高市政権が、物価高対策の切り札とする食料品の消費税減税の議論が、国会で本格化しています。
一方、街で取材を進めると見えてきたのは、この減税によって飲食店が直面する厳しすぎる現実。
食料品は1%、飲食店での食事は10%。
苦境に立たされている飲食店は減税でどうなってしまうのか、その実情を徹底取材しました。
■ 国会で本格化する「食料品消費税減税」の議論
10月8日、衆議院本会議で交わされた論戦の最大の焦点となったのが、食料品の消費税減税です。
高市早苗総理は「『消費税・支援金法案』の準備を進めています」「家計に少しでもゆとりを生み出したい」と述べ、減税の効果を強調しました。
法案が成立すれば、来年4月から2年間、食料品やテイクアウト、出前などの消費税が1%に引き下げられます。
街では「正直うれしい。毎日のことだし」「毎日買うようなものなので、1%になったら結構ありがたい」といった歓迎の声が聞かれました。
■店の中で食べる外食や酒類は10%のまま据え置き
しかし同じ料理でも、店の中で食べる外食や酒類は10%のまま据え置かれます。
例えば税抜き1000円のお弁当の場合、持ち帰りは1010円ですが、店内で食べると1100円になります。この90円の差が、飲食店から客足を遠のかせる可能性があるとして、懸念が広がっています。
国会でも野党から厳しい質問が飛び出しました。
【国民民主党 玉木雄一郎代表】「総理、外食産業への対策はこのままで十分とお考えでしょうか。仮に外食の倒産が増えたら責任取れますか」
【高市総理】「事業者の実情を確認しつつ、実際に影響を受ける方々に向けた的確な支援を丁寧に講じることが重要」
■ 40年続く喫茶店が直面する現実
飲食店はどう受け止めているのか。取材班が向かったのは、40年以上にわたって大阪の街で愛されてきた喫茶店「CAFE DEサロット」です。
長年常連客から人気を集めてきた、コーヒーにゆで卵、そしてトーストのモーニングはワンコインの500円で、利益は大きくないのが実情です。
マスターの安田和志さんが見せてくれた領収書では、去年2月には「卵20パックで4000円」だったものが、ことし8月下旬には「6480円」まで跳ね上がっていました。
物価高の影響でモーニングの原材料費は、2年前と比べておよそ1.5倍になっています。
食材にかかる税率が下がれば、仕入れ負担も軽くなるように思えますが、安田さんの計算では物価高を吸収することすら難しいといいます。
【CAFE DEサロット・マスター 安田和志さん】「正直ね、もう1割ぐらいは上げたいなというのが本音ですけどね」
■ ラーメン店オーナー「上がってないものを探すのが難しい」
帝国データバンクによると、ことし1月から6月までの飲食店の倒産件数は473件と過去最多を更新しました。
こうした数字の背景にある厳しすぎる現実について、ラーメン店「麺や福はら」の福原康一オーナーが取材班に語ってくれました。
【麺や福はら 福原康一オーナー】「スープに使う鶏も肉も、調味料関係の醤油も運賃も、上がってないものを探すのが難しいぐらいの状況です」
自家製の麺やスープを使った看板商品は、創業当時の780円から現在は1300円にまで値上げしています。それでも物価高で上がった分を吸収するので精いっぱいだといいます。
■「外食産業をつぶしにきてるのかな、政府は」
さらに福原オーナーは消費税が下がったとしても、その分、商品価格を上げる卸し業者が出てきて、原材料費が変わらない可能性を懸念しています。
【麺や福はら 福原康一オーナー】「下がったからといって、皆さん全部その消費税分値下がりしてくれるかというと、そうじゃないと思っていて。ちょっと値上げしてもバレへんっていうお店さんも出てくると思ってるんで」
また、福原オーナーが最も警戒するのは、減税によって外食が割高になって起こる「客離れ」です。
【麺や福はら 福原康一オーナー】「家で何か作った方が安いし、おいしいやんとなってくると、ラーメンだけじゃなくて、全体的な外食産業が結構大変になるんじゃないかなと思ってます。外食産業をつぶしにきてるのかな、政府は」
■ 7年前にも起きた「同様の危機」
実は今回と似た状況は、7年前にも起きていました。
【安倍晋三総理(2019年当時)】「消費税引き上げによる影響については、しっかりと注視してまいりますし、万全の対応をとっていく考えであります」
2019年10月、消費税が8%から10%に引き上げられた際、酒類を除く食品と持ち帰りについては8%に据え置かれ、外食との間に2%の差が生まれました。
日本フードサービス協会によると、天候の影響もあったそうですが、この月に外食を利用する客の数は前年同月比で5.4%減少したといいます。
今回は差が9%にまで広がることから、業界への打撃はさらに大きくなる可能性が指摘されています。
■ “コンセプト転換”で活路を開いた居酒屋
苦境のなか、独自の工夫で乗り越えようとしている飲食店もあります。
大阪・天満にある居酒屋「三冠王」は、店内には阪神タイガースのユニホームや応援グッズが並びます。
もともとは普通の焼き鳥店でしたが、ずっと野球をやっていた辻西陽平代表が「店長もずっと野球をやっていて、野球ファンが集まるお店にできたら」と考え、ことし6月に「野球居酒屋」へとコンセプトを転換しました。
この取り組みによって売り上げは9月も10月も前年を上回りました。
来店客からは「普段は野球中継流してくれているから、見ながら、全然知らんおっちゃんと盛り上がったり。球場のライトスタンドみたい」という声が聞かれます。
阪神がリーグ優勝を決めた日には、店の前に人だかりができるほどだったといいます。
■選ばれる飲食店へ「この店に来ないとできない体験」
「この店に来ないとできない体験」をいかに作っていくか。
飲食店専門の経営コンサルタントの成田良爾氏は、「飲食店の利用客は、料理を食べているように見えて、実際は空気感や居心地の良さといったことに対価を払っている」と話し、こうしたコンセプトのある経営は「理にかなっている」と分析します。
一方で成田氏は「減税後の売り上げを検証し、影響に合わせた支援が必要だ」とも訴えます。
食料品の消費税1%という政策が、すでに限界を迎えつつある飲食店にどのような影響を与えるのか。
暮らしの負担を軽くしながら、飲食業界への影響をいかに抑えるか、今まさに具体的な制度設計が問われています。
(関西テレビ「newsランナー」2026年10月8日放送)
