鹿児島県日置市にある屋外施設「フォレストアドベンチャー吹上浜」で、小学生が森林とふれあう授業が初めて実施された。普段は有料のこの施設を、森林環境譲与税を活用することで費用負担なしに利用。子どもたちは木の上でスピードを体感しながら、森を守ることの意味を五感で学んだ。
300年の歴史を持つクロマツの森へ
10月6日、日置市の伊集院北小学校の5年生17人が、宿泊学習の一環としてフォレストアドベンチャー吹上浜を訪れた。「おはようございます!」と元気な声が松林に響く中、児童たちを迎えたのは約300年の歴史を持つクロマツの海岸防災林だ。
施設のマネージャーを務める青山邦央氏は「松林、実は300年の歴史があります」と説明する。この森は長年にわたって地域の人々に守られてきた吹上浜エリアの防災林であり、海岸を風や砂から守る役割を担っている。

税金が生む「いい循環」
今回の授業が実現した背景には、森林環境譲与税の活用がある。森林整備の促進などにあてることができるこの税収を用いることで、通常は有料のこの施設を児童が費用負担なしで利用できた。
日置市教育委員会の奥善一教育長は、この取り組みの意義をこう語る。「税金の使い方として、きっと子供達のためになる有効な使い方。森林を守るということが子供達を育てることにつながるいい循環が生まれる」。財源と教育、そして地域の自然保護が一体となった仕組みが、この日の授業を支えた。

座学から始まり、五感で学ぶ
授業はまず座学からスタートした。日本の森が抱える課題や防災林の役割を学んだ児童たちは、安全対策としてハーネスを身につけ、いよいよアクティビティへと進む。
この施設の最大の特徴は、木を傷つけないよう配慮された足場や構造にある。林業に携わる人と同じ目線で木を観察しながら、森の中を移動できる設計になっており、視覚だけでなく、音や風といった五感を通じて森を感じられる点が評価されている。青山マネージャーは「自然と共生する施設ですので、森を大切にすることを広めるためにはこういう学習も大切」と話す。

一番人気はジップスライド
アクティビティの中で児童たちに最も人気だったのが、全身でスピードを感じるジップスライドだ。木々の間を滑走するこの体験に、子どもたちは目を輝かせた。

「ちょっと怖かったけど、ひとつの思い出になりました」と振り返った児童の言葉には、森の中でしか得られない体験の重みが感じられる。また、「森の大切さがいろいろ分かってきて、木を傷つけなくてもこんなことができるとは思いもしませんでした」「とても楽しかったし、森のことが良く知れてよかった」といった声も上がった。楽しさと学びが自然に結びついた、まさに体験型教育ならではの成果といえる。

学校側も手応え、11月には日吉学園でも
学校側としても、普段は有料の施設を活用することで子どもたちの経験の幅が広がることに手応えを感じている。日置市では11月、小中一貫の義務教育学校である日吉学園の児童が同様の授業を予定しており、この取り組みは市内でさらに広がりを見せようとしている。
300年の松林を舞台に、税金・教育・自然保護が交わったこの授業は、地域が子どもたちのためにできることの一つの形を示している。
【動画で見る▶森林と林業の新しい学び方とは? 学びの場に税金を活用【鹿児島・日置市】 】

