神奈川・藤沢市で、84歳の女性が運転する車が踏切から線路内に進入し列車と衝突した事故。
死亡した女性は遮断機が下り始めた状況で踏切内に進入し、何らかの理由で線路のほうに左折したとみられることが新たに分かりました。
事故はなぜ起きたのでしょうか。
「イット!」は29日、専門家とともに現地を取材しました。
大きくひしゃげ、原形をとどめないほど壊れた車。
亡くなった運転手の女性は日常的に車を使っていたといいます。
亡くなった女性を知る人:
車止めておうちに入られるところをご挨拶させていただく感じ。84歳とは思えないぐらい若く見えた方でした。
なぜ84歳の女性が運転する車は踏切から線路内に進入したのでしょうか。
事故が起きたのは27日午後10時半ごろ。
現場近くに設置されている防犯カメラ映像の画面右から現れたのは、小田急江ノ島線の線路内に進入した1台の車。
その直後、車の隣を上り列車が通り過ぎていきます。
車は列車とすれ違った直後に停車し、左ウインカーを点滅させますが、その約20秒後、後ろから来た各駅停車の列車と衝突しました。
近隣住民:
いきなりドンという音がして、何かを引きずるようなガチャガチャって音がした。
事故から約30分後に撮影された現場の様子。
列車の前方に集まる大勢の人の姿や離れた場所に置かれたストレッチャーが確認できます。
列車に乗っていた乗客・乗員にけがはありませんでしたが、車を運転していた藤沢市在住で84歳の女性の死亡が確認されました。
警察によりますと、女性の車は小田急江ノ島線の六会日大前駅から南に500メートルほど離れた場所の踏切から進入したといいます。
踏切から進入した車は線路内から南に200メートルほど走行。
そのすぐ後、列車と衝突しました。
イット!取材班と現地を訪れた鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは、この踏切の特徴を「左にハンドル切らなければ入ってこられないので神経使う」と指摘します。
車が進入した場所を反対側から見てみると、車が直前に通ってきたとみられる道は踏切にかけてわずかながら左にカーブしているのが分かります。
鉄道ジャーナリスト・梅原淳さん:
(踏切は)直線で渡りたいものなので途中でハンドルを切るというのは脱輪の危険が非常に高くなりますし、難しい踏切なんだろうと。
梅原さんは、女性の車が踏切に進入する際、何かに気を取られ、さらに左にハンドルを切ってしまった可能性もあると指摘します。
また、事故が起きた時間は辺りがすっかり暗く、踏切を照らす街灯の数もわずかだったことについては「ヘッドライトは当然車の進行方向に応じて前を照らすから、踏切全体を常に照らしているわけではない。(方向感覚が)どうもここで失われてしまいそうなところではある」と話しました。
警察や小田急電鉄によりますと、女性が運転する車は遮断機が下り始めたのとほぼ同時に踏切内に進入。
直後、何らかの理由で線路方向に左折したとみられることが新たに分かりました。
また、29日に現地を取材している中で新たに分かったことがありました。
近隣住民:
ゆっくり行かないとやっぱり段差があるので、きついかなってなりますね。(Q.段差というのは踏切に入る前?)ちょうどここの段差ですね。かなりの勾配はありますよね。
この道を通ったことがある人によりますと、踏切手前には傾斜があり、進入する際、少し視界が上向きになるといいます。
交差点に進入する車を見ていると、車体が少し傾く様子も分かります。
この傾斜によってドライバーからの見え方はどう変わるのでしょうか。
実際に、車内から撮影してみると、わずかですが、踏切に進入する瞬間車体が傾き、前方の路面が見えにくくなるのを確認しました。
取材で新たに分かった踏切の状況や視認性。
これらと線路への進入は何か関連があるのでしょうか。
交通事故鑑定人・中島博史さんは、女性の車が焦ってハンドルを切ったとは考えにくいとしたうえで、「暗いので(交差点を)見落としてしまう。線路と地面の段差のために車の前が上がる状態になり余計左は確認しづらい。遮断機が下りている、自分は交差点にいるはずだと思うと、ここで向きを変えなくてはいけないと意識が向いてしまった」と分析します。
また、防犯カメラの映像を見ると、車が線路に進入した後、上り列車とすれ違っています。
その後、左ウインカーを点滅させますが、中島さんは「完全に推測になってしまいますが、列車とすれ違ったことで、今自分がいるのが線路だと気づいてここから離れる、左に避けたいという意識があったのでは」と話しました。
亡くなった84歳の女性が運転する車がなぜ線路に進入したかは分かっていませんが、踏切内で起きた事故は2025年度、全国で180件以上発生し、その半数が60歳以上によるものです。
2023年10月には、新潟市を走るJR越後線の線路内に80代の女性が運転する軽自動車が誤って進入。
非常停止ボタンが押され、電車との接触は免れました。
その2025年度の踏切内での事故を詳しく見てみると、その半数が車・歩行者問わず、直前に線路内に進入したことによるものだったということです。
そして今回の藤沢市の事故に関しては夜だったということもあり、気を付けていても、万が一線路の上を走ってしまう可能性もゼロではありません。
もしそうなってしまった場合はどうすればいいのでしょうか。
鉄道ジャーナリストの梅原淳さんに聞きました。
もしも誤って線路内に入ってしまった場合には、気づいた時点で車を止めて、近くの非常停止ボタンを押すことが重要だといいます。
運転している運転手の心理的には線路の上を走って次の踏切で道路に出ようと、そう考えてしまうこともあるそうですが、踏切から離れると非常停止ボタンがなくかえって危険になってしまうということです。
