FNN記者のイチオシのネタを集めた「取材部 ネタプレ」。
今回取り上げるのは、社会部・小河内澪記者が伝える「プロの詐欺師の手口」。

「20年前から20億円を騙し取った」と豪語

社会部・小河内澪記者:
「20年前から20億円をだまし取った」と豪語する取り込み詐欺グループが摘発されました。
警視庁が逮捕した西島博文被告(59)が主犯で、実行犯4人は実際に被害者に接触し信用させてだます役割を担当していました。

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そもそも取り込み詐欺とは何かというと、代金を支払う意思がないのに企業などに取引を持ちかけ、そして商品を納品させた後 こつ然と姿をくらます手口の詐欺です。
騙し取られた商品は、買い取り業者に転売され現金化されることが多いです。

このグループがだまし取っていた商品は、エアコン・テレビ・空気清浄機などの電化製品でした。
建築関連会社の社員を名乗って家電販売業者に近づき、例えば「民泊施設のリフォームをしていて部屋に設置するエアコンが欲しい」などといかにもありそうな取引を持ちかけてだましていました。
外国人観光客の増加で脚光を浴びた”民泊”に便乗した詐欺で、2015年以降で少なくとも約170社が被害にあい、被害額は6億円に上るとみられています

巧妙な3つのやり口

加藤綾子キャスター:
やっぱり信じちゃうものなんですかね、どういう手口なんですか?

社会部・小河内澪記者:
西島被告らは、巧妙なやり方で相手の家電販売業者を信用させていました。
ポイントは3つです。

1つ目のポイントは、「実際に会社を作る」です。
西島被告らは実際に事務所を借りて、それを事務所に仕立てて、当然法人登記も取った上でニセの名刺とホームページを準備していました。
そして、その被害会社の担当者を事務所に招いて契約を結んでいたのです

加藤綾子キャスター:
営業実態のない会社だけれども、本当にあるようにしていたいうことですよね

社会部・小河内澪記者:
西島被告らの仲間は、別の事件でわざわざ従業員を雇ってコールセンターを設置して信用させていたということです。

2つ目のポイントは「まずエアコン購入」。
西島被告らは、相手を信用させるために最初は少量ながらもエアコンを実際に購入していました。
そして、「この会社は大丈夫だ」などと相手を信用させてから、大量の電化製品を発注し納品させていたということです。

加藤綾子キャスター:
全く買わないわけじゃなくて、少しだけ最初に買って信用させて騙していくということなんだ

社会部・小河内澪記者:
この辺がやっぱり本物の詐欺師と言えるかもしれません。

そして3つ目のポイントは、「”倒産”を信じ込ませる」です。
西島被告らはエアコンなどを納品させた後、姿をくらませているのですが、その際使っていた事務所などをちゃんともぬけの殻にして夜逃げを装っていました。
そうすると、事務所を訪れた被害者が「取り込み詐欺にやられた」と思うのではなく「倒産したんだ」と勘違いするんです。

被害者の中には、事件化するまで騙されたことに気づかないケースもあるということです

加藤綾子キャスター:
倒産したと思われた方がいいということなんですか?

社会部・小河内澪記者:
そうなんです。そうすると詐欺だと気づかない。自分が騙されたと思わないということです

加藤綾子キャスター:
あとも追われないということなんだ

詐欺は”信用”をだまし取る

加藤綾子キャスター:
住田さん、検事として詐欺師を調べたことありますか?

住田裕子弁護士:
たくさんこのような集団を調べてきました。
特に主犯格とかだと、本当に悪いことしてるとは思わないようですね。もう騙される方が悪い(と思っている)。
だからこそ、新聞を毎日見て、新ネタでこれでいけないかどうか、どんなふうな形で舞台装置を作るかと考えて大掛かりにするんですね

加藤綾子キャスター:
だから、ここまで手口も込んでいるんだ

住田裕子弁護士:
それが彼らの知恵の使いどころなんです。そして成功体験を続けて重ねているから、堂々としてます。
ですから、上手く逃げ切っているというのは上手にやってきたということですよね

加藤綾子キャスター:
「20年前から20億円だまし取った」って豪語するということがかわかりますね

住田裕子弁護士:
そうですね。本当に今回は主犯格まで逮捕に行ってよかったと思います。
だけど、大きな事件だからこういうふうに大きく報道していますが、今はもっと小さな一般の消費者にも同じような詐欺があるわけです。
小口で少しずつ実績を作っていき、信用させる。詐欺師というのはまず”信用”を騙し取るんです。
だから、これもその通りだと思います

場所を変え、全国各地で犯行を重ねる

社会部・小河内澪記者:
他にもさまざまなやり方で詐欺と気づかれないようにしていたんです。

例えば、1回当たりの取引を1000万円から2000万円程度に抑えていたりだとか、安全審査が甘く意思決定が早い中小企業ばかりを狙っていたり、あとは犯行を年に2、3回にとどめて、場所を変え全国各地で犯行を重ねていました。

こうして見ると、20年前から20億円をだまし取ってきたとの供述とは裏腹に、かなり慎重な詐欺師像が浮かび上がってきます

加藤綾子キャスター:
詐欺っていろいろ形を変えてきますから、見抜くのも難しいと思うんですけど、どういうところに注意したらいいですか?

住田裕子弁護士:
品物と現金との引き換えでないと、そうそう安心してはいけない。信用してはいけない。それだと思います。特殊詐欺は全部これです

加藤綾子キャスター:
とにかく注意深くということですね

(「イット!」12月16日放送より)