街からパンダがいなくなると一体どうなるのか?
飼育しているパンダが全頭中国に返還されることになった和歌山県白浜町。
先にパンダがいなくなった町を取材をすると、その影響の大きさが見えてきた。

■大勢の人が詰めかけたアドベンチャーワールド パンダが中国に返還へ
秦令欧奈アナウンサー:あー!いました!中国への返還が決まったジャイアントパンダです。あー!転がっている!転がっているパンダが!パンダが前転をしている!
29日も、大勢の人が詰めかけたアドベンチャーワールド。
来場者:パンダちゃーん!!
大阪からの来場者:パンダが帰っちゃうって聞いたんで…老後は白浜に別宅みたいなの(を買って)歩いて通いたいとか思っていたことがあったので買ってなくてよかった。

■関西とパンダのつながりは40年以上前から 『曲芸パンダ』も
なぜ多くの人がパンダにひきつけられるのか。関西とパンダのつながりは、40年以上前にさかのぼる。
この映像は1979年大阪の松坂屋高槻店の開店セールの目玉として展示されたパンダのはく製。なんと1億円の保険金がかけられたそうで、大勢の人が集まっていた。
その2年後に大阪にやってきたのは、”曲芸パンダ”。
仰向けでサッカーボールをコロコロ転がしたり…台車に乗せられ楽器を演奏するなど、今では考えられないような芸を観客に披露している。
そして1994年、白浜町にも飼育研究のために「永明」など2頭が貸し出されることに。

■パンダの街、白浜町 「いなくなるのは結構影響がある」とホテル
ここから白浜町はパンダの街として動き出す。
記者リポート:こちら白浜駅なんですけど見てください。パンダの親子の銅像があります。下にはパンダのまち白浜と書かれています。右側にはパンダ駅と書かれています。さらにこちらの自動販売機を見てください。パンダが描かれています。
町自体がもはや「パンダありき」!アドベンチャーワールドから車でおよそ10分のこちらのホテルの目玉の一つが、「パンダルーム」。
まずドアにはパンダのイラストがあり、中に入ると…
記者:パンダだらけですね!
部屋中、至る所にパンダ・パンダ・パンダ!フードなども充実させてパンダにあやかってきた。
南紀白浜マリオットホテルセールス&マーケティングマネージャー北原信行さん:いなくなってしまうと聞いてかなりのダメージを受けました。いなくなるのは結構影響があると思います。この部屋は引き続きお楽しみいただけるように販売を続けていきたいと思っています。

■まさに寝耳に水 ダメージを受けていた白浜町長
パンダの返還は、一体どれほどの影響を白浜町に与えるのか、町長に直接聞いてみた。
(Qそのパンダのぬいぐるみは?)
和歌山・白浜町大江康弘町長:ずっと置いている。アドベン(チャーワールド)からもらって。
そして町長がおもむろに身に着けたのは、背中にパンダが描かれた法被!
和歌山・白浜町大江康弘町長:去年30周年の式典の時にいただいて。これももう着れなくなります。いないのに着てても…さみしいなと。
パンダ返還の一報に想像以上のダメージを受けていた町長。まさに寝耳に水だったと言う。
和歌山・白浜町大江康弘町長:正直ショックでしたね。車で移動中に役場から連絡受けて、びっくりして戻った。『本当か?』というのがまず第一の思いでした。『パンダがあった町』みたいな本当に説得力に欠けることしか言えなくなった。

■先にパンダがいなくなった神戸市の王子動物園
一方、先にパンダがいなくなった町がある。
記者リポート:こちら神戸市内の王子動物園ですがゲートにはまだパンダのイラストが残っています。
関西でもう一つのパンダの聖地と呼ばれてきた神戸市の王子動物園。これまで中国から貸し出された3頭のパンダを飼育してきた。
しかし「神戸のお嬢様」と呼ばれ人気を集めた「タンタン」が去年3月に死んだ。その後、パンダのいない状態が続いている。
記者リポート:こちらタンタンがいた場所なんですけど、今もそのまま残されています。
なぜ、残しているのか副園長に問うと…
神戸市立王子動物園 山田亜紀子副園長:またいずれ…ということもあり得ると思っていますので、しばらくこのままかなと思います。

■パンダに対する思いが溢れる王子動物園
さらに屋内の飼育スペースには動物園のパンダに対する思いが溢れていた。
記者:あっ(パンダが)いるかと思いました。
そこには死んだタンタンの写真パネルが。
神戸市立王子動物園 山田亜紀子副園長:パネルで生前の様子を再現しています。
神戸市立王子動物園 山田亜紀子副園長:出来るだけ生きていたころを思い出していただけるように展示頑張りました。(Qタンタンはすごい存在だった?)そうですね。神戸だけでなく全国の皆さんに愛されていたので…いるのが当たり前でしたからね。
パンダがいない状態が1年以上続く王子動物園。今後について聞いてみると‥
神戸市立王子動物園 山田亜紀子副園長:検討の段階ですので、具体的には決めていないです。国と国とのお話ですので、簡単ではないと思います。協議を重ねていくしかないのかなと…。

■「過去形にしたくない。(パンダが)いた町にしたくないです!」
一方、神戸市よりも、パンダにあやかっていた白浜町は、再びパンダの貸し出しを目指すのか?
和歌山・白浜町大江康弘町長:白浜町一緒に(交渉を)やって欲しいとかそういう要請があれば我々は喜んでなんでも協力するんですけど。過去形にしたくないです。いた町にしたくないです!
パンダが背負ってきた大きな役割。
本当にこのまま関西からパンダがいなくなるのか?

■「米中対立」も 中国はパンダをアメリカに貸与 「かなり戦略的」
そんなパンダを巡って、29日、動きがあった。
日中友好議員連盟会長の自民党の森山幹事長が、中国・共産党幹部にパンダの貸与を要請したということだ。
こうした動きも含むパンダについて、ジャーナリストの浜田敬子さんは、中国の思惑を指摘する。
ジャーナリスト 浜田敬子さん:パンダってあんなにかわいい姿をしているんですけど、中国政府が管理していて、非常に政治的な動物なんですよね。『パンダ外交』って言葉ももあるぐらいで。
中国がどういう国に貸与しているかというと、友好国の証として貸与したり、もっと言えば、これから関係性を深めたい国に、戦略的に貸与するんですね。
『米中対立』と言われてるんですけど、去年の8月にアメリカに貸与しているんです。インドネシアとか貸与しているんですね。
去年の夏の段階で17国53頭貸与していますけど、少ないですよね。だからかなり選んでやっぱり貸与しているという、戦略的にやっているという背景があります。

■白浜町には他にも魅力 「温泉もあってワーケーションの聖地」と浜田さん
一方パンダの返還によって観光など大きな影響が懸念される白浜町について、浜田さんは「もっと魅力がある」と指摘した。
ジャーナリスト 浜田敬子さん:私、白浜大好きで、東京から飛行機で行ける、すごくいい温泉があるので、何度も行ってるんですよ。
和歌山県は『ワーケーション』ってのを進めていて、温泉地でリモートワークをするというのを結構県ぐるみで進めてたんですよね。
(※「ワーケーション」…Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語。リモートワークなどを活用し、普段の職場や自宅とは異なる場所で仕事をしつつ、自分の時間も過ごすこと)
なので私もワーケーションの聖地として白浜に行ってたので、パンダを目指して実は行ってないんですね。だから他の魅力が絶対あるはずなんですよ。
温泉とか、世界遺産の熊野古道なんかも近いので、ぜひ違う魅力を発信して、もっとたくさんの人が来てくれるようにするといいのかなと思います。
(関西テレビ「newsランナー」2025年4月29日放送)
