせをしてほしい。

NYAPPLINGは現在iOS版のみの配信だが、android版のリリースも検討中とのこと。「自分に似た猫が探せる」という好奇心から、保護猫の問題に一役買うかもしれないこのアプリ、もし運命の猫とマッチングできたらお迎えを考えてみてもいいかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。