日本プロバスケットリーグ最高峰であるB1の島根スサノオマジックに所属する谷口大智選手が、子ども向けの絵本を出版。201cmの長身を生かしたチームに欠かせない日本人ビッグマンとして活躍している谷口選手だが、実は小学6年生の時に身長が190cmあり、飛び抜けて大きかったことが、「逆にコンプレックスだった」という。
「人と違うことを恐れず、個性を大切にしてほしい…」、谷口選手が絵本を通じて伝えたい思いを聞いた。
“日本人ビッグマン”が手掛けた絵本
10月に出版される絵本「はいるかな」。個性豊かな動物たちが、それぞれのやり方で木の上にあるバスケットゴールに向かってシュートを打つ様子がほのぼのとしたタッチで描かれている。
絵本の制作を手掛けたのは、Bリーグ1部・島根スサノオマジックの日本人ビッグマンとして活躍する谷口大智選手だ。
親交のあるデザイナーや絵本作家に協力してもらい、約1年かけて完成させた。ストーリーを考えたのも、かわいらしい文字を書いたのも谷口選手だ。
谷口選手は「絵本では、子どもたちが、この動物がどうやってシュートを決めるんだろうという想像力をすごくかき立てられる内容になっていると思います。もしかしたらこの絵本に描いていない方法で、こういう方法でも決められるんじゃないかな、という考え方をする子どもたちも増えてきてくれればうれしいです」と話す。
恵まれた体格も…過去のつらい記憶
島根スサノオマジックでは、3シーズン目を迎える谷口選手。201cmの恵まれた体格を生かしゴール下を主戦場とする一方、要所で放つ3ポイントシュートはチームに勢いを与えている。
ビッグマンであり、正確にシュートを決められるのが強みの貴重な存在で、日本代表にもたびたび選出されてきた。また性格も底抜けに明るいムードーメーカーで、プレー以外でもファンの心をつかむ「愛されキャラ」だ。
今は、200cmを超えるサイズが強い武器になっている谷口選手だが、過去にはその個性が心に影を落とした時期があったという。
谷口選手は「大人たちの冷たい目線だったり、バスケットボールを頑張っていても、あれだけ身長が高ければシュートを決めて当然だろう、ダンクシュートができて当然だろうと…」「対戦相手の親に『ずるい』と目の前で言われたこともありますし、やはり人と違うことがいけないことなのかな、ダメなことなのかなという風に思う機会が多々あって…」と、当時を振り返る。
小学6年生の時にすでに身長が190cmを超えていた谷口選手。飛び抜けた長身に向けられる視線や周囲からの心ない言葉に苦しめられ、コンプレックスになったという。
それでも懸命にバスケに打ち込み、京都の名門・洛南高校に進学。日本代表の比江島慎選手とのコンビで、冬の全国大会「ウインターカップ」で3連覇を達成。同世代のトップ選手として注目を浴びるようになった。
谷口選手は絵本を制作した動機について、「今僕は、その長身を生かしながらバスケットボールのプロ選手として活動できているわけですけど、その生かす場所を見つけきれないまま、例えば自殺してしまったりとか、そういう人たちがやはり世の中にはたくさんいて、そうじゃないんだよということをすごく伝えたいという気持ちが強かったので、この絵本を作りました」と話す。
「人と違うことに悩まなくていいよ」
今回出版する絵本に込められているのは、バスケと動物が大好きな谷口選手から「人と違うことに悩まなくてもいいよ…」という、子どもたちへのメッセージだ。
さらに絵本のあとがきには、谷口選手から大人へのメッセージもつづられている。「自分の子どもの発達が遅いとか、他の子と比べる必要はないことに、子育て世代の方々に気づいてほしい」「悩んでいる子どもたちをどう導くかは大人。1人でも多く、手を差し伸べられるような大人が増えてほしい」と呼び掛けている。
谷口選手は「応援してくれる人たちがたくさんいるからこうやって続けられる内容ですし、今回出てきた絵本もどんどんシリーズ化して、1年に1冊出せるようにしていきたい。夢は本当に大きいです」と今後も絵本づくりに意欲的だ。
谷口選手が様々な思いを込めて完成させた絵本「はいるかな」は、9月下旬からネットでの予約を受け付け、10月23日から全国の書店などで販売される予定だ。
（TSKさんいん中央テレビ）
