福島と宮城を結ぶローカル鉄道・阿武隈急行。その象徴ともいえる8100形が引退を迎えます。角田市は「この車両を未来へ残したい」と保存に名乗り、クラウドファンディングには想定を大きく超える支援が寄せられました。地域の風景を走り続けた車両は今、展示へ向けた“最後のお色直し”の最中です。長年この車両と向き合ってきた整備士の言葉から、8100形が地域にもたらしてきたものをたどります。
8100形を未来へ 角田市の思い
福島県と宮城県を結ぶローカル鉄道・阿武隈急行。1988年の全線開業から走り続けてきた8100形が、まもなく引退を迎えます。
宮城県角田市では、この車両を未来へ残そうと保存・展示の計画が進んでいます。2025年2月からクラウドファンディングを実施したところ、目標額8000万円に対し、集まった支援は5億4000万円。全国から寄せられた思いは、保存車両に屋根をかける整備や修繕のほか、阿武隈急行線の維持にも活用される予定です。
角田市の黒須貫市長は「阿武隈急行と言えば8100形という思いが強い」と話します。宮城県側で最も利用客が多い自治体であり、高校生や大学生の通学にも欠かせない鉄路だからこそ、保存への思いはひとしおです。
市では、福島交通飯坂線・曽根田駅の休み処ナナセンを参考に、1両は現在のままの内装を維持し、もう1両は学習や仕事ができる空間へリノベーションする構想を描いています。
“唯一無二”のデザイン
梁川車両基地には、現在残っている2編成の8100形が並んでいます。国鉄型車両をベースにした唯一無二のデザインで、丸みのある前面や独特のカラーリングなど、細部にこだわりが詰まっています。
かつて9編成あった8100形は、新型車両への置き換えが進み、いま残るのは角田市に譲渡される編成と、イベントや団体臨時列車で活躍する編成の2本だけになりました。
長年沿線の風景を走り続けてきた車両が、地域の手で新たな役割を担う姿は、鉄道ファンにとっても胸が熱くなる瞬間です。
8100形と歩んだ整備士の思い
角田市へ譲渡されるA-15編成では、最後のお色直しが進んでいます。整備を担当するのは、2026年に入社30年目を迎えた小川宏和さん。車掌や運転士を経験し、現在は車両整備を担う“8100形と共に歩んできた人”です。
「8100は以前9編成ありましたが、それぞれ個性があり、運転操作のコツが要りました。そこは腕でカバーしてきました」と語る小川さん。
長年向き合ってきた車両の引退には「さみしい気持ちがあります」としつつ、「角田で展示されるので、昔の電車を懐かしく思ってもらえれば」と、最後の仕上げに思いを込めています。
“あぶきゅう”で出かけてみませんか
阿武隈急行では、気軽に沿線を楽しめるフリー切符が3種類あり、どれも1000円しないお得な価格です。福島から仙台方面へ向かう際も、通常運賃で東北本線より阿武急経由の方が安くなる区間があります。
11月7日には梁川車両基地で「あぶQフェスティバル来てくだ祭」も予定されていて、最後まで残ったA-17編成の今後について何か発表があるそうです。
引退を迎える8100形の姿を見届けつつ、阿武隈急行の沿線へ出かけてみませんか。
(福島テレビ)

