全国の耕地に対して、有機農業を行う耕地が占める割合です。その数字はわずか0.8%。手間がかかることや収穫量が不安定なことから、有機農業に挑戦する農家は限られています。こうした中、異業種から有機農業の世界に飛び込んだ夫婦が金沢市にいます。
ふっくらと光沢のあるコメ。日本一粒が大きいとされ、甘みが強い希少品種、「いのちの壱」です。
このコメを作っているのが、金沢市の宮村美香さん。農薬や化学肥料を使わない有機農業で栽培しています。価格は送料込みで5キロ8800円。
美香さん:
「自分たちが本当においしいと思うものを作りたいと思って、色々な品種を選ぶときに、色んなお米を食べ比べする中で、ずば抜けておいしかったので、ぜったいにいのちの壱を作るぞと思って作ることになりました。」
美香さんと一緒にコメ作りを行うのは、夫の厚志さん。前職のIT業界で培った経験を生かし、自社ページの広告を自ら作っています。
厚志さん:
「新米のいのちの壱の販売ページになります。自分たちが自らゼロからモノを作って、それを届けたい人にどのような形で届けるか、自分たちが自ら考えることに、やりがいを感じている。」
元々は都内でIT企業に務めていた厚志さんと、アパレルデザイナーとして働いていた妻の美香さん。都内で仕事を続けていた2人は、食事面で不満を感じていたそうです。
美香さん:
「結構2人とも忙しかったので、せめて食事だけはしっかりしたものを摂りたいなと思って、外食も多かったんですけど、お家の食は、農薬をあまり使っていないものとか、添加物の少ないものとかをできるだけ摂りたいなと思っていたんですけど、近くのスーパーでオーガニックのお米や野菜を手に入れることができなかったので、不便に思っていた。楽しく健康で長生きするというのが、私たちの夫婦のテーマだったので、そこで携わるような仕事をしたいと思っていました。」
簡単に手に入らないのであれば、自分たちで作ればいい。夫婦二人三脚で起業することを決めました。
厚志さんの地元が加賀市だったことから、6年前に県内に引っ越し、その3年後、自分たちの会社「加賀米野菜基地」を設立。目標として掲げたのは「稼げる農業」です。
厚志さんの父が兼業農家だったこともあり、農業の厳しさを目の当たりにしてきました。
美香さん:
「夫のお父様は慣行農法で農業をされているんですけど、かなりぎりぎりのラインで、赤字になってしまう年が多くあったりとかしている中で続けています。」
県内で自営業として農業を行う人は、2015年には1万1783人いましたが、10年後の2025年は、その半数以下となる5863人にまで減りました。平均年齢は69歳と、高齢化も進んでいます。
金沢市の二塚地区で農業を営んでいた地主の西川茂治さんも、コメ作りを諦めた一人です。
西川さん:
「父親が急に亡くなったもので、引継ぎもうまくされていなかったので、私も仕事が主になって、田んぼ仕事になかなか手が回らなかったのでちょっと難しいということで、町外と町内の方に、一部田んぼの耕作はお願いはする、そんな経緯。」
しかし、以前田んぼを預けていた人も病気で耕作できなくなっていたところ、宮村さん夫婦から声がかかったそうです。
西川さん:
「宮村さんに作っていただく前は、休耕田という形で、自分が田起こししたり、除草をしたり、作業をしていたんですけど、中々大変だったんですけども、こういう形で宮村さんの方でお米を作るという形で、田んぼの方を維持していただいているので助かっています。」
宮村さん夫婦は、二塚地区をはじめとする休耕田などを年々集約。起業当初約2.3haだった作付面積は、2026年は17haにまで拡大しました。
美香さん:
「本当に異業種からの飛び込みだったので、不安な部分も大きい部分もありました。私たちは、長年農業されている方に比べると年齢的に遅く就農したので、勘や経験とかを頼りにするような栽培方法ではなくて、科学的根拠に基づいた栽培をしていく理論を選んで、それをすればうまくいくだろうと思っていた」
2人が取り入れているのは、「BLOF理論」と呼ばれる科学的根拠に基づいた栽培方法。中でも特徴は、220枚以上ある全ての田んぼの養分を調べる「土壌分析」です。栄養価が高くおいしいコメを育てるため、収穫後に田んぼから土を採取し、カリウムやマグネシウムなど、どのくらい養分が残っているかを調べます。
厚志さん:
「私が元々理系出身なので、論理的に物事を考えて進めるのが好きなので、科学的に分析して数値化するというBLOF理論が、私に合ってるかなと思って採用しました」
地道な取り組みが功を奏し、2022年には、全国の農家がエントリーして、コメの味と栽培技術を評価するお米番付で優秀賞を受賞。
2人は今、農家の課題である収入が低いことや、休みが取れない環境を改善するため奮闘しています。
美香さん:
「農業はまだまだ休みが少なくて、給与を低いというふうに思われている業種ですけど、そこもしっかり水準を上げていきたいなと思っております。」
安心して食べられる、おいしいお米。より多くの人たちに手に取ってもらえるよう、夫婦そろって試行錯誤を続けていきます。
美香さん:
「もっと私たちは、会社の経営を安定させて、収量も上げる努力を引き続きしていきながら、身近な存在に私たちのお米がなれるように、大きくは目標としております。」
