“南のホワイトハウス”での習近平会談は果たしてトランプに有利に働くのか?

カテゴリ:ワールド

  • 招待された首脳はシンゾーと習近平だけ
  • ディール相手がアウェイと感じたらしめたもの
  • 世界的知名度が高まること確実で損はなし

安倍首相と習近平だけ?

トランプ大統領がフロリダ州に所有している“南のホワイトハウス” マール・ア・ラーゴ

世界経済の先行きを大きく左右するトランプ大統領と中国の習近平国家主席の会談が、今月下旬、トランプ氏がフロリダ州に所有し“南のホワイトハウス”などと呼んでいる別荘、マール・ア・ラーゴで行われる予定だ(4月初めとの報道もある)。

マール・ア・ラーゴ。大統領お気に入りの場所なのは間違いないが、調べてみたら、就任から2年余りでトランプ大統領がここに招いた外国首脳は、安倍総理が2回、そして習近平主席が1回。以上だ。「えっ!?2人だけ?もっといそうだけど‥」というのが筆者の正直な感想だ。

2018年4月18日 6回目の日米首脳会談がマール・ア・ラーゴで開催された

もともとアメリカの歴代大統領は、親密にしたい外国首脳と過ごしたり、ここぞという勝負の首脳会談の際は、ホワイトハウスではなくて特別な場所を用意した。一般的なのはキャンプデービッドの大統領山荘だが、例えばジョージWブッシュ大統領はテキサス州の自身の牧場やメーン州ケネバンクポートの父ブッシュ大統領の海辺の別荘を何度も使った。

特別扱いの「マール・ア・ラーゴ」

2017年4月7日 中国の習近平国家主席をマール・ア・ラーゴに招待しての夕食会で

トランプ大統領がマール・ア・ラーゴを使う理由は何か?

まずは親密な雰囲気づくりと「俺は特別扱いされている」と相手のプライドをくすぐることだろう。それは誰だって悪い気はしないものだ。トランプ氏もそれが良い取引につながると著書で述べている。外国首脳と取り引きするならマール・ア・ラーゴと思っていても不思議ではない。

2017年4月7日 マール・ア・ラーゴで開催された米中首脳会談

しかし、シンゾーとはゴルフをやって盛り上げることができるが、習主席はゴルファーではない。ネクタイを外そうという場面も想定しにくい。“ビッグディール”を決めるためにはもう一工夫ほしい。

それが相手をアウェイの状況に立たせることだ。そのためにもマール・ア・ラーゴは使える。習主席にとってはアメリカはどこでもアウェイだろうと思われるかも知れないが、“ビッグディール”をしようという2人の心理には、『相対的なアウェイ感』の強弱による優位性がものをいうと思う。

ディール相手にとっての“アウェイ感”

平たく言ってしまえば、自国大使館からの距離だ。習主席にとってみればワシントンの中国大使館は、いざという時の中国領であり、援軍であるサポートスタッフの拠点、そして安心できる(盗聴防止を施した)通信情報基地でもある。フロリダ州内には中国の公館はなく、最も近いのがワシントンDCかヒューストンの総領事館だ。となると、全ての支援体制を出先だけで構築しなければならず、当然その規模や機能は限られる。実務レベルではまとめきれずに首脳2人のディールに持ち込み、しかも習主席にちょっと心もとない状況と思わせたらしめたものだ。

ベトナムでのトランプ・金正恩会談が、アメリカ側が希望するダナンではなくて、北朝鮮大使館がある首都ハノイとなった理由も同じように考えることができるだろう。体制構築能力に格段の差があるアメリカと北朝鮮では、ハノイよりダナンの方がアメリカは相対的により優位に立つ。そこを北朝鮮は嫌ったと思う。警備のしやすさは一つのポイントにすぎない。

強硬路線のアメリカ

来る米中首脳会談では、ニューヨーク株価が大幅に下がるような合意にはならないと予想されている。そんな事態はトランプ大統領が一番避けたいと思っているからだ。しかし、大統領と側近たちの思惑の違いは否定しようもない。ライトハイザー通商代表はより強硬路線に傾斜し、中国を追い込もうとしている。よい合意ありきの大統領との齟齬は2月22日、中国の劉鶴副首相がオーバルオフィスに大統領を訪ねた際にあからさまになった。

ライトハイザー通商代表

一方で中国側も、ライトハイザー的強硬路線に最後までお付き合いできるものではない。例えば、追加関税の引き下げについて、『一括全面引き下げ』の中国と『規模も関税率も段階的引き下げ』のライトハイザー代表との妥協点はどこなのか、まだ見えてはいない。

加えて、合意目前でもう一押ししてくるトランプ流交渉術への警戒心も強い。ハノイでの米朝首脳会談の“決裂”にその危うさをまざまざと見せつけられたからだ。

そんな現状だからこそ、今月半ばに全人代が閉幕次第、米中は実務者と閣僚のレベルで新たな協議を行うことになるのではという見方となる。まだまだ「合意ありき」と楽観視できる段階ではないのだ。

世界的知名度が高まればよし!

マール・ア・ラーゴ

万一、合意が思うようにならなくても、トランプ大統領はマール・ア・ラーゴ会談の恩恵を受けられる。
『歴史的舞台』という付加価値と世界的な認知が得られるからだ。大統領退任前から、マール・ア・ラーゴの会員権は高騰しているに違いない。中国マネーやアラブ・マネーの流入も予想される。アメリカを再び偉大にした“ビッグディール”の舞台だと喧伝されたりもするだろう。すでにトランプ・ファンの聖地となりつつある。

アメリカ国務省がそのホームページでマール・ア・ラーゴを紹介したら野党民主党などから「国費をもって私有財産の宣伝をする類のもので許されない」と異論が出たそうだが、トランプ氏はへっちゃらだ。注目度が高い外国首脳との会談場所とすればメディアが内外に広めてくれるというものだ。「大統領選で負けても知名度が上がってビジネスにプラスになればOKー」のトランプ氏だ。マール・ア・ラーゴでの首脳会談は結局、自分にとって得になる。トランプ氏はそんな計算を働かしているに違いない。

【執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋】
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