宿泊場所がない!? 2020東京五輪を前に知りたい「民泊」の魅力と課題を聞いた

カテゴリ:国内

  • 東京五輪で懸念される宿泊施設不足...「民泊」は受け皿となれるか
  • 日本には何が求められている?宿泊者が“ほぼ外国人”という民泊ホストに聞いた
  • 民泊を始めたい人へ…東京五輪で役に立つと思うが注意点もある

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催まで1年を切り、五輪ムードも高まってきた。
世界的祭典の自国開催を間近で楽しもうと、遠方から現地観戦の旅行計画を立てている人も多いだろうが、そんな人には気がかりな問題がある。関東近郊の宿泊施設不足だ。

夏の観光シーズンはただでさえ、宿泊施設が混み合うものだが、加えて五輪開催となればなおさらで、価格の高騰も言われている。
2019年7月と2020年7月の宿泊費を、大手のホテル予約サイトで比較してみると、東京駅近郊では、2019年7月に1人1泊1万円台だったホテルが、2020年7月には同条件で4万円台に高騰。
高級ホテルでは、2020年7月下旬を1人1泊90万円台に設定しているところもあった。

競技会場へのアクセスが良い、お台場近郊で2020年7月24日に宿泊できるホテルを探したところ、1人1泊4万円台のホテルは確認できたが、ここはすでに残り空室が数部屋になっていた。大手ホテルでは、まだ予約が始まっていないところもあるが、高騰の気配があるのは確かなようだ。

「民泊新法」施行から1年

そうなったときに予算内で泊まれる場所がない…と不安な観光客の受け皿として期待されるのが、民家を宿泊先として貸し出す「民泊」だ。

民泊は、宿泊費が安価なだけではなく、地域やホスト側との触れ合いも経験できることから、ホテルや旅館に並ぶ選択肢として、外国人観光客を中心に人気を集めてきた。

2018年6月15日には、民泊のルールを定めた「住宅宿泊事業法(民泊新法)」も施行。観光庁によると、住宅宿泊事業(民泊事業者)の届出件数も、2018年6月15日の2,210件に比べ、2019年7月16日は1万8,512件に増加事業廃止した1,169件を差し引いても、1万7,343件と増えた。

住宅宿泊事業の届出件数の推移(提供:観光庁)

この状況を見れば、民泊が普及しているように見えるが課題も多い。必要な営業許可を持たずに宿泊させる“ヤミ民泊”もその一つで、民泊新法の施行後は減少傾向にあるが、過去には近隣住民とのトラブルが起こったり、犯罪に利用されるケースもあった。

果たして、2020東京五輪は民泊にどんな影響を与えるのだろう。そして民泊を始めたいと考えている人は、どんな点に気を付けたらいいのだろうか。
東京都内で民泊「FUNABORI APARTMENTs」を運営する中島昌勝さんに伺った。

民泊に求めるものが欧米圏・アジア圏で違う

――民泊を始めた経緯は?どんな部屋を提供している?

2014年に始めました。実は当初、民泊自体に興味を持っていた訳ではありません。父親の他界と不動産業の傍ら、所有物件の全体の収支バランスを取りたいという考えからでした。物件は新しいうちは良くても、古くなると入居者が現れにくいものです。宅地建物取引業の免許も持っていたので、顧客の増加にもつながるのではないか...という思いからですね。

※宅地建物取引業の免許があると、住宅宿泊管理業の法人登録ができる

2019年7月現在では、2部屋を貸し出しています。料金は1部屋当たり、6,500円(閑散期)~1万8,000円(繁忙期)程度ですね。1カ月25日稼働で20人程度が泊まりますが、宿泊者はほぼ外国人です。おかげさまで、向こう3カ月程度は予約が入っています。


「FUNABORI APARTMENTs」

――運営した感触は?魅力はある?

私が思う魅力は2つあります。一つは賃貸物件の活用です。物件を1棟単位で持つと、1部屋2部屋は長期間空いてしまうのですが、そこを貸せるので全体の収支バランスがよくなります。始めるまでは苦労が多いですが、棟単位で物件がある人は始めるべきだと思います。

もう一つは、国際化を肌で感じられるところですね。過去のゲスト(宿泊者)には、SEをしながら旅するオーストラリア人や、秋葉原が好きな「オタク」ニューヨーカーもいました。彼らと話すと国際情勢の勉強にもなり、ニュースの見方も変わりました。民泊の隣には自社のコワーキングスペース、銭湯もあり、近隣マンションの住民とゲストが交流することもあります。人々の魅力を感じられるので、やめられないですよね。


民泊として貸し出している部屋の一つ

――外国人は日本の民泊に何を求めている?感じる変化などはある?

これは個人的意見ですが、民泊に求めるものは欧米圏・アジア圏で分かれていると思います。
過去の経験から考えると、欧米圏のゲストは、日本の歴史・文化・季節感を求める人が多く、目的地まで歩いたり、列車に乗ることも旅の一部として楽しむ傾向にありました。

アジア圏のゲストは、安さ・利便性を求める傾向にありました。ホテルと同等のサービスを求める人も多くて、旅慣れしていないのかな?という印象は受けます。民泊は安い代わりに不便な部分もあるので、そこを理解してほしいと感じることもありました。

最近では、東京五輪の効果でしょうが、日本人を含むアジア圏のゲストが増えています。地方からの問い合わせも多く、「息子に五輪を見せたい」と既に予約している人もいますね。東京が観光地であることも影響しているでしょう。


東京五輪で役立てると思うが注意点も…

――東京五輪まで1年。民泊関連で気を付けることはある?

民泊は東京五輪の宿泊施設として役立てると思います。ですが一方で、観光客同士のダブルブッキングが起きたり、「予約しなくても大丈夫」と考える観光客も出るはずです。宿泊難民が出るのは目に見えています。

例えば、民泊予約サイトの多くは事前決済を採用しています。クレジットカード払いでは、決済が降りないと契約成立しませんが、ホスト側は予約時点で資料を送ることもあり、契約成立していないことにゲストが気付かない可能性もあります。旅行先に到着してから気付くこともあるのです。

ホスト側も注意が必要です。ゲストには数カ月前に予約して部屋を確保したあと、直前にキャンセルして空室状態を作り、宿泊価格を下げようとする人もいます。そして、犯罪にも注意が必要です。過去の五輪では、開催に便乗した窃盗団も現れています。都合のよい滞在場所として、民泊が利用される可能性もあるでしょう。

このようなトラブルを避けるためには、ゲスト側・ホスト側にかかわらず、予約内容を細部まで確認し合うことが必要でしょう。


中島昌勝さん

――日本の民泊はこれからどうなると思う?

民泊新法などの法整備は良い方向に向かっていると思います。ですが、東京五輪の後にどうなるかという点では、気になるところもあります。

長野冬季五輪のとき、第三セクターによる官民の開発が盛んとなり、「ペンションを建てれば観光客が利用するので儲かる」という話がありました。ですが実際は利用が伸びず、携わった人々が苦しんだとも聞きます。東京五輪とは状況が違いますが、これから景気が悪くなるようなことがあれば、同じことが起こってしまうのでは?と考えることもあります。

民泊の立ち位置で考えると、これからは体験型プログラムも充実していくはずです。旅行でも、1泊は観光地付近の温泉宿などに泊まり、あとは民泊を利用して安く楽しむようなモデルができるかもしれませんね。


――民泊を始めたい人に伝えたいことはある?

個人的意見としては、民泊は貸せる物件を持っている人がやるべきだと思います。例えば、賃貸マンションを借りて民泊を開いても、部屋の契約金、賃料、管理費、諸々の諸経費を毎月支払わなければなりません。契約終了後には部屋の修繕費なども支払います。個人が「儲かりそう」というイメージだけで始めると、後悔するかもしれませんね。

ただ、上手く運営すればビジネスとなりますし、外国人らゲストとの交流も楽しいものです。民泊自体は素晴らしい制度なので、1棟の所有物件で1部屋が空いていたりする人は挑戦してみてもよいのではないでしょうか。


コワーキングスペースで交流するゲストや住人たち

外国人観光客が大挙する2020東京五輪は、民泊事業にも大きなチャンスとなる。まだ発展途上のため注意すべき点は多々あるが、日本には、イベント時に期間限定で民泊を提供できる「イベント民泊」制度もあるので、この機会に「おもてなし」する側に回るのもいいかもしれない。

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