昼夜の寒暖差が激しい日が続いている。
一般的に「一日の気温差が7度以上あると“寒暖差疲労”が起きやすくなる」というが、最近はその差が10度を超える日も珍しくない。
その上、毎日の気温のアップダウンも大きい。10月後半なのに30度を超える真夏日になったり、翌日には涼しくなったりしている。
「寒暖差のあるこの時期は、“ぎっくり腰”に注意が必要です。寒さを感じて冷えが気になったら、普段の動作や姿勢も見直してみて下さい」
と話すのは、整形外科医の森昭嘉先生。注意すべきポイントや対策など詳しく聞いた。
■寒暖差が気になる時期は、腰への負担にも注意
【もり整形外科 森昭嘉院長】
多くの人が経験する腰痛。その一つが、急に起こり強い痛みを伴う「ぎっくり腰(急性腰痛症)」です。
人間の体には体温を一定に保とうとする働きがあります。朝夕と日中の寒暖差などで気温が急激に下がると、体は熱を逃がさないよう血管を収縮させます。
それにより血流が悪化、筋肉が硬直しやすくなります。また、寒いと無意識に体に力が入り、こわばりを感じることもあります。
硬くなった筋肉に、日常生活での負担の大きい動作や姿勢が重なると、ぎっくり腰を引き起こすリスクが高まってしまうことがあるのです。
■日常生活で気を付けるべき3つの行動とは
ぎっくり腰にならないためには、日常での動作の工夫が重要です。腰に大きな負担がかかる「3つの動作」を中心に、対処法を紹介します。
【起きあがる】
硬くなった筋肉は急な動きに弱いので、朝はできればゆっくり起き上がって下さい。目が覚めたら、布団の中で軽く手足を動かしたり、深呼吸をして体をゆっくり目覚めさせます。
また腰痛がつらい人は、横向きになり、手で体を支えながらゆっくり起き上がって下さい。丁寧に行うことが大事です。
【座る】
座っている時の腰への負担は、姿勢や背もたれの有無などによって変わりますが、一般的には立っている時に比べて1,5倍程度の負荷がかかるとされています。
ポイントは“楽だと感じる姿勢”で“腰を丸めない状態”。背もたれなども使いながら、ご自身が楽に座れる姿勢を探して下さい。
また同じ姿勢が続くと負担がかかるので、1時間に1回を目安に、立ったり、歩いたりしてこまめに体を動かしましょう。
そして、立ち上がる時は、足の位置を整え、必要に応じて肘掛けなどを使いながら、安定した姿勢で動くことを意識して下さい。
■重い荷物を無理な姿勢で持ち上げると腰に大きな負担
【荷物を持つ】
荷物を持ち上げる時にギクっとなる。そんな印象を持つ方も多いと思います。
確かに重い荷物を無理な姿勢で持ち上げると腰に大きな負担がかかります。
ひざや股関節を使いながら、“ひざを伸ばしたまま腰を曲げるのではなく、ひざを曲げて腰を伸ばした状態”で荷物を持ち上げましょう。
その際、荷物をしっかり体に近づけて持つのも大事なポイントです。
そして、当たり前のようですが、荷物が重い時は無理せず分けて持って下さい。こうしたことをひとつひとつ実践することが大切です。
そのほか、腰の不調が出やすい場面として、「洗顔」と「靴下」が挙げられます。
洗顔の時、前かがみになると腰がつらい人は、洗面台に片手をついたり、少しひざを曲げたりして、楽な姿勢を試してみて下さい。
あとは靴下を履く時。立ったまま履こうとすると負担がかかりやすくなります。
椅子や床に座って、足を折り曲げて体の方に近づけて履く方法は、腰への負担が少ないと思います。
■もし“ギクっ”となってしまったら…
実際にぎっくり腰になってしまったらどうすればよいのか。よく患者さんから聞かれる2つの質問があります。
【Q1:ギクっとなった直後はどうすればよいのか?】
まずは“楽な姿勢”で軽く休んでください。
横になるなど、ご自身が楽だと感じる姿勢を選んでください。座った状態でも、立った状態でも大丈夫です。
そして、少し休んで痛みが落ち着いたら、無理のない範囲で日常生活を送って下さい。このことは「腰痛診療ガイドライン」でも推奨されています。
よく「ぎっくり腰になったら何日間か動かない方がよいのですか?」と聞かれますが、長期間の寝たきりは避け、できる範囲で日常動作を続けることが大切です。
【Q2:温めるのと冷やすのとどちらがよいのか?】
実は一概にどちらが良いと言えることではないのです。発症してすぐだから、『必ず冷やす』という決まりはありません。
冷やすことで痛みが和らぐ方もいれば、温めた方が楽になる方もいます。自分がより良いと感じる方を選んで下さい。
注意点としては、皮膚に直接当てず、冷やしすぎや低温やけどに気を付けること。痛みが増す場合は中止しましょう。
■病院に行くべき“5つのサイン”
腰痛は病院を受診しない方も多く、実際に自然治癒するケースもあります。
しかし、重大な疾患が隠れていたり、痛みの慢性化や神経障害など生活に支障が出る恐れもあります。
腰の痛みがあり、その上で下記の5つの兆候が見られたら、自己判断で対処せず、病院を受診してください。
【しびれが出ている、力が入りにくい など】
「椎間板ヘルニア」や「腰部脊柱管狭窄症」で、神経症状が出ている可能性があります。急速に足の力が入りにくくなった場合は、すぐに救急受診してください。
【発熱があり、腰の痛みも強い】
腰の感染症「化膿性脊椎炎」の可能性があります。
【転倒後に強く痛む】
腰の骨折が起こっている可能性があります。
【安静にしていても悪化していく】
重大な病気が隠れている可能性もあるので、自己判断せずに受診してください。
【新たな尿漏れや尿の出にくさ、便失禁、股の間の感覚低下がある】
尿が出にくい、尿や便が漏れる、股の間や肛門の周囲の感覚が鈍いなどの症状が新たに出た場合は、神経が強く圧迫されている可能性があります。すぐに救急受診してください。
腰痛発症前から尿漏れなどがある方も、症状が変化・悪化した場合や、足の脱力などが加わった場合は、泌尿器科の問題と決めつけず、すぐに受診してください。
■冷えが気になる方は、「冷やさない工夫」も
冷えが気になる方は、「冷やさない工夫」も取り入れましょう。
カーディガンやマフラーなど脱ぎ着しやすい衣類を活用し、重ね着をすることで、室内外の気温差に対応しやすくなります。
デスクワークなどで長時間座る場合は、腰にカイロを貼ったり、腹巻などをして腰を冷やさないようにして下さい。カイロは皮膚に直接貼らず、低温やけどに注意して下さい。
そして、室温を安定させた環境作りも大切です。室温の目安は20~25度程。室内であっても急激な温度変化を避けるため、エアコンや暖房器具を使う際は、設定温度を1、2度ずつこまめに調整するのがポイントです。
生活習慣や日常の動作に少し気を配ることが、ぎっくり腰の予防になります。
これから寒い季節を迎えますが、十分に注意し、健康に過ごして頂ければと思います。
(もり整形外科 森昭嘉院長)
