新型コロナウイルスの流行初期に横浜港に停泊したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で13人が亡くなる集団感染が発生してから2025年2月で5年が経ちました。
船内の調査のため岩手県から乗船した医師に当時の厳しい状況や教訓について聞きました。
5年前ダイヤモンド・プリンセスに乗船 櫻井滋医師
「全くの素人の方々に(感染対策を)教えなければならないという障壁があった」
こう振り返るのは当時岩手医科大学の教授を務めていた櫻井滋医師です。
2016年、日本環境感染学会に災害時感染制御チーム=DICTを立ち上げていた櫻井さんは、2020年2月に国の依頼を受けて集団感染が発生したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセスに乗り込み船内を調査しました。
当時、船内では災害派遣医療チームDMATがすでに活動していましたが、感染制御の専門家はおらず感染は130人余りに広がっていました。
櫻井滋医師
「気になったのは行き来している人たちの装備。マスクをどういう風にしているのか、要所要所で手を洗っているのか、それはもう入り口から『これはだめだ』という感じはあった」
改善に向けて櫻井さんらは防護服の正しい着脱について助言。
あらゆる場所に消毒液を配置したほか感染対策を分かりやすく紹介するビデオも制作しました。
櫻井滋医師
「感染(対策)の世界ではメリハリが大切。何でもかんでも重装備をし一切外さないという生活ができるかというとできない」
櫻井さんはこの時、感染症の専門家という立場の重要性を実感したといいます。
櫻井滋医師
「感染対策をコントロールする人がトップにいてDMATの医療を見守ることが必要」
国は2022年にDMATの任務に感染症への対応を追加。
2024年10月にはDICTが国の委託事業となり専門家の早期派遣が可能な環境となりました。
櫻井さんはこうした国の動きを評価する一方、未知のウイルスが広がる危機的状況の中でクルーズ船での調査は尽くせなかったと指摘。
病院での集団感染など類似のケースに着目し再発防止に向けて調査を重ねることが必要だと訴えます。
櫻井滋医師は「(これから)何をなすべきかが大切。類似の事案をデータとして蓄積していく仕組みが日本には求められる」と語りました。