2024年12月に開催されたバスケットボールの全国大会「ウインターカップ」で準優勝した鳥取城北高校。山陰勢初の快挙を成し遂げたチームの躍進を支えた“最強”留学生の素顔に迫った。
「アズカの目標は日本一です！」
「去年は日本一できてなかったけど、今年、アズカとアズカたちの目標は日本一です！」と流暢な日本語でインタビューに答えてくれたのは、ハロルド・アズカ選手（2年）だ。
来日して2年足らずとは思えない上達ぶりだが、身長2mの大きな体に似合わず、自分のことを名前で呼ぶのが少々かわいらしい。
ナイジェリア出身の留学生で、ウインターカップでもその長身を生かして、準優勝に大きく貢献。大会のベスト5にも選出された。
異次元のオールラウンダー
2年生ながらチームを引っ張るアズカ選手。セールスポイントを教えてもらうと…。
「アズカのプレースタイルは、スリーポイントめちゃくちゃ打てるとか、ポストプレー（ゴール下での攻撃）とか、リバウンドとか、ディフェンスとか。全部です、全部です!」と元気にアピールした。
その言葉通り、今回のウインターカップでも、高さを生かしたブロックに4人に囲まれても負けないリバウンド。さらに、コートのどこからでも得点できる巧みなシュート、そしてスピード抜群、キレキレのドライブ。アシストまでできてしまう、まさにオールラウンダーだ。
ウインターカップでは、1回戦から決勝まで6試合で98得点、107リバウンドを挙げるなど異次元の活躍を見せた。
教室でも人気者 仲間との会話で日本語をマスター
流暢に日本語を操るアズカ選手に、その理由を尋ねると「私の仲間です。私の友達です。毎日しゃべってるから、どんどんどんどん上手になりました。漢字はまだまだ全然無理ですけど、話すのはまあまあ大丈夫」と答えが返ってきた。
寮で同部屋の新美鯉星主将（2年）によると、「アズカは日本語とかの勉強は全然していなくて、日常会話の中でどんどんうまくなっていった」そうで、アニメなども見るので、そこで色々な言葉を覚えたのではないかということだ。
確かにアズカ選手は、教室でも人気者。生徒たちから話しかけられるうち、みるみる上達したようだ。
アズカはコートの中でも外でも頼れる選手
アズカ選手について、河上貴博監督は、「本当に周りにも気を使えるし、ポジティブな声かけもメンバーにしてくれるので、オンザコートでもコート外でもすごく力になる、頼れる選手」だと評する。
取材中にも、そんな一面をうかがわせる場面があった。
いったん練習を止め、部員全員を集め、アズカ選手が「ずっと速い、速い、速い、関係ない。まずシュートが入る、一番大事。みんなしっかりいきましょう！」と声をかけた。
アズカ選手の声かけで、練習のギアがまた一段上がった。
このように選手たちが自ら考え、判断するのが鳥取城北のスタイルだ。
河上監督は「あまりトップダウンでやりたくないと思っている。バスケは自分たちで考えなきゃいけないスポーツだと思うんですよね。基本は自分たちでブラッシュアップして、コミュニケーションを取って、やっていかなきゃいけない」と説明する。
和気あいあい…寮生活で培う“絆”
練習のあと、寮生活をのぞいてみた。
寮生活の部員は食堂で夕食。この日のメニューは、野菜たっぷりの回鍋肉（ホイコーロー）だが…、アズカ選手は野菜がちょっと苦手な様子。
カメラを向けると、アズカ選手は「もし、いい選手になる（なら）、野菜大事です。だから食べます。でしょ？」と得意顔だが、豊村豪仁選手（2年）から「今“いい子”を演じてるんだな。いい子がいいもんな」と突っ込みが。
「アズカはいい子です」と言い張って、アズカ選手は無事、回鍋肉を完食した。
食事が終わると、食器の片づけ。ゲームで負けると、みんなの分も片づけるルールだ。
アズカ選手ももちろん参加する。和気あいあいとした寮での生活。
アズカ選手は「アズカはナイジェリア人だから、ナイジェリアはちょっと遠いです。家族は（近くに）いないけど、今はみんなが家族です」と話し、すっかりなじんでいるようだ。
ウインターカップで見せた抜群のコンビネーションは、こうして培われた仲間との絆が支えていた。
鳥取で成長 将来は「NBAに行きたい！」
いよいよ最高学年、アズカ選手にこれからの夢を聞いた。
ハロルド・アズカ選手：
アズカの夢は、NBAに行きたいです。でも、多分ここからNBAはちょっと難しいから、ここからBリーグ。もし、Bリーグでめっちゃ頑張りました、めっちゃうまい選手になったら、次はNBAです。
高い志を持ちながら日本で頑張る“最強”の留学生。悲願の日本一、そしてその先に描く夢に向かって、挑戦が続く。
（TSKさんいん中央テレビ）
