兵庫県議会が10月23日、閉会した。斎藤元彦知事は、閉会後に記者団の取材に応じ、「今回提案させていただいた議案すべて認定・可決いただいた。議会のご協力に感謝申し上げたい」と成果を強調した。
一方、斎藤知事に関する疑惑を告発する文書を作成した元県民局長の私的情報が漏えいした問題で、知事が管理責任を取る「給与減額条例案」は、5度目の継続審議となった。その背景には、斎藤知事の答弁や態度への県議会の不満や怒りがある。
最大会派の自民党県議団はことし6月、斎藤知事に説明責任を果たすことや信頼関係の回復などを求める申し入れ書を提出していたが、「文書問題」をめぐる知事の説明は、詳しくなるどころか、どんどん“退化”している。
今回の県議会でも、斎藤知事が県議の質問に答えず、関係のない定型文を繰り返す場面が繰り返された。象徴的だったのは、百条委員会で委員長を務めた自民党・奥谷謙一県議との「直接対決」だった。
■“因縁の県議”から飛んだ直球質問
斎藤知事はこれまで「初動から懲戒処分まで、県の対応は適正・適切・適法だった」と繰り返し、その根拠として「弁護士に相談しながら進めてきた」と説明している。
しかし10月7日の決算特別委員会では、人事課長が真逆の答弁をした。
県の特別弁護士に初めて相談したのは、斎藤知事が告発者探しを指示し、片山安孝副知事(当時)が公用パソコンを回収した2024年3月よりも後となる、4月1日だったというのだ。
また法律では、告発文書が「不正の目的」ならば「公益通報」にならないが、人事課長は「不正の目的と判断したことはない」とも明言した。
「人事課の見解」と「斎藤知事の見解」は同じなのか、違うのか。
10月20日の決算特別委・総括審査で、奥谷県議は斎藤知事に「直球質問」で切り込んだ。
【奥谷県議】「(人事課長は)『弁護士に法的見解を得ながら文書内容の調査や懲戒処分の検討を進めてきた』と答弁したが、弁護士とは、4月1日に初めて相談した特別弁護士だと。それから人事課として『不正な目的があったと判断したことはない』と答弁いただいた。知事も同様の認識か」
【斎藤知事】「当該文書についてはこれまで答弁してきた通り、私自身が当事者として文書に書かれており、事実と異なる記載があるということと、個人や企業名が多数含まれており、放置しておくと多方面に著しく不利益が及ぶ内容だと認識している」
斎藤知事はこれまでと同じ主張を繰り返す。しかし、本当の攻防はここから始まる。
■委員長の注意も無視「私は答えている認識」
県組織と知事の見解が「同じ」か「違う」かの二者択一。奥谷県議がさらに問う。
【奥谷県議】「やましいことがないなら堂々とお答えいただきたい。私がお聞きしているのは、10月7日にあった(人事課の)答弁、知事もそういう認識なのかということ。イエス・ノーで聞いているので明確にお答えいただきたい」
【斎藤知事】「先ほど申し上げた通りだ。個人名・団体名が具体的に書かれ、事実でないことが多々含まれる誹謗中傷性の高い文書だと考えている」
ここで決算特別委・風早寿郎委員長(自民)が、「質問の論点と答弁の内容にズレがある」と指摘。斎藤知事に答弁のやり直しを求めたのだが…。
【斎藤知事】「繰り返しになるが、私としては答えさせていただいている認識だ。知事や一部の幹部職員を誹謗中傷する文書だ」
【奥谷県議】「ちょっと答弁として受け入れられない。休憩を取っていいので整理していただきたい」
委員会審議は中断し休憩へ。兵庫県議会では珍しい展開だ。およそ2分半の調整を経て質疑は再開されたが…。
【奥谷県議】「知事も同様の認識でよいか」
【斎藤知事】「ご質問に対してちょっと繰り返しになるが、私の認識としては先ほど申し上げた通り。誹謗中傷目的の文書だったと感じている」
【奥谷県議】「堂々と『同じ認識だ』と答えられないということは、県の見解といっても、担当部局と知事の見解が全然まとまっていないと思う」
斎藤知事にとって、答えにくい質問なのだろう。もしも「同じ認識」であれば「弁護士に相談しながら進めた」という自らの説明は嘘になり、告発文書は公益通報だと認めることにつながる。
一方、「違う認識」であれば、「県組織と知事の見解はバラバラ」と認めることになる。
どっちに転んでも斎藤知事にとって大ダメージになる。
■告発された本人が「虚偽」と判断する不条理
奥谷県議はさらに、告発文書がそもそも「公益通報ではない」のか、「公益通報だが法律の保護の対象外」なのかを質問したが、斎藤知事は「誹謗中傷する文書」と述べるのみで、答えようとしない。
知事への告発を、知事自身が「虚偽」と判定し、知事自身が告発者を「公務員失格」とこき下ろす。第三者委員会が「違法」と断じたこの行為について、奥谷県議は最後に問いただした。
【奥谷県議】「知事は『当事者として真実相当性がない』という話をするが、文書の当事者として判断したことが少なくとも誤りだったのではないか。知事は『まずかったな』と考えているか」
【斎藤知事】「ちょっと繰り返しになってしまうが、初動の対応から一連の懲戒処分の決定に至るまで、適切に対応している」
これも正面からの答えではないが、「まずかった」とは全く思っていないことはうかがえる。告発文書問題についての奥谷県議との質疑は、かみ合わないまま終わった。
■絶対に非を認めない知事 広がる困惑
斎藤知事の頑なな姿勢は議会だけではない。定例記者会見でも同様だ。象徴的なやり取りが今月あった。
神戸市に追随する形で兵庫県が導入した「フードドライブ」。
不要になった食料品を提供してもらい、フードロスを防ぎ、必要としている人々の支援に活用する仕組みだ。
この仕組みを斎藤知事が自身の動画サイトでPRした際の説明が「賞味期限が切れた食料品の寄付」を求めていると受け止められる言い方だった。
10月15日の定例会見で、記者団にそこを問われると、斎藤知事は頑なに訂正を拒否した。
【斎藤知事】「社会通念上、期限が切れたものを他者に渡すってことは基本的にない。社会通念上のご理解として、期限前のものをフードドライブとして活用することを、皆さんと共にやっていきましょうと説明させていただいた趣旨だ」
謝罪したくなければ、動画を見た人に責任を押し付けて「誤解を生む表現だったので修正する」とでも言えば済む話だ。そういう言い方をする為政者は少なくない。
だが斎藤知事は、なぜかそれすらも拒んだ。
こうした会見での受け答えについても問題視する県議が多くいる。この調子では、県議会との「信頼関係の回復」など、夢のまた夢になってしまう。兵庫県政「正常化」への道のりは、まだまだ長く遠いと言わざるを得ない。
(関西テレビ報道センター 鈴木祐輔)
