奈良公園で相次いで見つかった子ジカの死骸。
生後1カ月に満たない子ジカ4匹で、いずれも東大寺と興福寺の境内などで見つかりました。
野生動物による捕食の可能性は低いとされ、県は「人による加害行為の可能性がある」として警察に情報を提供しています。
関西テレビの独自取材で「首と胴体が分離したものもあった」といいます。
一体なぜこういった事態が起きているのか、緊急取材しました。
■奈良県などが臨時会見 体の一部が無い子ジカの死骸が見つかる
23日、奈良県の山下真知事や「奈良の鹿愛護会」東大寺、興福寺の関係者が出席する臨時共同会見が開かれました。
【奈良県 山下真知事】「体の一部が欠損した子ジカの死骸が、寺院境内地等などにおきまして複数発見されました」
見つかった子ジカは4匹で、いずれも生後1カ月に満たないとみられています。体の一部が無かったということです。
■人通りの少ない場所で相次ぐ発見
奈良県などによると、発見場所はいずれも東大寺と興福寺の境内などです。
1匹目はことし8月21日に興福寺の北参道で見つかりました。観光客が多く通る道から曲がった、世界遺産の興福寺につながる参道で、人通りが少なくなる場所です。
2匹目が見つかったのは8月27日、東大寺大仏殿の東側付近です。正面の入り口は人が多い一方、東側に道を入ると人通りは少なくなります。道沿いには木が生い茂り、奥は人目につかない印象もあるといいます。
その西側付近で9月17日に3匹目が見つかりました。少し歩いただけで観光客の数は少なく、周囲にいたシカも2匹だけでした。
さらに4匹目の死骸が、興福寺の西側で10月1日に見つかりました。
■専門機関は「野生動物の可能性は低い」 捜査関係者「首と胴体が分離した死骸も」
「奈良の鹿愛護会」から報告を受けた奈良県は、アライグマなどの野生動物に捕食された可能性があるかどうか、民間の専門機関に問い合わせました。
【奈良県 山下真知事】「専門機関からの回答は、『野生動物によるものの可能性は低い』ということでした」
野生動物による捕食の可能性も捨て切れないものの、県は先週、人による加害行為の可能性があるとして奈良県警に情報を提供しました。
体の一部がないことの詳細は会見で明かされませんでしたが、関西テレビの取材に捜査関係者が答えています。
【捜査関係者】「一部の写真で見たが、首と胴体が分離した死骸もあった」
■愛護会副会長「死骸自体は珍しくない、4件が固まっているのは気持ち悪い」
子ジカの死骸が見つかること自体は、珍しいのでしょうか。
「奈良の鹿愛護会」の中西康博副会長に聞きました。
【奈良の鹿愛護会 中西康博副会長】「子ジカが死ぬことは別に不自然ではない。特に生まれて1カ月未満なので、弱い個体で生まれると野生動物なので、1カ月くらいで死ぬというのは結構ある」
愛護会によると、事故や自然死などで年間280頭ほどの死骸が発見され、子ジカはおよそ3分の1を占めるといいます。体の一部がないことについても、次のように説明しました。
【中西康博副会長】「欠損が珍しいかというと、死んだら我々に通報があって収容するまでの間に、野生動物が自然の摂理で、(死骸を)えさとして扱うケースは多い。尻尾がない死骸も多くある」
一方で、“違和感”もあるといいます。
【中西康博副会長】「今回は8月~9月くらいの間に4件と固まっているのが珍しい。寺2つで、連続して出ているのも気持ち悪いという部分はある。人的な(加害の可能性)も考えられることが、我々も重く受けとめている」
愛護会は警察などと協力し、パトロールを強化しています。
■犯罪心理学の専門家「猟奇的ではなく、社会への“メッセージ”か」
可能性として残っている「人による加害行為」について関西国際大学の中山誠教授(犯罪心理学)に聞きました。
【関西国際大学 中山誠教授】「シカも草食動物なので、多分、睡眠時間って短いと思うんですよ。警戒心も非常に強いので、それなりに道具を持って計画的にやらないとできない。突発的にやったようなことではないという気がしますね。計画的犯行であろう」
人による加害行為だとしたら「計画的」と分析する一方で、「猟奇的な意味はない」ではなく、「不満のメッセージ」の可能性を次のように推測しました。
【関西国際大学 中山誠教授】「シカは地元に観光資源として、なくてはならないもの。一方でオーバーツーリズムなど弊害も生んでいる。地元にとって必要だが迷惑なものでもある。
そういうメッセージを伝えるとすれば、その象徴として格好のターゲットとして選ばれたのではないか。
子ジカは非常にかわいいイメージで、観光客に人気もありますから、かわいいものに残虐な行為をすることで、何らかのメッセージを伝えたかったか。
そういう主張があるならば、当分続くのではないか」
今後については、次のように推測します。
【関西国際大学 中山誠教授】「自分の身辺に捜査が及んできたとなれば、続けてはやらないと思います。次の事件を起こすときは、捜査網ができてるので、捕まる可能性はあると思う」
■解説 西脇亨輔弁護士「人為的なら重い罪に」
西脇亨輔弁護士は現段階で人による加害行為かどうかは断定できないとしたうえで、動物を守る法律について解説しました。
・動物愛護法:ペットを中心に、犬や猫、牛や豚などが対象で、野生動物であるシカは対象外
・鳥獣保護管理法:野生動物が広く含まれ、理由なく命を奪えば1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
ただ、「奈良のシカ」は国の天然記念物なので、人が害を与えると「文化財保護法」違反となり、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金となります。
さらに複数のシカを傷つけた場合は、拘禁刑の上限が1.5倍になり、「7年6カ月以下」となります。
【西脇亨輔弁護士】「かつてシカの命を奪った事件では、懲役6カ月の実刑でした。奈良の象徴とも言うべきシカを殺し、地域社会に驚きと不安を与えた。もしも人間がやっていたとしたら、そういった事件だと思います」
(関西テレビ「newsランナー」2026年10月23日放送)
